ゲームマスタリングの方法

TRPGのゲームマスタリングをする上でよく問題になる項目を検討します。

プレイ

さて、ゲームシステムと世界設定と来たら次はプレイについて話をしましょう。「あれ?次はシナリオでは?」と疑問に思うかもしれませんが、シナリオは既成のものを買ってきて下さい。自分でシナリオを作るのは既成シナリオでうまくマスターができるようになってからで十分です。ここではゲームマスターがプレイ中に使えるワザをトピック的に述べることにします。

ゲームマスターがすること

プレイ中にゲームマスターがすることは単純です。プレイヤーの行動宣言を聞いて、「その結果どうなったか」を決めるというものです。「熊に向かって剣を振った。どうなった?」とか「酒場で見知らぬ老人に酒をおごってやった。どうなった?」とか「屋敷の二階の開いている窓から侵入しようとした。どうなった?」といったようにです。

その時プレイヤーを含めて周りがどんな状況にあるかという事はシナリオに書いてあります。どんな状況にあるのかが把握できていれば、PCがある行動をした場合にどんな結果になりそうかはすぐ予想がつくでしょう。剣を振ったら熊に当たるか空振りになるか勢い余って剣が手からすっぽ抜けるかのどれかだろうし、屋敷の窓から侵入しようとしたら音もなく侵入できるかガチャンと音を立てて住人に気づかれるかのどちらかでしょう。結果がどうなりそうかが予測できたら、次にいくつかの可能性があるうちのどれが起こったのかを判定をします。

判定の仕方はルールブックやシナリオに書いてあります。剣を振った場合はどうやって判定するか、窓からこっそり侵入した時はどうやって判定するか、などです。ルールブックの該当する項目を探してその指示に従いましょう。もし「老人に酒をおごってやるとどうなるか?」というように判定の仕方がルールブックに書いてなかった場合には、似た判定(「好感度チェック」のように)を流用してアドリブで判定ルールを作ってください。

NPCとの会話の内容など、ダイスで判定するのではない場合もあります。この場合は「このNPCはこんな事を言われたらどう対応するだろうか」と考えてみて下さい。そして判断に迷ったらいくつかの候補の中からダイスを振って決めて下さい。

世間では「ゲームマスターは難しい」と思われています。確かにプレイヤーより難しいのは確かですが、その難しさのほとんどは「シナリオを自作しなくてはならない」というところから来るものです。そしてシナリオは本当は自作しなくても買ってこればすむものなのです。隅々まできちんと書かれた「本物の」シナリオを買ってきてそれでゲームマスターをやれば、これがそんなに難しくない作業だということがわかるでしょう。

ゲームマスター補佐

あなたがよっぽど頭の回転が速いのでない限り、ゲームを始める前にプレイヤーの中から「ゲームマスター補佐」を任命して下さい。ルールに熟知した慣れたプレイヤーが望ましいです。

補佐の役はルールブックを読んで判定する役です。「あれ?それはゲームマスターの役割じゃないの?」という人がいるかもしれません。本当はそうです。しかしゲームマスターはただでさえ忙しいのですから暇そうなプレイヤーに仕事を一部任せてしまいましょう。

例えばあるキャラクターが壁を飛び越えようとしたとしましょう。この時はプレイヤーがダイスを振って出た目を言い、あなたがルールブックのチャートを引いて成功したかどうかを告げるのが本来のやり方です。しかしその代わりにこう言うのです。「この壁は1.5mで難易度は+10だよ。さあ、判定して。」これでチャートを探して判定する仕事はプレイヤーがやってくれることになります。

もし必要なチャートがゲームマスター用のルールに書いてあっても、それを見せてしまってかまいません。プレイヤーがゲームマスター用のルールを知っていたところで、それはプレイの助けにはなっても妨げになることはありません。「敵モンスターの強さがわかってしまうと困るんじゃないか?」と思う人がいるかもしれませんが、ルールブックに書いてあるモンスターをそのまま出すから悪いのであって、少々ステータスをいじってアレンジすればいいのです。それに経験のあるプレイヤーならたいていのTRPGのゲームマスターセクションは読んだことがあるものです。

