たった4人の聖戦

神殿を邪教徒に占領され嘆き悲しむ民衆。神は、そこに聖戦士をおつかわしになられた。これは、ラグオル真理教会(RagolCharchofTruth)の勃興期の1エピソードである。

終わりと始まり

ウォン神父には、部屋の形は確かに見覚えがあった。八角形の部屋、そして中央の台座、上の照明。しかし、それ以外は何もかもが違っていた。壁にはコンソールと大きなディスプレイ、そしてそこに映る謎の男の顔。
ウォン: おぞましい!
アスタシア: さ、祭壇が!?
すかさずランディがディスプレイを撃ち砕く。辺りにガラスの破片が飛び散る。ストライクも刀を打ち降ろす。あたりは砕かれたガラスでいっぱいになった。

と、その時、天井から大きな笑い声が。

ボルオプト: ふははははは

座禅を組んだまま天井から靜かに降りてきた男、彼こそがボルオプトその人である。ヨーガを極め、空中浮揚の術を身につけた彼は、自ら教祖を名乗り、独自の教えを広めているのだった。彼の巨大な体躯と長い髪と髭は、見るものに威圧感を与え、そして何か人を越えたものを連想させるのだった。

ボルオプト: 我が仏罰を与えん!
と、突然、空から巨大な鉄柱が何本も落ちてきた。それは、正確にウォンとアスタシアを目がけてくる。一発で二人は倒れる。

ランディ: ちっ
ランディは散弾銃を速射した。この敵の体躯なら的を絞る必要はない。とにかくダメージを叩き込む。ストライクも刀を当たるを幸いと振り回す。

敵が前のめりになった。そして、最後の力をふりしぼって頭を上げたその瞬間、それをランディは逃さなかった。眉間に正確な一発。敵は今度は後ろ向きに倒れた。そして二度と起き上がってはこなかった。

ストライク: やれやれだ……
ランディ: ふう、これで終わりだな

アスタシア: おお、神よ‥
ウォン: 神の御心のままに‥
ようやく気がついた2人。
ウォン: 神の正しさが実証されましたね
アスタシア: やっぱりランランさんとストライクのおかげだわ。神に選ばれた戦士か…
ストライク: 選ばれんでいい…
アスタシア: なんで嫌なの?いかにもかっこいいじゃないの
ストライク: 俺は神なんぞ信じてないんでな‥‥
アスタシア: またまたぁ、そのうちわかるわよ。あなたは選ばれた民なんだからね
ストライク: 選ばれんでいい…
ウォン: ここは傾倒しておいて、ガッといってグッですよ!
ウォン神父はそういって、ランディに向き直った。
ウォン: 若い二人はほうっておいて我々は帰りましょう
ランディ: OK、OK
帰ろうとする神父に気付いてアスタシアはあわてて後を追う。そしてその後にストライク。


そして、ここはパイオニア2の例の公園。

アスタシア: ふぅ、何はともあれ、よかったですね。神父さま
ウォン: ご苦労様でした。邪教は見事に打ち倒されました
アスタシア: やったー
ウォン: これで我々の天下……いやいや
アスタシア: じゃ、引き続いてランランさんの入信式?
ウォン: そうしますか… ああっ、どこへ!?
アスタシア: ああっ、もう、せっかちなんだからぁ
ランディはそのまますたすたとギルドへ。報酬の受渡しがそこで行われるからだ。

ウォン: 報酬はもうギルドに預けておきました。特別サービスで……ホーリーエムブレムを代わりに差し上げることにしました。
アスタシア: あぁ、いいなぁ
ウォン: きっと喜んで頂けるでしょう。はははっ
アスタシア: ホーリーエムブレムか…ああ、ランランさんがうらやましいわ
ウォン: あなたも次に昇進すれば配られることになっておりますよ
アスタシア: はい!
アスタシアは手を胸の前に組んで、にこにこしながらウォン神父を見つめていた。その視線はやがて空に。
ウォン: では教会に戻ってお布施をかき集めましょう
アスタシア: はい! いくわよ! スト! あ、あれ?
既にそこにはストライクの姿はなかった。
アスタシア: ごめんなさい、ちょっとストライク探してきます。
公園を駆け足で去るアスタシア。ウォン神父はそれをうなずきながら見つめていた。腕を組み、いつものような穏やかな顔で。


ランディ: それで、新しい仕事は入ってるかい?
ランディはいつものポーズでカウンターに向かっている。今度はディスプレイよりオペレータの顔を見つめている。
ランディ: ……安い仕事ばかりだな…
オペレータ: それより、前回のお仕事の報酬が届いてますよ
ランディ: ん?何だ、この変なものは?! これが報酬だと!?あの生臭坊主め、今度会ったらギタギタにしてやるからな! 覚えてろよ!!
この後、彼等がどうなったか、それはこの物語の範疇を越えるものである。

(おしまい)