勇気の証明

学校の友達にラグオル地表での冒険話を聞かされたガート君は、自分でも行ってみたくてたまらなくなり、とうとう近所の仲間と一緒に森へドラゴン退治に出かけました。

気分の問題

K: ドラゴンて旨いらしいで
歩きながら、プロト-Kがぼそっと言った。
レオン: ほんと〜?食べてみたい
エクセル: は虫類を食べる習慣は、珍しいですねぇ……
K: 聞いた話によると鱗が旨いとか
それを聞いてガートランドはふふんと鼻を鳴らした。
ガート: Kの思考の半分くらいは食べることなんだな
エクセル: そうかもしれませんねぇ
K: しかたないやろ、今はエネルギー切らさない事が大前提なんやから
ガート: じゃ、ブーマはどうだい?
K: 喰ったことあるけどまずい
レオン: 筋っぽそうだね〜
K: シャーク系の頭のヒレは旨かったなぁ……
話が一段落した所で、レオンが続けた。
レオン: そういえば、ドラゴンは姉さんのレパートリーにもないなあ〜
エクセル: レオンさんのお姉さんは、料理が得意なのですね
レオン: うん〜、性格はこわいけどね〜
エクセル: なるほど……
なぜかエクセルはまたポケットからメモ帳を取り出した。
エクセル: ガートさんは、そういった料理を食された事は?
ガート: ないね
エクセル: 私もないんですよねぇ
レオン: ドラゴンの肉を持って返れば姉さん喜ぶかなあ〜
ガート: どうかなあ?
レオン: なんかすごくやる気出てきた〜。よーし、ドラゴン倒すぞ〜
レオンは持っていた槍をぶんぶん振ってみた。
エクセル: じゃあ、ドラゴンのフンを採取終わったら、レオンさんの家にお邪魔しにいってもよろしいですか?
レオン: いいよ〜。ドラゴンパーティーだね
ガート: お、いいね。みんなで勝利のお祝いといこう
レオン: そうしよう〜
K: ほな、がんばりましょか〜
その後にレオンが付け加えた不吉な一言は、小さな声だったので、皆には聞こえなかった。
レオン: でも、姉さんの機嫌のいい時にね……


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ガート: とうとうセントラルドームだ!
小さなゲートを抜けたそこは、巨大な白壁の建物のすぐ前だった。しかし、感動はしばしおあずけとなった。ここにも凶暴な森の動物達が巣喰っていたからである。

森の動物達を退治するのにはさらに数十分を要した。ブーマに始まって、ラッピー、蚊、はてはヒルデベアまで。まさに凶暴な動物のオンパレードだった。彼らはなんとか撃退したが、今までの長い道のりもあって、動作は少し遅れぎみであった。
エクセル: そ、そういえば、こんな所まで……
K: 長かったなぁ
ガート: ちょっと休もうか?
エクセル: 大丈夫ですよ、わたしでしたら〜。ほら、元気ですよ〜
エクセルは見せつけるように飛びはねたり駆け回ったりしていたが、プロト
エクセル: ひゃっ! 何するんですか〜〜
K: 無理せんほうがええで
レオン: 休んだ方がいいよ
エクセルは尻餅をついたその態勢のままで答えた。
エクセル: そ、そうですねぇ……
ガート: あー、見かけより随分きてるみたいだねぇ
エクセル: じゃあ……お言葉に甘えて……
エクセルが座り直したのを見て、レオンとガートランドもその場に座った。レオンが水筒を開けてお茶をすする。そして、鞄からお菓子の包みを出した。
ガート: あ、菓子もらっていい?
レオン: いいよ〜
ガート: ありがとう
ガートランドは、お菓子を食べて、ついでにお茶も一杯もらうと、ふうと一息ついた。
ガート: ふう、なんだね。戦いのあとの休息ってなんだかいいね
レオン: そうだね〜。お茶がおいしい〜
エクセル: 疲れましたけど……
エクセルはそう言いながら、カプセルに入ったフンを眺めて一人笑っている。
ガート: おいおい、フンなんかじろじろ眺めて……そんなに見て楽しいものかなぁ
エクセル: あ、ご覧になりますか?
エクセルはカプセルの蓋を開けてガートランドに差し出した。ガートランドはすばやく立ち上がって逃げ出した。
ガート: いや、僕はいい!
エクセル: おもしろいですのに……
レオン: そんなもの振り回さないでよ〜
K: わて、アンドロイドやから関係あらへん
エクセル: あ、じゃあ、ご覧になりますか?ほら、この色……
鼻先にカプセルを突き出されたプロト-Kもたまらなかったらしい。
K: いやや〜
レオン: わあ〜
レオンもたまらず逃げ出した。プロトは思わず銃を構えた。
ガート: ま、そんなものはしまって……フンは自由に採取していいから、他の人には内緒にしてくれないか?
エクセル: ええ〜……面白いのに……
エクセルは残念そうに蓋をすると鞄の中に入れた。

