フリーのソフトウェアとは?

「フリーウェア」という曖昧な言葉の意味を考えてみましょう.

使用上の注意

フリーソフトに関する説明はだいたい終わりました. 難しい話が続いた後で具体的な注意すべき点をお話ししましょう.

使用者に対する注意

さて, こうした無料ソフト, フリーソフトを使う上で何に注意したらいいでしょう?

もちろん一番大切なことは「禁止されている事はしない」ということです. たいてい配布条件の中に明確に書いてあります. 「○○の場合は金を払え」と書いてあれば, 自分がそれに該当するならお金を払わなくてはならないし, 「30日間は無料」と書いてあったら30日を越えて使ってはいけません.

それから再配布は許可されていない限りしてはいけません. 厳密には友達の間でそうしたソフトの入ったフロッピーを回すのも再配布です. 自分のWebページに置くなんてもっての他です.

しかし多くの無償ソフトでは作者はそんなに再配布についてやかましく言うつもりはないでしょう. 問題になりそうな場合は一言作者にお伺いを立ててみるべきです. きっと心良くOKしてくれることでしょう.

使ってみて何か恩返しをしたいと思ったら, あなたも何かの方法でソフトの価値を高めるような活動をしてみてはいかがでしょうか? 感想やバグ, 改善点の報告もその一つです. 自分のWebページでソフトの宣伝をするのも一つですし, わかりやすい使い方の説明書を書くのも喜ばれるでしょう.もちろんフリーソフトならソースを自分で改良して新しい機能を付け加えることもよいです.

何かしたいと思ったら何らかの自分にもできる貢献をすることをお勧めします.

作者への注意

これから無償ソフト・フリーソフトを作りたいという人は何に注意したらよいでしょう? あなたが商売をしたいのでなく, 善意で自分のソフトを使ってもらいたいのだと仮定します.

まず, できる限り「フリーソフト」にすることをお勧めします. プログラムソースを公開して, 誰でも自由に改造ができるようにするのです. フリーソフトにする事であなたのソフトはより使ってもらえるようになります.

フリーソフトでない無償ソフトの問題点は何をしていいのかが曖昧なところにあります. 例えあなたが「常識的に考えて大抵のことはしていいよ」と書いたとしても, 常識なんて人によって違います. そして多くの善良な人は「これはもしかしたら作者の意図とは反するかもしれないからやめよう」とあなたが全然OKだと思っているようなこともやめてしまいます. 逆に善良でない人はあなたがどう書いてようとおかまいなしにやってしまいます. だからあなたが条件をいい加減に書いている事は単に善良な人を苦しめているという事なのです.

「自分が作ったソフトを勝手に他人が改良してそれが世の中に広く出回るんじゃ自分の立場がない」と思う人もいるでしょう. しかし, それは思い過ごしです.あなたの思っている事が正しければ, Linuxの作者(と皆が呼んでいる)Linus氏はこんなに有名ではあり得ません.

「フリーにするのは面倒」と思われる方もあるかもしれませんがそんなことはありません. 単に「○○ライセンスに従う」と書いておけばいいのです. ソースが汚くてとても人に見せられないという意見もありますが, それは自分が判断する事ではなく見る人が判断する事です. 見る人が汚いと判断したら見なければいいだけの話ですから. でもまあフリーにしておけばもしかしたら誰かが見易く書換えてくれるかもしれません.

「コピーレフト」にするかどうかは好みの問題です. よっぽどすごい物でない限りフリーソフトウェアはきっと企業なんて見向きもしませんので, どちらでもたいした違いはないでしょう. 実用上の問題はほとんどないと思います.

再配布について

無料ソフトを再配布する場合は何に注意すればよいでしょう?

再配布に関しては何らかの条件がついている場合が多くあります. 一般の無償ソフトについては個別の再配布条件を見てもらうとして, フリーソフトについて見ていきましょう.「フリーソフトでは再配布に関して制限を設けない」と一般に思われていますが, ある一定のルールに従う必要があります.

