勇気の証明

学校の友達にラグオル地表での冒険話を聞かされたガート君は、自分でも行ってみたくてたまらなくなり、とうとう近所の仲間と一緒に森へドラゴン退治に出かけました。

食料問題

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K: 川や〜
プロト-Kは、森を流れる小川を見つけた。深さはくるぶしほどしかなく、一またぎで越えられそうなごく小さな川である。さっそく4人はじゃぶじゃぶと川へ入っていった。
K: あ〜気持ええ
レオン: 川遊び〜
ガート: 澄んだ水……ラグオルはいいねぇ
と、その時、突然、プロト-Kの身体からぷしゅーという音がした。
K: あ………う………
ガート: なんだなんだ?
レオン: どうしたの〜
見ると、プロト-Kは完全に固まっている。ガートランドが蹴りを入れたがまるで反応がない。
エクセル: 叩いてみましょう。えい!
エクセルとガートランドが二人でボディをごんごん叩くも、まったく反応がなかった。
エクセル: 角度間違えましたかねぇ……
ガート: まいったなぁ、どうしちゃったんだろう
3人は問題のプロト-Kから一歩離れると、腕組みをして考え始めた。
レオン: 水が入ったから……?
ガート: Kってそんな安物だったか?
レオン: そうだよねえ
エクセル: 仕方ありません。置いていきましょう
動かないプロト-Kをぼーっと見つめていたレオンは、ふと何かに気付いた。
レオン: あ、あれ〜?
ガート: どうした?なんか動きがあったか?
見ると、プロト-Kの胸に光っているはずのセクションIDが消えかかっている。エクセルはプロト-Kをのぞき込んだ。
エクセル: ふむふむ……?
ガート: エネルギー切れかな?
エクセル: わたし、生物専攻ですが、そう思います
レオン: さっきからそんなことを言ってた気もするねえ。エネルギー切れっぽいって
ガートランドはさっきからずっと腕組みをしている。
ガート: どうすりゃいいんだ?
レオン: 町に連れて帰る?
ガート: ああ、そうするしかないかな
エクセル: 重いですよ〜
ガート: しかたない、2人でかつごう。エクセル、足の方を持って
エクセル: 置いていって、あとからメディカルセンターに……
エクセルの言葉も聞かず、ガートランドはプロト-Kの後に回ると、ボディを寝かせようとしていた。エクセルの方を見ながら足をしきりに指差している。
エクセル: わたし、ケインより重いものを持った事は……
ガート: じゃ、今から持つんだ
エクセル: はぁ……

エクセルがのろのろと足の方へ移動した時、プロト-Kの顔を心配そうにのぞきこんでいたレオンが何かを聞きつけた。
K: モ……ノ……メ……イ……ト……
レオン: 待って、なにか言ってる
K: モ…ノ…メ…イ…ト…
ガート: モノメイト?それがどうかした?
レオンは鞄をごそごそと漁ってモノメイトを取り出し、それをプロト-Kの口に入れた。
レオン: Kちゃん! これでどう?
プロト-Kの口がかすかに動いたような気がした。モノメイトは口の中に消えていき、そして、急に彼は動き出した。
K: 復活!
レオン: うごいた〜!
エクセル: あ、僅かに動くエネルギーは残っていたのですね
K: あ〜、やばかった
エクセル: ふう、助かった
エクセルは汗を手で拭うと、プロト-Kの足元から離れた。
ガート: なんだいなんだい、人騒がせな
レオン: Kちゃんはモノメイトで動いてたんだ
プロト-Kは小川の岸辺に座ると、レオンが差出すモノメイトを何本も一気飲みした。
レオン: だいじょうぶ?
エクセル: 慌てると喉につかえますよ〜〜
レオン: 身体に悪いよ〜
プロト-Kはモノメイトの空容器を前にして一息ついた。
ガート: モノメイトが切れたくらいで止まらないでくれよ
K: いやぁ、最近ちゃんとした飯食えへんかったから、モノメイトでしのいでたんや
エクセル: はぁ、なんだか不便な体ですねぇ
レオン: Kちゃん、かわいそう……
レオンはそう言うと、鞄からバナナを一本取り出した。
レオン: バナナあげるね
K: や〜、心配かけてすんまへんな〜。おおきに〜
ガート: Kが止まると僕達が迷惑するんだ
プロト-Kはガートランドの文句などおかまいなしにバナナを口に運んでいる。
エクセル: バナナも食べるのですか……
K: 基本的にヒューマンやニューマンが食うもんならなんでもええんや
レオン: ポッキーも食べる?竹の子の里もあるよ〜
エクセル: じゃあ、これもどうですか?
エクセルは自分の鞄からフルイドを取り出した。
K: あら、フルイドは無理や。
ガート: フンはどうかな?
エクセル: フン……食べますかねぇ……
エクセルは自分の鞄から今度はガラスケースに入ったフンを取り出した。
K: フンも無理や!
エクセル: 結構好き嫌い激しいのですねぇ
レオン: ヒューマンもニューマンもフンは食べないよー
K: あんたらはフンも食うんかい!
ガート: いやあ、でもこいつはキャストだしなぁ。チョコレートだ、とか言ったら食うかもな、とか……
プロト-Kの睨みつける視線に対し、ガートは両手をまあまあというように身体の前に出しながら後ずさりした。