やってみればわかると思いますが、ゲームマスターがとても忙しいのに対して、プレイヤーは案外暇で放っておくと雑談や居眠りを始めます。そうならないためにも仕事はできるだけプレイヤーにやってもらいましょう。

プレイヤーとの相談

ゲーム中にわからない事やどうしようか迷う事があったら遠慮なくプレイヤーと相談しましょう。「うーん、幅跳びで5mの溝を越えるのってどのくらいの難易度だと思う?」といったようにです。こうやって一般的な事実をどう処理するかを相談してもゲーム上の支障は全くありません。もしかしたら自分の都合のいい意見を主張するプレイヤーもいるかもしれませんが、その時は自分の常識も加味して自分で判断すればいいだけの話です。

逆に、プレイヤーの抗議も素直に受け入れましょう。例えば「幅跳びで5mの溝か……成功確率10%でロールしてみて」とゲームマスターが言ったとき、「おいおい、5mと言えば中学生でも陸上部員なら跳べる距離だぞ。そんなに低いわけはないだろう。」とプレイヤーの誰かが言うかもしれません。もし「中学生でも5mくらい跳べる」というのが本当だったとしたら、身のこなしの軽いシーフだったら当然跳べてもよさそうな距離です。他人の意見を聞いてこの成功確率はやっぱり間違いだと思ったなら、ためらわずに訂正して下さい。全員が納得できる判定をすることができます。

判断に迷う事を素直にプレイヤーに相談することで、ゲームマスターの孤独感や重圧を柔らげることができます。判定に困ったら「この場合どう判定したらいいと思う?」、NPCのリアクションに困ったら「こんな場合どうリアクションすると思う?」と聞いてみましょう。そしてプレイヤーの意見をもとに自分で判断して下さい。もちろんプレイヤーの意見をそのまま受け入れなければならないわけではありません。

ルールの適用

上の話はルールが書いてなくて自分で判定をしなければいけない場面ですが、逆にルールのせいで困るという場面もあります。例えば多くのゲームでは疲れの影響をルール化していません。ルールに書いていなければ、千匹のオークを相手に何十時間と戦っていられるのでしょうか?

ちゃんとしたルールにはかっこ書きで「その他ボーナス/ペナルティはGM判断で加える」と書いてあるはずです。ルールを杓子定規に適用した結果があまりにも非常識だったら、GM判断でボーナスやペナルティを加えてください。これはルールを無視することではありません。

そもそもルールとは何のためにあるのでしょう?ルールはGMの判定を手助けするためにあります。「剣のダメージはいくつにしよう」「走る速度はいくつにしよう」といちいちGMが判定に迷わなくてもいいようにするためのものです。たまに「ルールに書いてある事と違う」と抗議するプレイヤーもいますが、絶対なのはルールではなく世界法則です。「この世界でこんな事をしたらこうなるだろう」というのが世界法則であり、これを判定するのがGMの役割です。ルールはこれを手助けしているだけなのです。

ルールの欠陥をついた行動はGM裁量でペナルティやボーナスを加えることで防ぐことができます。本当は「ルールの欠陥」という言葉は正しくありません。ルールはある典型的な状況で判定を簡単にするための情報でしかないのですから。ルールがそのまま適用できない状況だってたくさんあるのです。

オープンダイス

普通はゲームマスターがダイスを振る時は出た目がプレイヤーにわからないように隠して振ります。それに対してプレイヤーに見えるようにダイスを振るのを通称オープンダイスと言います。結論から言うと一部の例外を除いてオープンダイスをお勧めします。

オープンダイスの欠点は、出た目がプレイヤーに見えることで成功率がだいたいわかってしまうことです。例えば2d6で10が出たのに敵の攻撃が命中しなければ、プレイヤー達は敵の攻撃はほとんど当たらないと判断できてしまうことになります。しかし、相手の一撃が当たらなかった時、それがきわどくかわしたのかそれとも余裕でかわしたのかは現実ならだいたいわかるでしょう。つまりダイスの目を見せることはより現実に近づけることでもあります。どうしてもダイスの目を知られると困る場合だけ隠せばいいのです。そして経験上そんな場合は多くありません。

