昔、ジャンケンがゲームでないのはを書いたことがあったけれど、そういう話をすると「ジャンケンに必勝法はある」と言い出す人たちがいます。そういう人たちの言う「必勝法」は、たいてい次の2パターンのどちらかでした。
1つ目のパターンが、「相手の出した手を素早く見て、相手に気づかれないくらいわずかに遅れて出す」というものです。ジャンケンが「同時に手を出す」というルールである以上、これはルール違反であり、イカサマです。実際にイカサマが通用するかどうかはともかく、イカサマを必勝法と呼ぶのは間違いでしょう。
2つ目のパターンが、「普通の人は完全にランダムに出しているようでも手にパターンがあるから、それを見切れば勝てる」というものです。本当に見切ることができるかどうかは置いといて、ここにも1つ間違いがあります。
どんなに強い相手にでも勝てなくては、必勝法とは呼べません。なのに、相手として「普通の人」しか想定していません。普通の人に勝てるだけで必勝法と呼べるのであれば、普通の人で羽生さんに勝てる人はいませんから、将棋には必勝法があることになってしまいます。
前回の話で、「他人への信頼が揺らいでいる」と書きました。一般人を簡単に「何の能力もない人」とみなしてしまい、それを前提に行動してしまう。自分もその一員なのに、自分だけは他の一般人よりはマシだと思ってしまう。そして、自分よりマシな人を見つけると「あいつは特別な人であって、一般人じゃない」と一般人の定義から外してしまう。そんなことを続けると、そのうち一般人が空集合になってしまいそうです。