レオン: あ、マリービスケットもあった。あげるね〜
K: おおきに!
レオン: はい、お茶!
レオンはプロト-Kの横に座り、鞄から次々に物を出して手渡していた。そして、プロト-Kはそれを次々と口に運んだ。
レオン: 元気になったかな〜?
K: ぷかー、生き返る〜
そんな2人をエクセルとガートランドは立って見ていた。
エクセル: アンドロイドって、雑食ですっけ?
エクセルは隣のガートランドに尋ねた。
ガート: いやあ、いろいろいるみたいだよ
エクセル: 1系統のエネルギーでは、いざエネルギー切れの時に困る、といった思想設計なのでしょうねぇ
ガート: でも実際にエネルギー切れで困ったじゃん。解決にもなんにもなってない
エクセル: それは、Kさんの用意が悪かっただけだと重います。

レオンが次々と差し出すお菓子を、プロト-Kは手で制止した。
K: いや、ありがとさん!
レオン: いえいえ〜。お菓子いっぱい持ってきてよかった〜
K: せやな〜、感謝感謝や
エクセル: どこから出てくるのでしょうかねぇ……
と、今まで立っていたガートランドも、レオンの横に座った。
ガート: 僕にもくれよ
レオン: いいよ〜、何がいい?おせんべもあるよ〜
ガート: そうだなぁ……ガトーショコラがいいな
エクセル: あ、じゃあわたしはオニギリセンベイなる物を……
レオン: はい、あげるよ〜
レオンにお菓子をもらって、しばし休憩タイムとなった。
エクセル: 今回、おやつは300メセタまでではなかったですよね?
レオン: そんな、300メセタじゃ足りないよ〜
ガート: そんな決まりなんてない!
うろたえるレオンを後目に、エクセルはまたお菓子をつまんだ。
ガート: それにしても、準備周到だね、レオン
レオン: そうかな〜
ガート: さすがはレオンだよ
レオン: いつもお菓子たくさん持ってるんだ〜
エクセル: でふねぇ……
エクセルは口の中にお菓子を入れたまま答えている。
レオン: お茶とお菓子はいつも欠かせないね♪
すると、プロト-Kが手をメガホン代わりにして、何もない空間に向かって叫び出した。
K: マスター、たまには仕送りしてくれたってええや〜
ガート: K、別に人間の食べるものにこだわらなくてもいいんじゃないのかい?
K: せやねぇ、だけどキャスト用の食料高いんや
ガート: そのへんの草とか葉っぱとかさぁ……キャストなら食えるかもよ?
レオン: はっぱだなんてかわいそうだよ〜。おいしいものの方がいいに決まってるよ〜
プロト-Kの目つきが変わった。彼は立ち上がるとバズーカを構えた。
K: ガート……しばかれたいん?
ガート: ちょ、ちょっとまった! 君の為を思って言ってるんだよ
ガートランドは座ったまま後ずさりを始めた。
ガート: だって、キャストにとってはおいしいかもしれないじゃないか……
レオン: そんなのつまんないよ〜
エクセル: 味覚を調整してもらえばいいんですよ〜〜。はっぱがステーキの味とか
レオン: あ、でもそれいいかも〜。便利だね〜
エクセル: ですよね?
バズーカの安全装置を外す、かちゃっという音が聞こえた。
ガート: おいおい!
レオン: Kちゃん、落ち着いて!
K: うらぁ!!
プロト-Kの大声に驚いた3人は、急いで立ち上がると即座に逃げ出し始めた。
レオン: わあ〜
エクセル: わわ、何するんですか〜〜
ガート: うわぁ、待った、待った!
K: ふーっ!!
エクセル: こっちに避難してましょう……
ガート: だれか〜、止めてくれ〜
エクセル: 今度止まったら、やっぱり置いていきましょうね
大あわてで逃げ出す2人に対して、レオンは途中で止まって振り向いた。
レオン: Kちゃん!
プロト-Kを見つめる真剣な顔。
レオン: そんなことすると、もうお菓子あげないよ!
その一言がプロト-Kを止めた。手にしたバズーカを下げる。
ガート: 止まった……レオン偉いっ!
レオン: さあ、Kちゃん行こうよ。その勢いでドラゴン倒そうよ
プロト-Kは武器は降ろしたものの、まだガートランドをにらみつけている。レオンがぽんぽんと背中を叩いても動く気配がない。
K: てめえらが悪いんじゃー。がるるるる
ガート: 僕はいつも君の為を考えてるんだよ。勘違いしないでくれよ
K: てめぇらアンドロイドなめてるんやろ!ああん?なめたらあかんぜよ!!
レオン: そんなことないったら! 今まで一緒にやってきたのに〜
レオンは少し涙目になっている。
ガート: なんてこと言うんだ! 君にそんな仕打ちをしたこと、あったかい?僕達の友情はどこへ行ったんだよ?
K: フン食わせるんが友情かー!?葉っぱ食わせるんが友情かー!?
ガート: だ、だ、からさぁ、それは……
ガートランドは口ごもっている。
ガート: いや、キャストにならできるかなぁ、と……ほら、僕達よりずっと優秀な消化装置だから……
レオン: お菓子あげたじゃん〜
この一連のやりとりを、エクセルは遠くの木の陰から見守っていた。
エクセル: 感情の起伏が激しいんですねぇ……もしかしたら、エルノア並の傑作なんでしょうか
レオン: エクセル〜もう大丈夫だよ〜
エクセル: そ、そうですかぁ〜〜?まだ興奮してますよ〜〜
と言いながらも、エクセルはこそこそと近寄ってきた。

