ゲームとは何か

ゲームとは何か。そしてゲームはなぜ面白いのか。

はじめに

「ゲーム」イコール「ビデオゲーム」になってしまって久しい。ビデオゲームが登場した1980年代が黎明期だとすると、1990年代が繁栄と変質の時代であり、2000年代は絶頂期かつ衰退の時代である。その徴候がだんだんと顕在化しつつある。

なぜビデオゲームが衰退に向かっているかというと、ゲームの本質を見失っているからである。1980年代のゲームは本物のゲームをコンピュータ上に載せるので精一杯だった。1990年代になって、ビデオゲームに様々な素晴らしい要素が付け加えられた。そして現在、1990年代のビデオゲームを踏襲してさらに様々な要素を付け加えようとしている。

しかし、ビデオゲームにあまりにも様々な要素が付け加えられすぎたせいで、本来の「ゲーム」が相対的に薄まってしまった。「ゲーム」の本質を見直さないでどんどん新しい要素を付け加えるだけでは、ビデオゲームの中の「ゲーム」はどんどん薄まっていくばかりであろう。[1]

ここではゲームの本質について考えてみたい。ゲームとは何であり、どうすればよりゲームらしくなるのか、である。

語句について

この文書で「ゲーム」と書いた時、この言葉は辞書で「ゲーム」を引いて出てくるそのままの意味であるととらえてほしい。将棋もテレビゲームもサッカーもゲームだし、英語で言えば狩りもゲームだ。そして「ボードゲーム」と書いた時には、盤と駒を使ってテーブルの上に皆集まって遊ぶゲームだけを言っているものと解釈してほしい。そしてここで言っている「ゲーム」という言葉が一番ぴったりくるのがこのボードゲームだ。[2]

「ビデオゲーム」と書いた場合には、ゲーム機やPCなどで遊べ、一般にゲームと称されているものを指している。ここで論じている意味においては「ビデオゲーム」≠「ゲーム」である点に注意してほしい。

本文書の目的と注意

はじめに、本文書で何を論じたいのかを述べておこう。よく「ゲーム性」と呼ばれるものの本質をつきとめるのが本文書の目的である。「ビジュアルがすごい」とか「音楽がいい」とか「ストーリーがすばらしい」というのはゲームをやってみれば何となくわかるし、どこがどういいのかも見当がつく。しかし「ゲーム性」というものだけはこう簡単にはいかない。シンプルなルールでもすごく面白いこともあるし、凝ったゲームでも(というよりは凝ったゲームの方が)面白くなかったりする。他の要素をすべて取り除いて、ゲームが持っている面白さとは何だろうかと考えるのがここでの目的である。

というわけで、この文書で使う「ゲーム」という言葉は世間一般のそれよりずっと狭い意味で使っている。そこは注意してほしい。中には特定のゲームをけなす発言もあるだろが、それはあくまで「ゲームとして」である。ゲームにはゲーム性以外の様々な要素があるから、ゲームでないからといって面白くないわけではない。映画やマンガのように、ゲームでなくても面白いものはたくさんある。

ここで書くのは「ゲームとしての」面白さについてだけであり、その他の要素については書くつもりもないが見下しているわけでもない。良いストーリーの作り方については小説作法を参考にすればよいし、良い絵の書き方は美術書を参考にすればよい。ここでは純粋にゲームを論じたいだけである。

略語解説

この文書内で使用する略語についてここで解説しておく。

STG
シューティングゲームの略。最近では画面に向かって銃を撃つ「ガンシューティング」や、3D空間を歩きながらカーソルで敵を敵を狙って撃つFPSもシューティングゲームと呼ばれるが、筆者はSTGというとどうしても戦闘機が弾を避けながら敵を撃つ(横/縦)スクロールシューティングを思い浮かべる。本稿ではSTGと呼ぶときには大抵スクロールシューティングのことだと思ってもらいたい。
SLG
シミュレーションゲームの略。しかし「恋愛シミュレーション」なる言葉が出来て以来、この言葉は急速にわけのわからない言葉になってしまった。筆者はSLGと聞くと六角形のマスの上にコマが乗っているものを思い浮かべるが、それはここでは「ストラテジーゲーム」あるいは「戦略ゲーム」と呼ぶことにする。 なお、「シミュレーションゲーム」と「シミュレータ」の違いも把握しておくこと。前者はゲームだが後者はゲームではない。
RTS
リアルタイムストラテジーの略。ストラテジーゲームは普通はプレイヤーに考える時間が十分に与えられる。これをリアルタイムにしたものがRTSである。
TCG
トレーディングカードゲームの略。MtG(=マジック・ザ・ギャザリング)に代表される、非常に多くの種類のカードを使って行うゲームである。カードの種類が非常に多いことと、ゲームではその一部しか使用されないことが特徴である。
RPG
ロールプレイングゲームの略。これもまた乱用はなはだしい言葉である。もともとのロールプレイングゲームが何であるかは別稿に譲るとして、ここでは世間一般にRPGと呼ばれているなんだかよくわからないもの全体を表すことにする。
TRPG
テーブルトークRPGの略。紙と鉛筆でやるRPG、といっても知らない人には何のことだかさっぱりわからないだろう。ここで簡単に説明できるようなものでもないから、他の文献を参照していただくということで勘弁願いたい。

  1. 最近、昔のゲームのリバイバルが多いのもここに原因がある。もちろん安くできるからという理由もあるのだろうが、最近のゲームが昔のゲームより質が劣るから、皆最近のものより昔のものをやりたがるのだ。 ↩︎

  2. 別にボードゲームをひいきしているわけではない。ボードゲームは物理的な制約が非常に多いため、ゲーム以外の要素を混ぜることが難しいからだ。 ↩︎