オープンダイスの欠点の一つとして、敵側のクリティカルヒットのような都合の悪い目が出ると困るというのを挙げる人もいます。しかしそれは間違っています。PCが死んでしまうような目を振ってしまったからといってそれを無視するのは立派なイカサマであり、そんなイカサマばかりしたら何のためにダイスを振っているのだかわからなくなってしまいます。どんな理由であれゲームでイカサマはするべきではありません。

逆にオープンダイスにする利点としてゲームマスターの負担が減るという事が挙げられます。判定をプレイヤーにやってもらうのです。例えば戦闘の時には敵の攻撃ボーナスと防御ボーナスもオープンにしてしまうのです。そうすればあなたはダイスを振ってHPをメモするだけですみます。あなたは敵全員を一手に引き受けなければならないのでその仕事は大変なはずですから、できるだけ仕事は他の人にやってもらいましょう。

あまりにもそれはあからさま過ぎると思ったら、攻撃の時にはダイスだけ振って「攻撃ボーナスがいくつ以上だったら当たりをか教えて」とプレイヤーに逆算してもらいましょう。そうすれば自分は数字の比較だけで済みます。そしてそのうちだんだんと明らかな当たり/外れが多くなり判定の手間が減ってきます。現実にあてはめてみると、戦っているうちにだんだん敵の強さの見当がついてきたということに相当します。妥当な線ではないでしょうか?

探し物

初心者が対応を間違えやすいのが探し物についてのルールです。例えば部屋に何か手がかりになるものがないかどうか探す、といった場合です。シナリオに例えば「たんすの裏に鍵が落ちている。見つかる確率は50%」と書いてあったとして、どう判定すればいいのでしょう?

部屋の探し方には2通りあります。何を探すのかを指定するやり方とどこを探すのかを指定するやり方です。「漠然と何かないかを探す」という行動宣言を見かけることがありますが、実際問題としてこんないい加減なやり方で隠された物品が見つかってしまっては面白味が半減します。だからここでは考えないこととします。

探し物をする時はできるだけ探す対象物をはっきりしてもらいましょう。部屋に何かが落ちているとしたらどういうものがありそうなのかをプレイヤーに考えてもらうわけです。ここで「鍵が落ちていないかどうか探す」とプレイヤーが宣言した時、ダイスを振って50%の確率で見つかるようにすればいいわけです。

対象物を指定するやり方に比べて、場所を指定して探すやり方には欠点があります。それはゲームマスターが場面を描写する時に探すべき場所がバレてしまうというものです。ゲームマスターが「この部屋には机と本棚が並んでいてその隣にベッドがあるよ」と部屋を描写したら、この部屋に何かがあるとしたら机と本棚とベッドのうちのどこかにあることになります。プレイヤーはきっと「机」と「本棚」と「ベッド」を探すと言い出すでしょう。その結果隠された物品が唐突に発見できてしまうことになります。これはちょっと変ではありませんか?かといって、いきなり「鍵は実は本棚の横に無造作に置いてあるかばんの中にありました」というのも変です。やはり場所を指定して探すというやり方自体に問題があります。

というわけで、探し物をする場合にはまず何を探すのか宣言してもらい、その上でもし指定したいのなら「どこを探すか」を宣言してもらいましょう。そして探す対象物が当たった場合には指定の確率で判定を行い、探す場所も当たったら確率を上げて下さい。つまり「鍵を探す」という宣言なら50%で判定を行い、「鍵は普通たんすの裏なんかに落ちてるものじゃないかなー。そう思ってたんすの裏で鍵を探します」と宣言なら成功率を80%くらいにする、というものです。