安全が確認できたのか、ようやくエクセルはプロト-Kの目の前までやってきた。
エクセル: そもそもは、Kさんがモノメイトを切らしていたのが元ですよ
K: しかたないやろ! 切れたもんはしゃあない
エクセル: なぜ、予備のモノメイトがなかったのですか?
K: ……金銭の問題や……
プロト-Kはさっきとはうって変わった小さな声で言った。
エクセル: はぁ、お金がないのですか……
レオン: うっ……Kちゃん、かわいそう……
K: せや、自立は大変なんや
エクセル: 判りますねぇ……わたしもお家賃が……
プロト-Kにつられてエクセルもため息をついた。
レオン: じゃあ、今度うちにおいでよ。いっぱいごはん食べさせてあげるよ〜
レオンがにっこりして言った。
エクセル: おお、良かったですねぇ〜〜
K: おおきに、おおきになー
レオン: 姉さんは恐いけど、料理はうまいよ〜。ね、だから機嫌直してよ〜
K: ああ、わては幸せもんや
レオン: よかった〜
ガート: これで解決。うんうん
エクセル: 良かったですねぇ…
エクセルとガートランドはうんうんとうなずいた。
ガート: いやぁ、友情のパワーだね。これは。
エクセル: これが友情というものですか
エクセルはまたメモ帳を取り出して何やらメモをしている。
レオン: じゃあ、気を取り直して、ドラゴンに会いに行こう〜
プロト-Kをさあさあと引っ張るレオンだったが、プロト-Kはガートランドとエクセルをにらみつけていた。
K: あんたらなにもしてへんやろ〜
ガート: え?僕達?なに言ってるんだい……うまく収まったんだから、いいじゃないか
エクセル: なにかしてあげないと、友情は成立しない……では、わたしも出来る事があればいたしますねぇ...
K: さよか〜
エクセル: お家賃払ってからになりますけども……
K: おおきにな〜
エクセル: 期待されても困りますけど……
K: 気持ちだけでうれしいんや
エクセル: なんだか言ってることと違うような……まぁ、気にしないでいましょう
その時、道の向こうからレオンの大きな声がした。
レオン: ほら、みんな〜、行こうよ〜、置いてっちゃうよ〜
ガート: ああ
レオン: 日が暮れちゃうよ
遠くで手を振っているレオンに向かって、皆駆け出した。