名古屋市長の話

なんであんなのが名古屋市長に選ばれるのか

書くのが遅なって時機を逸してまった上に、勢いで名古屋弁で書いたのを直したせいでですます調でもなくなってまったけど、許してちょーせ。


金メダルかじり事件があって、「なんであんなのがずっと名古屋市長をやっていられるのか」と疑問に思う声をよく聞く。地方の首長の情報は、その地方に住んでいないとなかなかわからないものだ。そこで、今回はあの名古屋市長がなんで選挙に勝てるのかという話をする。

なお、私は市長の応援をするつもりはないし、批判をするつもりもないし、事実に基づいた話をするつもりもない。今から書くことは「河村市長に投票するような名古屋市民はこう思っているだろう」というだけで、それが事実だと主張するわけではないから、「それは事実誤認だ」と言われても「はあそうですか」としか言えないということを予め断っておく。

まず、民主主義なめんな

話の内容より先に言っておくことがある。河村さんのことを「気持ち悪い」「生理的に受け付けない」と言って「市長を辞めろ」と言う人がいるが、俺たちが貴重な一票で選んだ市長をネットの炎上で辞めさせようとするなんて、民主主義なめんな!市長に対しては、リコールという正当な手段がある。署名を集めてこい。ただし、直近の選挙後1年間はリコールできないから、来年の4月までちゃんと覚えておけ。

「次の選挙では落選確定だな」とか言っている人もいるけど、次の選挙は4年後だ。そして、何となくだけど、次の選挙には出ないんじゃないかなぁとも思う。

市長を批判してる人も応援してる人も、名古屋市民で「まさかあの市長があんなことをするなんて」と驚いている人はほとんどいない。名古屋市民は、ああいう市長だということをわかった上で投票している。まずは、そのことを忘れてはいけない。

代わりがいない

そもそも、選挙は候補者の中からしか選べない。「この人に地域の未来を託したい」なんて思える人に投票できる幸せな人がどのくらいいるだろうか。たいがいは「どいつもこいつもしょーもない奴ばっかだけど、その中では一番マシ」な人に入れるんじゃないか?

名古屋市長選挙は、河村さんが出る前からずっと、選択肢がなかった。いわゆる「オール与党」というやつだ。ずっと、既存政党はほとんど全部が1人の候補に乗っかっていて、「現職か後継者 vs 共産党候補」というまるで話にならない状態が続いていた。よその地方では自民党 vs 立憲民主党かもしれないが、名古屋では労働組合系は全部トヨタ様に牛耳られているので、同じ穴のムジナ。こんな状態に市民はうんざりで、知名度のまるでない共産党候補ですら3割近く得票できるくらいには、「アイツ以外なら誰だっていい」と思っていた。そんな中でテレビでも有名な河村さんが出馬した。ようやく、既存の政治に「ノー」を言えるようになったのだ。

前回の選挙を見てみれば、その異常さがわかる。対立候補は自民党だけど、連合も立憲民主党も、さらには共産党すら応援している。既存の政党が右も左もみんな「河村憎し」で団結している。こんな寄ってたかっていじめられるようなところ、河村さんみたいなアホ以外は立候補しないんだ。

庶民革命

そんな中で河村さんは、「一般庶民の味方」を掲げて、自転車で名古屋中を回った。そして、「河村さん=一般庶民」vs「地元有力者と政治家」の構図になった。政官財の癒着による上級市民のための政治を、ようやく終わらせることができたのだ。

そんな構図を、反対派は全然わかってない。やれ名古屋弁が汚いだの、字が汚いだの、品がないだの言っている。そりゃ一般庶民代表なんだから当たり前だ(単にイメージ戦略でそう振る舞っているだけにせよ)。そもそも名古屋人は、教養があって達筆で、アテクシあなたたちとはちょっと違いますわよみたいな奴は大嫌いなんだ。なんも味がしないくそ不味い料理を「これが京の洗練された料理」などと言う奴は叩き切ったる。田舎侍で結構。料理には全部味噌ぶっかけろ。

名古屋人は外見より中身。他人の価値観にホイホイ乗ることはせず、わが道を行くのだ。「一番魅力のない都市」って言われても、怒るでも悲しむでもなく、「確かに観光地なんもあれせんもんなぁ。住んどる人にとっちゃいい所だけどね」と意に介さない。閉鎖的なのではない。他人に媚びたり無理に上辺だけ取り繕ったりしないだけだ。来たい人は来ればいいし、興味ない人は無理に来なくていい。ま、それを閉鎖的と言うんだったらそうかもしれんけどね。

そもそも、今の日本の政治が世襲政治家と官僚と圧力団体にのっとられてしまっているのが問題なんだ。政治家は支持してくれる団体ばかりを見て、一般庶民を見ていない。現職の政治家の後押しをもらうか元官僚でないと当選できない今の状況がひどすぎるんだ。昔の選挙で、「日本を取り戻す」をもじって「名古屋を取り戻す」をスローガンにしていた人もいたが、名古屋の実権を河村から俺たちに取り戻すと言ってるようにしか聞こえなかった。

その点、河村さんは一般庶民以外に助けてくれる団体がない。選挙でも「市民の皆さんどうか助けてちょーよ」としか言えない。それだからこそ「俺たちの河村さんだで助けたらなかん」となるんだ。