レオン: ドラゴン、ドラゴンの肉〜
K: ドラゴンステーキや〜。ええねぇ〜
ガート: 倒すことが目的なんだよ。肉は二の次。わかってんだろうね
レオン: あ、そうだっけ〜。がんばろ〜
K: 倒さな肉は手に入らんやろ
ガート: フンはさらにその次
ガートランドはそう言ってエクセルの方を見た。すると、エクセルはぐったりとして目を閉じていた。ガートランドの呼び掛けに応じて目を開けて身体を起こしたが、動作がひどく緩慢だった。
ガート: ああ、無理するんじゃない。わかった。ここで休んでいなよ
レオン: エクセルにはすこしきつかったかもね〜
レオンはそう言うと、鞄の中からお菓子の包みを2,3エクセルの前に置いた。
レオン: お菓子置いていくからね〜
ガート: なあに、ここまで一緒だった事実は変わらない。エクセルは立派だったよ
レオン: うん! 頼りになったよ〜
ガート: 凱旋パーティーには来てくれよ
レオン: ドラゴンパーティーだよ〜
K: なんなら、テレパイプで戻った方がええで
プロト-Kはそう言うと、テレパイプで街へのゲートを開いた。
K: ほな、気ぃつけや
ガート: じゃあな!
3人は手を振ってエクセルと別れ、ドーム入口近くのゲートに向かった。

ドームの入口は壊れていたが、その横に大きなゲートが設けられていた。ドームの中に通じるゲートだ。そして、そこにはドラゴンが巣喰っている。
K: あの先やな〜
ガート: ようやく目的地に着くわけだ。エクセルの分も頑張らないとな
レオン: うん! いこうか〜
K: ドラゴンの肉〜

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ゲートの先は噂通りドラゴンだった。ヒルデベアなんかとは比較にならないほどの巨体と口からの炎、そして広いドーム内を所狭しと飛び回る。防御力も体力も桁違いだった。そんじょそこらの銃では歯が立たない! ガートランドは銃を連射するのをやめ、ギバータに切り変えた。これは効いているらしい。彼は疲弊もかまわずギバータを連続で放った。

弱点は頭らしい。堅い鱗がなく、攻撃がそのまま相手に伝わる。そういうことが戦っているうちに分かってきた。レオンは頭に集中的に槍を突き立てた。やがて、ドラゴンは動かなくなった。
レオン: やった〜
ガート: つにやったぞ!
K: やったで!
レオン: 倒したね!
ガート: よし、証拠写真だ
K: 肉〜
ガートランドが写真を撮っている横で、プロト-Kとレオンは早くも肉の切り出しにかかっている。両手に持ち切れるだけの肉を抱えて、3人は帰還のためのゲートに急いだ。
ガート: それにしても強かったよなぁ
K: あぶなかったなぁ
ガート: 火傷がまだ傷むよ
レオン: もう、死ぬかと思ったよ〜
ガート: このくらいでないと「勇気の証明」にはならないけどね
レオン: あ、そんな目的だったっけ〜
ガート: なんだいなんだい、忘れてたのか
レオン: 肉に夢中だったよ〜
K: わてもや〜
ガート: はあ、食い意地の張った野郎だ
あちゃー、と顔に手を当てるガートランドを後目に、2人はさっさとゲートをくぐった。


街はいつもと同様に静かだった。何の変わりもない日常。彼らはそこに帰ってきたのだった。
ガート: さあて、じゃ、レオン君の家にお邪魔するとしよう
レオン: うん!
K: 楽しみや
レオン: 姉さんの機嫌がいいといいな〜
ガート: 悪いとどうなるんだい?
レオン: 恐い事が起きるんだよ〜、ギフォイエとか……
K: う……いややな〜
ガート: ま、僕達の凱旋だ、祝ってくれると思うよ
レオン: そうだといいな〜

レオンの家はすぐそこだった。あれこれ考える暇もなくすぐ着いてしまった。
レオン: ここだよ
レオンは扉を勢いよく開けた。
レオン: 姉さ〜ん

この物語はここで終わりである。彼女の機嫌がどうだったか、そして彼らのその後の運命は……謎に包まれたままである。