集合
僕はガートランド・ベスター。ラグオルのために尽くす事、それが僕の使命である。それは、僕がパイオニア2に乗り込む時に運命づけられたものだ。僕の一生涯は既にラグオルの全住民のものであり、僕はそれで幸せだ。
そんな僕にとって、今日の仕事、ラグオル地表の清掃は重要な意味を持っている。学生である僕が出来る数少ないラグオルへの奉仕の機会だからだ。この機会を与えてくれた神に感謝しよう。
ガート: やあ! 諸君!
シーナ: あ、きた
僕は集合時間である10時きっかりにギルドロビーの扉を開けた。そして、そこで驚愕すべき光景を目にした。養成学校の生徒が3人いるはずだったが、そこには白服のハニュエール一人しかいなかったのである。
ガート: あれ?
僕の頭がこの事象の意味を咀嚼している間に、後の扉が開いて、2人の生徒が入ってきた。なんてことはない、遅刻である。滅多に使わない言葉であるため、咄嗟に出てこなかっただけの話だ。
ミウ: ほいほーい
ファーン: ここかな
シーナ: せやでー。 キミたちが今回の?
ガート: 遅い! 1分遅刻だぞ! まったく、養成学校の奴らはいいかげんだから。
僕は怒鳴った。養成学校の生徒の噂は時折耳に入ってはいたが、その素行を目の当たりにするのは初めてだった。
ミウ: 堅いこと言わない
ファーン: すいません
二人の反応は正反対だった。前者は頭に大きな丸い毛玉を付けたいさましいちびのフォニュエール、活動的な服装は典型的な養成学校の性格を推測させる。それに対して、後者は長いスカートを穿いた青い服のフォマールで、いかにも大人しやかな感じの子である。
ファーン: すみません。
ミウ: やだねー、新入生がおびえてるよ、もう。
シーナ: まぁええやんか。集まったんやから。いじめちゃあかんでー
ガート: 新入生がどうこういうより世間の常識だろ?僕たちももう子供じゃないんだから…
ファーン: すみません。ここに来るの、はじめてで
彼女はもう一度小さな声であやまった。しかし、問題なるのは、遅刻した事より、それを問題視しない態度の方だ。規律違反は厳格に処罰するのは軍の規律を維持する上で最低限の規則である。泣いて馬謖を斬るという覚悟がまるでない。
ミウ: ちょっとくらい、いいじゃんか(ブツブツ
シーナ: せやけど……この地図でこれたらすごいって
と、黄色がかった紙に手書きで書かれた地図を手渡された。
ガート: わかった、養成学校は先生からしていいかげんなんだな。まったく、なんて学校だよ
ミウ: うわ、やな結論
シーナ: まぁ……なぁ……
ファーン: 本当にすみません
否定されなかった所を見ると、図星だったようだ。そんな学校が存在していていいのだろうか。
シーナ: あ、ええねん。多少遅れても問題あらへんから。それにこの地図でこれたのが凄いって。
ミウ: そうそう、ボクも授業に二時間遅れた事があった。授業終わってた
シーナ: それは……遅れすぎやで
養成学校の生徒にとっては、これは笑い事らしい。僕には想像もつかない話だ。
ファーン: でも、随分怒ってらっしゃるし
シーナ: アレ?ええねん。ほっといて。怒るのが趣味みたいなもんやから
ガート: ちょ、ちょっと待てよ
放っておくとは何事だ。これは余りに失礼な振舞いではないか。と、怒った僕に向かって言われた言葉がこれだった。こんな言葉を誰が予想するだろうか。
ファーン: そうなのですか?かわってますね。おこってるよりわらった方が楽しいですよ
シーナ: ははっ、えーことゆーなぁ
ファーン: ////
ガート: あー、調子狂うなあ
彼女らの思考回路は僕とは全然違う。これだけはよく分かった。