まず, 再配布に関しては, 元の作者の著作権を表示してそれがどこで手に入るのかを明確にしなければなりません. 条項は複雑ですが, なぜこうした条項があるのかを考えればやるべきことは明確です. 渡した相手に次のことが伝わればいいのです.

  • 渡したソフトはフリーソフトであるということ.

  • 渡したソフトはとある場所でソースコードも含めてタダで手に入り、自由に改変できるということ.

  • 渡したソフトを元々作った人は誰かということ.

ほとんどの場合はパッケージの中にこうした項目の書いてあるドキュメントが入っているでしょうから、その場合は何もしなくていいでしょう。

ソフトウェアを一旦展開して別の形式でパッケージし直すのは一般に再配布ではなく改変と見なされます. 元のファイルと同じものではなくなってしまうからです. 文書を違う形式(テキストをMicrosoft Word形式に, など)に変換するのも同様です.

また, コピーレフトなソフトを改変・再配布する場合にはあなたがそれをコピーレフトでなくするようなライセンス条項を付け加えてはいけません. 特にこだわりがなければ同じライセンス条項を適用するのが簡単な解決法です。「GPLに従う」と書いてあったソフトを改変するなら自分もGPLに従うのです。

ソフトの改変について

元のソフトを改良して新しいバージョンを開発したいという場合には, ほとんどの場合元の作者のコンタクトを取った方がいいでしょう. きっと喜んであなたの改良を受け入れてドキュメントにあなたの名前を残してくれるでしょう.

そうではなく, 全く違う物を作りたい場合もあります. 例えばフリーのドローソフトを元に電子回路図を描くソフトを作りたいような場合です. こういう場合はマニュアルに元のソフトとその作者を明記する必要があります.

何か元にしたソフトがある場合には元にしたソフトのライセンス条項を守らなくてはいけません. 例えば「コピーレフト」のソフトの場合は「あなたのソフトもコピーレフトとして配らなくてはならない」というのが条件ですから,自分のソフトは例えばBSDライセンスを適用してはいけません. 制限が緩いソフトに制限を付け加える事, 例えばBSDライセンスのソフトを元にして作ったソフトにコピーレフトのライセンスを適用する事は許可されています.

また, 元のソフトの作者と無関係に自分が改良をした場合「元のソフトの作者とは無関係」ということを明示する必要があります. でないと, あなたの改良した部分にバグがあった場合に, あなたの事は全然知らない元のソフトの作者の方にバグ報告が行ってしまうことになります。実際のところはこうやって様々なバージョンが乱立する事は利用者にとって害になりますので, ちゃんと作者とコンタクトを取ることをお勧めします. ほんの少しの変更だからといって, ソースだけに手を加えてドキュメントを修正せずにそれを自分のWebサイトに置くという事は慎まなくてはなりません.

文書の作者へ

自分の書いた文書をフリーにしようという人もソフトの作者に準じた注意を払う必要があります.それに加えて, もう一つ注意してほしい事があります. それは「誰でも改変できるようなフォーマットで文書を書く」ということです.

例えば, Microsoft Wordで文書を書いて「誰でも編集していいよ」と配ったとしましょう. でも, その文書はWordを持っていないと書き換えることはできません. つまり, Wordで文書を書くという行為自体「Microsoft Wordを持っていない奴は俺の文書を編集するな」と言っているのと同義なわけです. この精神は「誰にでも編集できなくてはならない」というフリーの精神に反しています.

ソフトウェアと違って文書はOSや環境に関係なく利用できます. だから, 特定の環境に関する文書でない限り, 特定の環境で固有な文書形式で文書を書いてはいけません. 例えばあなたの文書がMicrosoft Wordで書かれたとしても,Microsoft Wordを持っていない人は読むことができないのです.

ファイル形式としてはテキストファイルやHTMLファイルなどが良いでしょう.これならどのOSでも読み書きができます. Word形式や一太郎形式は避けるべきです.