JRPGとは何か

日本のRPGは海外のRPGとどこが違うか

JRPGと会話

戦闘が問題解決の唯一の方法であるJRPGに対して、海外のRPGでは多くの場合、問題解決の方法が複数用意されている。そしてそれを支えているのが、NPCとの会話である。

もちろん、JRPGにだって、会話も選択肢もある。海外のRPGでも、結局NPCは同じことしか言わない。しかし、両者にはスタイルの違いが存在する。

会話の能動性

JRPGでは、会話は主にNPCが一方的にしゃべり、プレイヤーの選択の余地はあまりない。それに対して海外のRPGでは、プレイヤーから話し始め、NPCはそれに対応するというつくりになっていることが多い。

例えば、街の入り口に立っている人との会話は、こんな感じになる。

JRPGの例

街の人:「ようこそわがワールシュタットの街へ。この街は貿易で栄える、とても豊かな街です。何かお探しならば、まずは街の中心にあるマーケットへ行ってみるといいですよ。宿屋も酒場も中心部にあります」

海外のRPGの例

街の人:「旅の人、何か用かね?」

  • 「ここは何という街だ?」
  • 「どこか買い物ができるところはあるかい?」
  • 「いや、何でもない」

会話という行動

ゲーム内で街の人と会話をするには、たいていのゲームでは、街の人の方を向いてボタンを押す。JRPGでは、これ自体が「行動」であり、その行動の結果として情報が表示される。それに対して、海外のRPGでは、ボタンを押すのは「会話モードに入る」ということであり、その中で、自分がNPCに対して言いたいことを選択する。

この両者の違いは、会話に対する位置づけの違いからきている。JRPGにとっては、会話は一方的に話を聞くためのものだ。それに対して、海外のRPGでは、会話もゲームの一部であり、会話の選択によっていろいろなことが起きる。JRPGでは、会話に選択肢が出てくることがそもそも少ない上に、ゲームにあまり影響も与えないから、気楽に選んでよい。ゲームに影響を与えるごく一部の選択肢は、それによってまったく別のストーリーに分岐するから、自分がどのストーリーを見たいかによって選ぶことになる。

もちろん、海外のRPGでも、ほとんどの会話はゲームに何の影響も与えない気楽なもので、後で選びなおすこともできるから、形式上はあまり変わりがない。しかし、海外のRPGではすべての会話が同じフォーマットで提供されるのに対して、JRPGではフォーマットが違う(選択肢が出る会話と出ない会話がある)ことが、大きな違いである。会話がすべて同じフォーマットであるということによって、すべての会話に緊張感が生まれる。街の人との何気ない会話の中に、もしかしたら重要な選択肢が隠れているかもしれないからだ。

RPGのストーリー

JRPGでは、会話は、ストーリーを進めるためにある。前もって定められた人に向かってボタンを押すことで、ムービーが始まり、ストーリーが進む。たまに選択肢が出て、それによってストーリーが分岐する。これは俗に「フラグ立て」と呼ばれる。フラグは会話だけとは限らないが、あらかじめ設定された「フラグ」を「立て」ることによって、本のページをめくるように、ストーリーが進んでいく。

ところで、ここで「ストーリー」という言葉を無造作に使ったが、これはいったい何だろうか。本来、「キャラクターがゲーム内で行ったすべてのこと」と定義するのが自然だ。すると、街で買い物をすることも、洞窟に入ることも、洞窟の中でオオコウモリと戦うことも、洞窟の途中で回復薬が切れたから街へ戻ることも、同様にストーリーの一部だ。もちろん、会話もその中の一部である。

JRPGでは、ストーリーがあらかじめ設定されていて、それをたどるような行動をとることを強制される。そして、それ以外の要素(戦闘に関すること)は無視される。それに対して、海外のRPGでは行動の結果がストーリーになる。より正確に言えば、「これがストーリーです」という明確なものはなく、プレイヤーが「あんなことやこんなことがあったなぁ」と後で思い返すのがストーリーだ。あらかじめ設定された道を進むのと、自分が進んだ跡に道ができるのとの違いである。

残念ながら、進みやすい方向はそう何パターンもないから、「自由に進め」と言われても、結局はみな同じような道をたどる。しかし、だからといって「どうせ自由には進めないんだから道をあらかじめ付けておきました」と言ってしまうと、原則がぶち壊しになってしまう。

会話とは何か

JRPGでは、会話は情報を提示する役割と、ストーリーの通過点となる役割(いわゆるフラグ)の2種類がある。それに対して、海外のRPGでは、会話も行動の1つであり、その行動の結果として、情報が取得できたり、助力が得られたり、その他もろもろの効果があったりする。JRPGでは、会話は一方通行であり、たいして重要なものではない。それに対して、海外のRPGでは、会話はゲームの一部であり、戦闘と同じくらい、あるいは戦闘よりさらに、ゲームの中心的要素となる。

JRPGの会話に欠けているのは、能動性である。PCが発言をしてNPCが聞くのではなく、NPCが発言をするのをPCが聞くという形になる。だから質問も、PCからNPCへなされるのではなく、NPCからPCに対してなされる。プレイヤーは、たまに出される選択肢のどれかから選ぶという以上の能動性が与えられることはない。

RPGにおいて、会話は「聞く」ものではなく、「する」ものである。JRPGでは、この原則が欠けている。