ソフィスト

評価
3
ジャンル
思想
著者
田中美知太郎
出版社
講談社学術文庫

とある事情で調べものをする必要にせまられて市立図書館に行ったもののたまたま閉館日で、本屋をあさって見つけてきた本です。

ギリシャ哲学の本なのですが、特にソフィストと呼ばれてあちこちで嫌われた人々について、主に歴史的な考察がなされています。ギリシャ哲学が花開いた当時の時代背景や生活習慣などについて詳しく書かれているので、いろいろと参考になります。こうした背景を知らずに哲学者の言葉だけを聞くと、意味を取り違えてしまうかもしれません。

さて、メインテーマはソフィストなのですが、こういう困った奴は今でもいますね。本の中間までは「ソフィストって、本当に嫌な奴だったのか?」と懐疑的な論調ですが、結論では「やっぱり嫌な奴だ」となっています。しかし、それも全部が全部ダメなのではなく、何がどのくらい問題なのかをちゃんと論じています。

この本、実は世界第二次大戦のちょっと前くらいに書かれた本です。きっと、この本で書かれているソフィスト達を、その当時の軍部の人や何やらと重ね合わせて書いたのではないかと思います。解説では「その30年後になった今でも通用する」と書いてありますが(初版は1976年)、さらにその30年後でも十分通用するどころか、かえって重みを感じます。