見つかったかどうかを判定するダイスをオープンで振るかクローズで振るかというのはまた問題です。オープンで振って高い目が出たのに見つからなかった場合、ここには鍵はないに違いないとプレイヤーは判断できてしまうからです[1]。しかし、これについてはある意味それでいいと言えるかもしれません。高い目が出たということは、PCが効率よくしらみ潰しに探すことができた事を意味します。徹底的に調べたということはPCにはなんとなくわかるはずです。

プレイヤーが探し物をする場合には、必ず回数制限をつけるか不利な条件をつけましょう。例えば「探し物1つにつき10分かかる。1時間経って何もなかったらPCはあきらめるよ」といったようにです。プレイヤーは落ちている物の推測を6回言えるわけです。最初に条件を明言するのがミソです。そうするとプレイヤーは何を探せばいいのかを優先順位をつけて考えることができるからです。探すことによるデメリットがないと、プレイヤーは何かが見つかるまで当てずっぽうでどんどん品物の名前を言い続けるでしょう。

探し物が見つからなかった場合、単に「見つからなかった」と言うのもいいですが、シナリオとは関係のないダミーの物品を出すのもいいでしょう。「折れたペンが見つかった」「エイミーという名前が書かれたメモが見つかった」といったようにです。そうするとプレイヤーを一層困惑させる事ができます。その際、ダミーの物だからといってにやにや顔でいてはいけません。できるだけ思わせぶりに。

ゲームオーバー

最近のコンピュータRPGに慣れた人によく考えて欲しいのが、プレイヤー側が負ける条件の問題です。プレイヤー側の勝利というのはつまりボスを倒したり依頼を達成したりすることですが、ではプレイヤー側の敗北というのは何でしょう?本来のRPGでは全滅=ゲームオーバーですが、PCが全滅しても教会かどこかからゾンビのように復活するようなゲームもあります。

とにかく、ゲームオーバーの条件をきっちりと決めて下さい。PCが一人でも死んだら負けとか、あるいは制限時間以内に依頼が達成できなければ負けとか。その条件はゲームの開始前に明確にプレイヤーに告げ、そしてもしゲーム中にその条件が満たされてしまったらきっぱりとプレイヤー側の負けを宣言しそこでゲームを終了させましょう。例えシナリオが途中であっても。

ゲームオーバーの定義をきちんとしないと、プレイヤーは勝つまで延々とプレイを続けます。そして「時間を費やしさえすれば誰でも勝てる」という結果になってしまいます。これでは勝利のありがたみも薄れてしまうでしょう。負けるかもしれない戦いに勝つからこそ意味があるのです。誰でも勝てるような戦いをやる意味なんてあるでしょうか?

PC達があちらの戦いで負け、こちらのイベントでどじを踏み……とミスを繰り返していくと、そのうちPC達が八方ふさがりの状況に追い込まれてしまうことがあります。「もはや打つ手がない」という状況です。この状態になるとプレイヤーは意気消沈し、ゲームへの興味が急速に薄れてきてしまいます。そしてこんな状況に陥るとゲームマスターはどうしていいのかわからなくなってしまいます。

この状態は、他のゲームで言えばもう勝つ見込みのない状態に相当します。将棋でいえば飛車も角も相手に取られてしまった状態、シューティングゲームで言えば難しい面で死んでしまってパワーアップが全部なくなってしまった状態、大戦略で言えば戦車ユニットが破壊され、敵に周りを取り囲まれてしまった状態です。普通のゲームならこんな状態になったらプレイヤーは投了します。しかしなぜかTRPGだけは「ゲームマスターがなんとかしてくれる」と思ってしまい、そして実際になんとかしてしまうマスターが多いのです。TRPGだけを例外にしてはいけません。

こんな場合になってしまったら、ゲームオーバーを宣言してゲームはそこで終わりにすべきです。ただ突然敗北を通告をするのはいくらなんでも唐突ですから、事前に「こういう場面になってしまったらプレイヤーの敗北でゲームは終わり」と明確に宣言しておきましょう。「○○の時までに事件を解決できなかったら終了」と時間制限を設けておくのが一番わかりやすいゲームオーバーの条件です。

