ライトノベルとは何か

ライトノベルは通常のフィクションとどこが違うのか。

はじめに

さて、これから「ライトノベルとは何か」という話を始めるわけだが、その前に一つ、「ライトノベル」という言葉の使い方について、あらかじめ断っておきたい。

ライトノベルは形式ではない

ここでは、ライトノベルを、従来型のフィクションと対比させて話を進める。従来型のフィクションとして小説や映画、演劇などが挙げられるが、「フィクション」という言葉には、形式についての言及はない。つまり、小説であろうと映画であろうと、同じフィクションである。

同様に、ここでは、ライトノベルも形式について言及しないことにする。つまり、ここで言う「ライトノベル」は、小説に限ったことではない。マンガもアニメもゲームも、ライトノベル的要素があれば、ここでは「ライトノベル」と称する。もともと、(小説としての)ライトノベルはマンガやアニメ、ゲームの感覚を小説に持ってきたものなのだから、「ライトノベルとは何か」という話をする場合には、ひっくるめて話をするべきなのだ。

なお、フィクションかライトノベルかという話は形式とは関係がないので、映画はフィクションであるとかマンガはライトノベルであるというような決めつけはしないでほしい。フィクションなマンガもあるし、ライトノベルなマンガもある。

ライトノベルは読み方の問題

後で詳しく述べるが、「ライトノベルかどうか」という問題は、書き方の問題ではなく読み方の問題であるということも頭に入れておいてほしい。同じ小説を読んでも、フィクションとして読む人もいれば、ライトノベルとして読む人もいるということだ。

要するに、映画を見るとき、その内容を真剣に見る人もいれば、「きゃーレオ様かっこいい!」としか見ていない人もいるということだ。後者の人にとってみれば、その映画はレオ様が出てることに意味があるだけの映画である。しかし、だからといって「この映画はレオ様が出てることにしか意味がない」とまで言ってしまうと、それは間違いだ。しかし、逆はありうる。内容がどうしようもない糞で、レオ様が出てることにしか意味がない映画というのは存在する。

ライトノベルの始まり

ところで、ライトノベルはいつごろから始まったのか。ここでは、1995年あたりから始まり、2000年あたりまでに定着したと定義する。こう定義すると、たぶん「ちょっと遅すぎるんじゃないか」と思われるだろう。角川スニーカー文庫や富士見ファンタジア文庫は含まないのか?という質問に対しては、「初期のこれらの文庫の作品は含まない」とここでは答える。

ライトノベルがアニメやギャルゲー、JRPG(日本のコンシューマー機主体のRPG)からの逆輸入であるとすると、1995年という設定は納得がいくだろう。1995年と言えば、アニメで言えば「エヴァンゲリオン以降」である。ギャルゲーが同級生やときメモやプリメみたいなプレイヤーが自由に動かすゲームから、文章と紙芝居が中心のビジュアルノベルに移行した頃だ。JRPGでは、メインプラットフォームがプレイステーションに移り、ムービーの合間にキャラクターを動かすゲームになり出した頃だ。

1995年より前にライトノベルがなかったとは言わない。ただ、これより前には「小説はフィクションでなくてはならない」という大前提が存在した。ありていに言えば、以前にも頭の固い人たちに「幼稚で低俗な小説」と呼ばれていたものがあったが、1995年以降のライトノベルは「もはや小説ですらない何か」と呼ばれるものである、ということだ。