「そうは言ってもさすがに河村さんは品がなさすぎる」というのはごもっとも。さっきも言ったけど、もうちょっと品のいい河村さんみたいな人が出てきたなら、そっちに入れるよ。

パブリックサーバント

河村さんは、昔から市長はパブリックサーバントだと言っている。自分は名古屋市民に仕える身だと言っている。そして、態度もずっとその通りで一貫している。

東京都民は、都知事の会見での、あの先生みたいな上から目線をよく我慢できるな、と思う。都民は総理になるための手駒くらいにしか思ってないんじゃないか。河村さんなら、「市民の皆さん本当に大変な思いをしとらっせる」が最初に入る。河村さんは、名古屋を愛しているし、名古屋の一般庶民のことを大事に思っている。

河村さんのことを高圧的とか威張っているとか言う人がいるけど、名古屋市民に対しては全然そんなことなく、気さくでお茶目でサービス精神旺盛(だいたいこれが過剰すぎていろんな問題を起こすのだが)なイメージだ。河村さんはあくまで名古屋市民の代表なので、名古屋市民でない人、特に「名古屋市民の敵」には厳しくあたるのだ。もっとも、その敵認定が正しいかどうかは疑問で、もうちょっと相手の話を聞くようにすべきだとは思うけど。だから、既得権益層やプロ市民からの反発には耳を貸さないが、普通の一般庶民からの反発はわりと素直に聞いてくれる。

河村さんが給与を返上したニュースで、給与が意外と低いというのが話題になったようだ。これは河村さんがずっと争点にしてきたことなので、名古屋市民なら皆知ってると思う。「本来、市長なんて普通に職業を持ってる人が片手間にやることだ」というのが河村さんの持論だ。「市長」というのが職業になってしまうと、市長になるには今の仕事を辞めなくてはならなくなってしまうし、市長でなくなったら失業してしまう。そうなると「政治家」という職業の人以外は政治に関われなくなり、政治が市民の手から離れてしまう。その結果、庶民感覚が失われ、特権階級のための政治になってしまう。たとえそれが「地域の発展のため」であったとしても。そうならないためにも、世襲政治家とかエリート官僚なんかを当選させてはいけないのだ。

昔のことはよく知らないけど、今の名古屋市政はわりと庶民感覚に合っている気がする。庶民的すぎて時々しょーもないアイデアを自慢げにぶち上げたりもするけど、コロナ禍でも動物園や公園がそれなりに開いてたりして、市民への締め付け一辺倒ではなかった。コロナ禍の初期に学校がいきなりすべて休校になったときも、「働いてる人たちが困らないように」と保育所は休みにしなかった。ま、そのせいで緊張感がなくて俺コロナとか密フェスとかが出てきたのかもしれないけど、市民そっちのけ感があまりないのはいいことだと思う。

純朴さ

河村さんのすごいところは、今まであれだけいろいろなことをやらかしておきながら、大企業と結託みたいな「裏で悪いことをしてる」スキャンダルがないことだ。ま、政官財すべて敵だから結託する相手がいないだけなんだろうけど。署名偽造事件はあったけど、河村さんが絡んでる証拠はまだ出てないし。それに、やらかした時にも、変に言い訳せずちゃんとごめんなさいする。毎回「減給〇か月」が繰り返されて、それでいいのかという話もあるが、問題ないと強弁していつの間にかうやむやにしてしまったり、自分から辞めておきながらしれっと次の選挙で当選して自分は正しかったということにしてしまうほとんどの政治家よりはマシだと思う。それはまた、ごめんなさいで済むくらいのことしかやらかしてないということでもある。

野党の若手でたまに、すごい純朴な人っているよね。キラキラした目で「社会をよくしたい」って語る、ちょっと心配になるタイプの人が。策略とか裏工作とか政治的駆け引きが苦手なタイプ。そういう人ってだいたい選挙で負けるか、たとえ当選したとしても権力闘争に負けて一生下っ端止まりなんだけど、そういう人がたまたま市長になっちゃった、みたいな感じ。本人には会ったこともないから印象だけで勝手なことを言うけど、なんとなく、そんな感じがするんだ。

河村さんのことを「人気取りのパフォーマンス」とか「イメージ戦略」とか言う人もいるけど、失礼ながら冷静沈着に戦略を立てられるような人じゃないと思う。パフォーマンスも、自分の評価を上げるためではなくて、純粋に市民に喜んでもらうためにやっていることに見える。それが良くないんだと言われたらそうかもしれないけど、市民そっちのけよりはマシだ。多分、河村さんは、どうやったら選挙で票を集められるかなんて、あまり考えてないんじゃないかなぁ。落選したらその時はその時でしょうがない、って思っていそう。

普通の政治家じゃないよ

結局、一番言いたいのは、河村さんはその辺によくいる普通の老害政治家じゃない、ということだ。老害は老害かもしれないが、日本にはなかなかいないタイプ、あるいはなかなかトップまでいけないタイプの政治家だ。批判するなら、そこんとこをわかった上でやってほしいと思う。そうでないと、日本の旧来の政治システムに巣食う魑魅魍魎たちを喜ばせるだけになってしまうぞ。

最後に念のため言っておくが、いいことばかり書いてるように見えるのは、今回が「なんで河村さんが選ばれるのか」というテーマだからであって、「いいところも少しはある」と言っているだけなので、勘違いしないように。繰り返しになるけど、もう少しマシな人が立候補するなら、そっちに入れるよ。