一番大事な事は、「負け」があることをプレイヤーに自覚してもらうことと、プレイヤーを負かすのを恐れないことです。そして、プレイヤーが負けたらそこでゲームは終わりにしましょう。

PCの死亡

「ゲームオーバー」というとすぐ思いつくのが「PCが死亡する」という事態です。まず、上で言ったように「PCが死亡しない」というのはあってはならないことだということを繰り返し述べておきます。プレイヤーが致命的なミスを犯したらPCは死ぬのです。ゴブリンの会心の一撃を受けたらPCは死ぬのです。PCが死なないのだったら戦闘なんてやる意味がありません。

ただここで一つ問題があります。運が悪ければPCはすぐ死んでしまうということです。せっかくやる気まんまんで始めたのに、開始そうそう洞窟コウモリのクリティカルヒットで死んでしまってはい終わりでは不満に思うのは当然のことです。ましてや全滅してしまったらどうしましょう?

もし全滅してしまったのが開始直後なら、前回のプレイは忘れてやり直すという手もあります。中盤で死んでしまったのならそこで終わって別のゲームをやるという選択肢もあります。もちろん終盤だったら「残念だったね」で終わるという手もあります。

こうした問題は別にTRPGに限った事ではありません。将棋だってうまい人同士なら時間がかかるけど力の差がありすぎるとすぐ勝負がついてしまいます。重量級と呼ばれるボードゲーム(Titanなど)でもゲーム後すぐに滅ぼされて勝負がついてしまったりします。こうしたゲームではどんなに早く勝負がついてもそのゲームは終わりにして次のゲームをやります。TRPGも例外ではありません。早く終わってしまって時間が余ったら次のゲームをやればいいのです。

ゲームマスターによっては全滅しても何らかの助け舟を用意する場合もあります。例えば味方の騎士団が助けに来てくれた、というようにです。しかしこれを多用すると「PCが全滅してもきっとゲームマスターがなんとかしてくれる」というプレイヤーの甘えにつながります。もしこれをやるとしたら少なくとも特別措置であることを強く主張して下さい。

もしかしたらこの特別措置の回数を規定したくなるかもしれません。例えば「1回だけは騎士団が助けに来てくれる」とか。しかしこれを明言してしまうと、プレイヤーはこれを前提として行動してしまいます。「どうせ1回は騎士団が助けに来てくれるからいいや」と無謀な敵陣突入を始めてしまうかもしれません。だから特別措置は無いことを前提にして、どうしても困る場合だけつけて下さい。あくまで「特別」なのですから。

全滅ではなく死んだ人が一部だけだったとしたら3つの選択肢があります。「ゲームから抜けてもらう」「キャラクターを作り直す」「死んだ人を復活させる」という3つです。本当は一番目の選択肢が推奨なのですが、これは場の事情によってできない場合がありますので、その場合は作り直しか復活かのどちらかになります。この場合はゲーム進行上の大きなデメリットを与えて下さい。例えば時間制限があるならPCの死亡のために何日かが過ぎたことにします。これによって任務の達成はより困難になるのです。

「1人でもPCが死んだら任務は失敗とする」という条件を付ける方法も考えられます。一人だけ死ぬとその人だけする事がなくなったりキャラを作る必要が出てくるという問題が生じるので、いっそのことゲーム自体を終了させてしまおうという考え方です。仲間の死に対して連帯責任を負わせるという意味ではこの方法もアリでしょう。

PCが死んだらそこで(少なくともそのPCを担当している)プレイヤーはゲームから脱落させるのが理想ですが、そうは言っていられない事情もありますので、そういう場合にはPC全体に大きなペナルティを与えて下さい。安易に助けてはいけません。

