旅と旅行

旅は好き。だけど旅行は嫌い。

私は旅行は嫌いだ。でも旅は好きだ。と言うと、「どこが違うの?」とよく聞かれる。

結論から言おう。旅行は点、旅は線なのである。旅行は目的地に到着してそこで楽しむものであり、旅は目的地に到着するまでを楽しむものなのだ。だから、飛行機で行くのは旅行、自転車で行くのは旅なのである。「どこへ行ってきた?」という質問の答えで、「○○へ行ってきた」というのが旅行であり、「国道○号線をずーっと北上して○○まで行ってきた」というのが旅なのだ。


「観光地めぐり」というのは旅行の代表だろう。観光地めぐりの場合、目的は到達することであり、そこで記念写真を撮ることであり、その間の移動はバスで半分寝ながら過ごす。飛行機の旅も機内では寝ながら過ごすとか、テレビや本を見て過ごす。どちらも移動時間は無いに越したことはない。

それに比べて、旅の場合は移動そのものが楽しみなのである。自転車の旅は言うに及ばずだが、自動車でも高速道路より下道を通りたがる人は旅派だ。豪華客船の旅なんてのも、私には縁がないがなかなか楽しそうな気がする。電車の場合は普通列車でトコトコ揺られていくのが楽しい。

初めて来た街を徒歩で散策というのも楽しいものだ。地下鉄で2、3駅の距離だったら乗らずに歩いてみる。あてもなく放浪というのは難しいので一応「お城目指して」とか「○○公園まで」とかと目標は決めるのだが、そこへ行って帰る道のりが楽しい。今の日本じゃどこの街へ行ったってたいした違いはないのだが、それでも独特の雰囲気があったり見たこともない面白いものに出会うこともある。

しかし、旅行派にとってはこれは苦痛なようだ。変な道や面白そうな道を行こうとすると「これって遠回りじゃない?」と怒られる。私は無意識のうちにこれをやる癖があるので、同行者には申し訳なく思っている。


旅行は「目的地に到着してそこで楽しむ」ものだと書いたが、どうやらそれは正確ではないようだ。正確には「目的地に到着することが楽しみ」なのかもしれない。はとバスツアーや名所旧跡めぐりなんてのはそうかもしれない。旧跡なんてのは行ったって碑が一つ建っているだけだ。でも、よく写真で見るそうした碑や銅像や風景をこの目で見るのはやっぱり楽しい。「おおー、これが噂に聞く○○か」といった所だ。

しかし、その楽しみは、見回してスナップ写真を撮ったらそれで終わってしまうものである。すると、次の観光スポットへ移動する。観光スポットなんてものが一ヶ所に集中しているわけはないから、どうしても移動時間が長くなる。長々とつまらない移動時間を眠って過ごして、着いたら一目見てはいおしまい、なんて楽しみ方にはやっぱり抵抗がある。


旅行を計画するとどうしても「あれも見たいここにも行きたい」で、盛り沢山の内容になってしまう。そうするとひたすら強行軍になってしまい、楽しみもどこへやら、かえって疲れたということにもなってしまう。

別に遠くに行く必要もないんじゃないかなぁ、近くでも行ったことがない道なんていくらでもあるんじゃないかなぁ、と私は思う。