ロールプレイのスタイル

辛口の視点が好評(?)のロールプレイヤー考察が内容を大幅改訂。

成行き派とは

このスタイルは、一言で説明しづらく世間での認知度も低いが、重要であり、筆 者が好きなスタイルであるため、特別に他のものより詳しく解説する。

成行き派は、一言で言えば、「その場の成行きに任せて行動する」のであるが、 これは表向きを表現しただけで、裏は意外に深いのである。

成行き派の概要

成行きプレイは、最初の設定(キャラ設定と目的)だけ決めておいて、後は成り行き にまかせるというプレイである。成行きというといい加減なように聞こえるが、 要するに、「この状態でいったいどうすべきか?」を考えるプレイである。

ブリーフィングでは、「キャラの目的」を決める。「依頼」の形式 をとるのが普通である。また、場合によっては、プレイヤーは依頼などの目的の 他に(暗黙的に)目的を設定することもある。(「○○さんと恋仲になる」という ような)

「キャラが知っている情報」を確実にしておくのは成行きプレイにとって重要であ り、ブリーフィング時に詳細に設定される。キャラが知らないことはやらない、こ れが成行きプレイの鉄則である。シナリオの流れがうまく行くようにプレイヤーが キャラを積極的に誘導するシナリオ派とは大きく違うところである。

セッション中は、プレイヤーはキャラの設定や「キャラの知っている」知識をもと に、「キャラが目的を達成するためにとるべき行動」を決定してそれを行動に移 す。セッション中に常に状況判断と行動決定がなされるのが特徴である。

成行き派のプレイは例えば「将棋」に例えることができる。キャラは駒である。駒 には動ける範囲が明確に決まっていて、ルールに基づいて動かしていく。そして、 相手の出方と自分の行動に基づいて結果が決まる。

成行き派プレイヤーの目的

成行き派プレイヤーがなんのためにロールプレイをするか、それは「自分の行動 を考えることを楽しむため」である。これは、将棋や囲碁などに通じるところが ある。 [1] 現在の状況を判断し、あるいは将来の状況を予測し、キャラが目的を達成するため にどうすればいいのかを考えるのを楽しみにしているのである。何も難しい決断ば かりではなく、例えば「相手を笑わせて場を和ませる」というのも一つの行動であ る。事実、成行き派は冗談が好きである。

だから、成行き派は、プレイの前後の談議(キャラ設定、あるいは後日談)は好きで はない。彼らにとっての楽しみは「プレイすること」そのものだからだ。

成行き派にとって、プレイが「成功」といえるのは、キャラが無事目的を達成した 時、「失敗」は任務失敗の時である。これは「キャラの目的」を例えば将棋で 「相手の玉を詰ませる」に置き換れば容易に想像がつくであろう。 しかし、実際には、ブリーフィング時に設定した「キャラの目的」は、多くの場合、 あまりにも簡単に達成できてしまう。そのため、無意識的にキャラの副次的目的を 置いている。例えば「チームメイトと仲良くなる」といった目的である。ただし、 プレイヤーは「成功する」ことではなく「成功するために考える」ことに喜びを 覚えるのであるから、成功しなかったからといってつまらないわけではない。

結果を気にしないとはいっても、自分の力でどうにもならないことを嫌う。自分の 動作と目的の達成が無関係 なら、考える必要はないではないか。ルーレットを思い出してほしい。成行き派の プレイヤーなら、どこに賭けても同じだから考える必要はない、と考える。そして、 考える必要のないゲームなんてつまらない、と思うのだ。

ここの説明では堅苦しいことを考えているように見えるが、普段はその 場その場に応じて、「こんな風につっこんでみようかな」とか「おっ、このつっこ みもらった!」という感じでキャラの行動を考えるのが普通である。

成行き派がデブリーフィングで問題にするのは、「あの時どう動けばよかったか」 である。「あの時こうしておけばこんな展開になったかも」といって盛り上がるこ ともある。将棋の感想戦と同じ感覚である。

成行き派キャラの設定

成行き派キャラにとって、設定は「行動の制限」である。将棋でいうと例えば 「角は斜めにしか動けない」というのと同様である。キャラが何でもできてしまう と選択の幅が多すぎて難しくなってしまうためにあえて「何ができて何ができない か」を設定するのである。あまり少なくても困るが、かといってあまり多すぎて も動きづらい。ほどほどの量を各人が工夫している。

キャラ設定にあまりこだわっていないのが成行き派の特徴である。キャラ設定の文 書に「基本的に○○ですが時によって変わります」と書いてあったり、ブリーフィ ング時に「××という設定だけど、場合に応じて柔軟に対処します」という発言が 聞かれることが多い。また、キャラ設定にはどうでもいい瑣末なことが書いてあ ることが多い。

キャラ設定に書いてあるのは、現在の立場、役割、信条などである。性格、過去 の経験、生い立ちなどは詳しく書かれていない。成行き派にとってキャラ設定は 「選択肢がいくつもあってどちらを取ったらよいか迷う場合にそれを決めるため の手がかり」だからだ。

そして、実際にはキャラの設定を半ば無視することもある。「気弱な性格」で も時には大胆に振舞うこともあれば、「いつ も冗談を飛ばす」と設定にあっても時には真面目な台詞を吐く。 性格設定はキャラの行動を縛るには曖昧すぎるからである。実際問題、「いつ も冗談を飛ばす」人が本当にいつも冗談しか言わないなんてことはあり得ないので、 ある意味現実的である。

性格設定が地味で妙に現実感があることが多い。特に「現実感」は成行き派キャ ラにとって重要である。なぜなら、現実離れしたキャラの行動はプレイヤーがとっ さに決定できないからである。特に能力があったり特異な生い立ちを持っている 人は少なく、自分の知り合いにいそうな普通の人であることが多い。そして、そ れは「自分」の性格そのまま(あるいはその一面)であることも多い。

成行き派の見分け方

成り行き派には、ブリーフィングで設定を決めるときに特異に観察される特徴があ る。それは「シナリオは特に考えていないけど、ないなら適当にでっち上げます」 という発言である。 この発言は2つのことを意味している。まず、シナリオがないと困るという点だ。 上で述べたが、成行き派にとってシナリオ(キャラの目的)は重要情報であり、な いとプレイできないのだ。だが、別に目的が決まってさえいれば何でもいいため、 すぐでっち上げることができる。

「設定は?」と聞かれると、「お嬢様フォマです」とか「やんちゃハニュです」 とか、典型的な性格例が一言で返ってくる。そしてそれだけで終わる。なぜなら、 それ以上のことは設定していないし、それで十分だからだ。「うーん、別に設定 と言ってもなぁ」と困る場面も多い。

プレイ後にはあまりプレイに関する話をしないが、するとしたら感想と面白かっ た発言についてである。たまにタイミングを逸して出せなかったネタや話題の 話もするが、それはギャグのネタを自分で解説するのにも似た、情けなく恥ずか しい行為だと思っている。


  1. 将棋や囲碁やコントラクトブリッジやハーツやモノポリーやディプロマシーやアクワイアやカタンや... と延々と並べたいとこだが、ここでは控える ↩︎