崩落・捜索・救助

ラグオル地下坑道で落盤事故が発生。直ちに救助チームが編成され、いまだに危険な事故現場に向かった。そこで彼らが見たものは...

絶望の予感

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シーナ: おらんなぁ
エリヤノフ: あらかた... 逃げたあとか
破壊された機械群を見ながら、4人は生存者を探し回った。
ヴァリシス: いないですねぇ。いいことなのか悪いことなのか
エリヤノフ: このへんは知らせが間に合ったろうから、な
シーナ: どこかにかくれてるんや
エリヤノフ: ああ、微妙なとこだ
アルトゥアは、必死に探し回る3人を横目で見ながら、通路めざしてゆっくり歩いていった。
アルトゥア: へっ、こんなとこに居るなら救出に来る必要ないんじゃねえか?
ヴァリシス: それもそうです
エリヤノフ: ああ、逃げられたと思いたい、な
シーナ: ははっ...せやな
3人は駆け足でアルトゥアの後を追った。


次の部屋には、大型の採掘機械の他に、小型のメンテナンス用ドローンもあった。小型ドローンは空中を高速で移動していた。
シーナ: ちょこまかとうっとぉしい!!
シーナは両手に持った小剣を振り回すが、なかなか当たらない。小銃を構えたエリヤノフと散弾銃を担いだヴァリシスが狙いをつけて撃ち落とした。アルトゥアは採掘ロボットが振り回す腕に側面から一撃をくらいひっくり返ったが、エリヤノフがすかさずその敵を銃で撃ち抜いた。これで敵は全部片付いた。

ヴァリシス: ああっ、大丈夫ですか?アルさん
アルトゥアは周囲を見渡して安全を確認すると、むっくりと起き上がった。たいした怪我ではなかったようだ。
アルトゥア: っつー。結構つえぇな、あいつら
エリヤノフ: 無茶するな、アル君
エリヤノフは靜かな声で言った。
アルトゥア: うるせぇな
エリヤノフ: ここで倒れたら二重遭難もいいとこだ
シーナ: ボケーっとしとるからや
アルトゥア: だいじょーぶだって
シーナ: ちっとは気合いいれてき
アルトゥア: 気合いならこれ以上はいれねぇな
ヴァリシス: ま、ま、あせる気持ちもわかりますよ
ヴァリシスがこう言うと、シーナは皆のほうへ振り返った。
シーナ: 無駄な時間つこうとらんでさっさと次行くで

そして、一行は細い通路を速足で歩いていた。すると、突然天井から爆発音が鳴り響き、上から大きな岩が落ちてきた。
アルトゥア: あんだぁ?
エリヤノフ: ああ、置き忘れのハッパだろう。たく、管理のいい加減な鉱山だな...みんなも気をつけてくれよ
ヴァリシス: はい!
アルトゥア: ったくよぉ、んなもん忘れてくなよなぁ
アルトゥアは舌打ちした。
エリヤノフ: けっこう爆発物の類が転がってるからナ
ヴァリシス: もうムチャクチャですよ
エリヤノフ: ...だからて、ハッパまで意図的にバラまくかねぇ?
ヴァリシス: きっと単なる置き忘れですよ
シーナは誰に言うともなく、靜かにつぶやいた。
シーナ: 管理のせいやないやろ...恐らく暴走しとるで、こいつらは...
そして、シーナはふと、足を押えているアルトゥアに気がついた。
シーナ: ケガ大丈夫か?
アルトゥア: あ、問題ねぇな
シーナ: ん?ならええ…次いくで

4人は駆け足で奥の扉をくぐり、大部屋に出た。しかし、その先の扉は固く閉ざされていた。
アルトゥア: ちっ、めんどくせぇな
エリヤノフ: やれやれ、行き止まりか。中途半端に防火ドアなんぞ閉めるからだ、ったく...
アルトゥアとエリヤノフの後に続いて部屋に入ってきたシーナは、扉を見ると素早く回れ右をした。
シーナ: ここやないな、ちとまっとき
ヴァリシス: どこへ?ああ!!
シーナは部屋を飛び出した。ヴァリシスが後を追いかけようとしたが、他の二人が動かないのを見て戻ってきた。

ほどなくして、大部屋の向こう側にシーナの姿が現れた。
シーナ: やっぱりこっちや
壁を探していたシーナは、スイッチを見つけたようだ。何やら操作すると、防火ドアがするすると開いた。
シーナ: どや?あいたか?
アルトゥア: おお、やるねぇ
シーナは入った時と同じように素早く、その部屋を出ていった。

3人は開いた防火ドアの前でシーナの帰りを待っていた。すると、本人の代わりに、彼女のどなり声がやってきた。
シーナ: ウチの踊りの見物料... 安うないで

3人は顔を見合わせた。
ヴァリシス: あれれれ?
エリヤノフ: しまった! どこかで囲まれたらしい、行くぞ、ヴァル君
ヴァリシス: はい!
3人が引き返すと、シーナはロボットの残骸を前にふぅと息をついていた。
アルトゥア: なんかあったのか?
ヴァリシス: 大丈夫ですかぁ〜?
シーナ: 大丈夫や。なんとか切り抜けたから
慌てて部屋に入ってきた3人は、シーナの姿を見て歩みを止めた。
エリヤノフ: ふう、無事だったか
シーナ: ちょこまかと動くのに囲まれたんや。ちょっとばかし焦ったけどな
アルトゥア: ま、あんたもあんまり意気がるなってこったな
ヴァリシス: 一人では危ないですよ
シーナ: ま、次からは気ーつけるようにするわ
エリヤノフ: あれか?ふわふわ浮いてるやつ?...おそらくレーザー測距ドローンの類だナ
エリヤノフは残骸を調べながらつぶやいた。何事においても、状況の分析が作戦を成功に導く。この採掘場は、いったいどうなったというのであろうか。


シーナ: ほらほらほらほら〜いっくでぇ〜!!!!
シーナは暴走機械に果敢に向かっていった。そして、そいつを叩き壊すと、あたりを見回した。

シーナ: ここにもおらへんなぁ...まだ奥やろか?
エリヤノフ: ああ、いるのは掘削機械ばっかりだ...
シーナ: うっとーしーことこのうえない…
ヴァリシスは、こんな話をしている二人の顔色をきょろきょろ見ながら、突然言った。
ヴァリシス: もしかして...ああ!!
シーナ: どないしたん?ヴァル
ヴァリシス: 最悪の事態..??
アルトゥア: 行くだけ無駄かもな
彼女は持っていた大きな散弾銃を振り回しながらそわそわと走り回った。
ヴァリシス: あぁ〜〜
シーナ: そないなこと考えたらアカン! まだこの先におるはずや!
シーナはヴァリシスに一喝した。
エリヤノフ: 本来このへんは、掘り出した鉱石を精錬したりする区画なんだ。そこまで掘削ドローンどもが上がってきてるって... ことは...
ヴァリシスは突然手を止めてエリヤノフを見上げた。
ヴァリシス: ことは?
エリヤノフ: いやいや、悪いことは考えまいよ
エリヤノフは首を振って、まだ開けていない扉に向かった。

シーナ: ジルの奴がくたばっとるはずないんや...
シーナは下を向いて小声でつぶやいていたが、メンバーが次の扉に向かっている事にふと気がつくと、急いで後を追った。