萌える男

評価
3
ジャンル
思想
著者
本田透
出版社
ちくま

この本は、よくまとまったオタク批判本である。ただ一つ問題は、自分の書 いているのが批判であるということを書いた本人が分かっていないというこ とだ。この点さえ頭に入れておけば、「オタクはなぜ良くないのか」だけで なく、「オタクはなぜ自分たちの立場を理解できないのか」ということも分 かる、二度おいしい本である。

この本では、オタクはルサンチマンのかたまりであり、萌えアニメをあてがっ ておかないといつ暴発するかわからない犯罪者予備軍であると断じている。 白馬に乗ったお姫様をいつまでも待っているお花畑の住人であるとも言って いる。「神」を探し求めていて、もし10年前に生まれていたらオウム真理教 か何かに入信していただろう。自我を確立することができず、誰かに頼るこ とでしか自分の存在を肯定することができないにもかかわらず、その「誰か」 を現実に見つけることができない人間だというのも、鋭い分析である。

さらに面白いのは、普通の人ならここで「だから問題だ」となるところが、 「だから正しい」になるところである。本書に書いてあることを全部踏まえ た上で、なぜ「だから正しい」になってしまうのかを考えると、オタク問題 の本質に迫れるのではないかと私は思う。