おたくの歴史

おたくの考え方を歴史から探る

はじめに

今、「萌え」という言葉で「おたくとは何か」の論議が再燃している。「おたくとは何か」はたびたび話題となるテーマである。前回話題となったのはエヴァンゲリオンの頃だったから10年くらいになる。

こういう議論が再燃するのは、世代の分かれ目のときだ。ある世代が2つの時代を生きて自分たちが何なのかがはっきりした時にこうした世代論が生まれる。人は一つの時代を生きただけではそれが何なのかはっきりしない。二つの違う性格を持つ時代を知って始めて、自分たちの世代とそうでない世代がはっきりする。

私のスタンスはいつも通り、「何が起きたかをはっきりさせておこう」というものだ。つい感傷的になってしまうのは許してほしい。非難の意味も提言の意味も込めていないつもりだ。

言葉の使い方について

「おたく」という言葉は難しい言葉である。特に、この言葉が何種類もの別の意味を持っているからである。

初めに気をつけなければならないのは、「おたく」という言葉はもともと「アニメにはまって対人コミュニケーションのとれない奴」とでもいうような意味だった。それが、一般に広まる時に「アニメにはまった奴」という意味になってしまった。本来、「おたく」とは、アニメにはまった人全員を指す言葉ではなく、その人の中のごく一部分を指す言葉だった。世間で使っている「おたく」の使い方は本来は誤用である。とはいえ、ここでは一般に広まってしまった方の意味を使うことにする。

また、おたくを「オタク」とカナ書きすることにこだわる人もいる。「おたく」と「オタク」を使い分ける人もいる。違う意味を使い分けるためにはこれは便利である。しかし、私はこれらの意味を全く違うものとは考えない。一連の流れを考えれば必然とも言える変化なのである。だから、ここではすべてを「おたく」と平仮名書きする。どういう意味で使っているのかは文脈で考えてほしい。

注意

本書では、それぞれの章である視点(対立軸)を中心として変遷を見ていく。視点自体は昔のものから今のものへと順番に並べてあるが、必ずしも本書で述べている順番通りに事が運んだわけではない。第2章の始まりは1970年頃で終わりは1990年頃であるが、第3章の始まりは1980年頃で終わりは2000年頃である。オーバーラップしている部分があることに注意してほしい。

目次

  1. おたくと価値観
  2. おたくの理想
  3. おたくと創造
  4. おたくと萌え
  5. まとめ