時間制限

今までに何度か例に出しましたが、ゲームに時間制限を設けるというのはいい方法です。これはゲーム中の時間であることもありますし現実のプレイ時間のこともあります。

任務に時間制限を設けないと緊張感がなくなります。例えば戦闘の途中で傷ついたらすぐ撤退して休息する、なんていうやる気のないサラリーマンのようなPCになってしまいます。時間制限があればそういうのんびりした事をやってはいられず、きちんと戦略を練らなくてはならなくなります。だから時間制限をつけましょう。

時間制限をつけた場合はすべてのペナルティを時間に置き換えてもいいでしょう。PCが死亡した場合は復活させるのに○日、王様を怒らせた場合は次に会ってくれるまでに○日、といったようにです。そしてゲームオーバーの条件はただ一つ「○日経って事件が解決できなかったらプレイヤーの負け」とするのです。こうするとプレイヤー達は今どのくらいまずい状況にあるのかがすぐわかります。

こうやってすべてのペナルティを時間に置き換えると一ついいことがあります。突然のゲームオーバーがなくなることです。少なくとも制限時間になるまではゲームが続きます。プレイヤーがよっぽどヘマばかりするのでない限り、「ゲームをした」と思えるだけの時間はプレイできるでしょう。そしてプレイヤー達も条件が最初からわかっているだけに納得がいきます。

時間の経過

ゲームをやってみるとゲーム内の時間と実時間はひどくアンバランスな事に気がつくはずです。戦闘中ではゲーム内で1ラウンド(多くのゲームでは10秒)の処理をするのに何分もかかったりしますし、逆に何事もなくゲーム内時間の一ヶ月が一瞬で過ぎてしまうこともあります。こうしたプレイ時間とゲーム内時間の極端なアンバランスさが時としてトラブルのもとになることがあります。

ゲーム内時間に比べて実時間の方が長くなる例として、一瞬のうちに決断を迫られる緊迫した場面が挙げられます。「建物の陰に隠れて様子をうかがっていたら敵に見つかった! どうする!?」といった場合です。ここで一目散に逃げ出すか剣を抜いて踊りかかるかは重要な決断です。こんな時にプレイヤー全員であれこれ議論を始めてしまうことがあります。本来であればあれこれ考えている暇なんてないはずなのですが。

私はこうした議論はある程度大目に見ていいと思います。なんてったってゲームなのですから。こうした決断を考えるのがRPGの醍醐味なのです。だからPCは一瞬のうちに判断を迫られたはずだからというだけの理由でいたずらに急がせる事は避けるべきです。しかし重要な決断になればなるほど議論は単なる時間のばしになってしまいがちです。「下手の考え休むに似たり」で単にどっちにするかを決めかねているという状況になってしまうと、時間ばかりが過ぎて皆いやになってしまいます。

こういった場合にはあらかじめ考慮時間を決めておくとよいでしょう。例えば1ラウンドの行動を決めるのに使える実時間は最大2分、といったようにです。ゲーム内時間に比例してではなく一つの決断に対して使える実時間を決めておくというのもいいでしょう。一つの決断にあまり時間をかけすぎるとゲームがだれてきてしまいますから。しかしこの場合は切羽詰まった状況でない時に時間をとってあれこれプレイヤー間で論議する事を許可すべきでしょう。

逆に、ゲーム内時間の方が長くなってしまってトラブルを引き起こすこともあります。例えば「PCは10年間苦役につきました」といったように、プレイヤーは宣言するだけでPCに何をさせることもできてしまうからです。月や年単位の長い時間を一言の宣言で終わらせてしまうと、その間の年月の重みというものが感じられなくなってしまいます。

結論を言うと、プレイ中に長いスパンの時間の経過があってはいけません。月単位のゲーム内時間の経過は前の冒険が終わってから次の冒険が始まる前に済ませてください。いったん冒険が始まったらゲーム内時間での一日一日を大切にしなくてはいけません。一言で済ませられる時間の経過は長くて一日でしょう。


  1. クローズで振るデメリットは、ゲームマスターが面倒だという事です。そして実際のところ、一人一人スキルボーナスを聞いてダイスを振って判定して……というのは非常に面倒ですからできれば避けたいところです。 ↩︎