何でも屋3: 二人のひかり

なつめはひかりと格好がそっくり。そんなこととはつゆ知らず、いつもののんきな店長とそのバイト君はなつめをひかりと勘違いしていつものように仕事にひきずり込んでしまいます。偶然が引き起こした珍騒動です。

アスタシアの横暴

なつめ: うりゃっ
ゼロ: えい
毎度おなじみの洞窟の敵を相手に4人は元気よく戦っていました。しかし、曲者は例の花です。またもやゼロが麻痺攻撃に当ってしましました。
ゼロ: わわ、またやられたです。
ひかり: つんつんさんがんばあ
ゼロの声を聞いてだれともなしにアンティがかかりました。

敵はほぼ一掃されましたが、アスタシアだけはまだ目の前の敵と奮戦していました。そこになつめが加勢し、やっと倒すことができました。
なつめ: ごめん、元締め
アスタシア: いたい……戦闘は慣れてないのよね、わたし
ひかり: 全部ストさんにまかせっきりだったんだぁ、元締め
アスタシア: ええ、そうね、今考えると


敵もいなくなり、アンティもレスタもかかって4人はほっと一息つきました。しかしゼロはまだ続けます。
ゼロ: びりびりする〜。もう動けないよ〜。みんながんばってぇ
なつめ: つんつん、動けないんでしょ。だったらさぁ、戦闘にたっておとりやってよ
ゼロ: ええ〜〜、無理ですよ〜
ゼロは激しく首を横に振りました。
なつめ: 敵をひとかたまりにしたら戦いやすいよ
ひかり: なるほどお、どうかなあ、元締め〜? 2号の提案
アスタシア: ええ、できればいいんですけど‥‥大丈夫かなあ?
なつめ: やってみる価値はあると思うよ
ゼロ: 僕そんなことできないぞ
アスタシア: わかったわ、試してみましょう
ゼロ: ええ〜〜
なつめ: どうせ魔法は使えないんでしょ、しびれてるんだから。直接戦闘しても……って戦闘自体できなかったね
ひかり: うんうん、みんなのために役にたってね
アスタシア: まあ、しびれてるんじゃ、しょうがないわね
ゼロを除く3人の意見は一致したようです。
なつめ: んじゃ、おとり決定
ひかり: がんばれ〜
ゼロ: ええ、決定なの?
なつめ: うん、今国会で過半数で決まったよ
ひかり: 骨はひかりたちが拾ってあげるね。だから安心してね
なつめ: どっかのマグマに捨てるから
ゼロ: 数の暴力だぁぁ
ゼロは涙目になっています。
アスタシア: 大丈夫よ、ツンツンさん、いざという時にはちゃんと力は発揮できるのよ。ねー
ゼロ: はぁ、やれるだけやってみますよ
ゼロはこれだけ言うのが精一杯でした。
ゼロ: はぁ、ほんとは、ストライクさんがやってくれるんだろうなぁ


ひかりは部屋の片隅に稼働中の防護柵のスイッチを見つけました。
ひかり: これおねがい〜
ところが、自信満々のゼロが近寄っていくのを追い越して、なつめがささっと機械の前に立つと、気合いを入れてボタンを殴りつけました。
なつめ: とりゃ!!
すると、ぽんと小さい爆発音がして、防護柵の作動を示すランプが消えました。
ひかり: 壊れちゃった。2号、すごいなあ。技は1号より上なのかな
アスタシア: いいのかなぁ…
ゼロ: あああ〜、ひかりちゃん、僕の仕事とらないでよ〜
なつめ: つんつんはおとりって仕事あるでしょ!!
ゼロ: そっそうだけど……
アスタシア: 良かったわね。仕事が増えて
ゼロ: よくないですよ〜
アスタシア: よくない?仕事が減ると給料も減るわよ?


なつめ: 敵だー! つんつん、おとりだ
ひかり: おとりがんばってえ
ゼロ: やっぱりこわいよ〜
ゼロは全力で逃げ回りました。そして敵はそんなゼロの後をついていきます。
なつめ: ナイスおとり!!

アスタシアはまたも洞窟に群生しているナルリリーの毒を受けてしまいました。ひかりがアンティをかけます。
アスタシア: うわあ、まただ!
ひかり: ニューマンの方が毒に耐性あるのかなあ
アスタシア: もうだめ、こんな所。まったく、なんて所なの! あの花…
ひかり: 元締め、大丈夫?
なつめ: 元締めらしくない言葉発しない!!
ひかり: もっとかわいい花ならいいのにねえ。店先に置きたくなるような
アスタシア: そうそう、わたしみたいにね
なつめ: ラフレシアみたいに?
アスタシア: ……ラフレシア、ねえ……
ゼロはアスタシアの表情が変わるのが手に取るようにわかりました。
ゼロ: 聞かなかったことにしよう

ひかりは、アスタシアの両肩に乗っているマグ、シーターを見て言いました。
ひかり: かわいい花だよね
アスタシア: あ?これ?いいでしょー。ふふふ
なつめ: ロケットみたい
ひかり: 花なの!
なつめ: ブースターじゃなかったのね。さっきのところ、元締めなら行けたんじゃないかなぁ
ひかり: あ、なるほどお、2号は頭いいなあ
アスタシア: 無理だって。熱いし。

しばらく休憩した後で、ひかりはドアを指差しながら言いました。
ひかり: じゃあ、おとりのつんつんさん、先にいってね
ゼロ: えっはい?僕が先頭ですかぁ?
なつめ: おとりなんだから
アスタシア: そういうことになるわね
ゼロ: そんなぁ、僕フォースですよ
なつめ: 今現在おとり以外使えないんでしょ!!
アスタシア: それとも、しびれ治った?
ゼロ: うう、えとえと……
ゼロは言葉に詰まりました。
ひかり: 体調戻ったかな?
なつめ: なおったの?
ゼロ: もっもちろん、ばっちし治りましたよ。あはあははは
なつめ: おとりとして使えるってさ
アスタシア: いつの間に!? ねえねえ、何やったら治ったの?アンティでも治らなかったのに……
ひかり: 奇跡が起こったんだよきっと
ゼロ: えとえとえと、運が良かったんですよ
なつめ: 要は本人の気力だよ。やる気がなかったら治らないんだってさ
アスタシア: 今まで気力が足りなかった?ああ、そう
ひかり: 元締めのウィンクが効いたんだってさ。やる気倍増だっ
なつめ: それはいえるね
アスタシア: え?ほんと?
なつめ: ヘビににらまれたカエルみたいだって
アスタシア: ふうーん。なんかちょっと意味が違うような……
ゼロ: いってないいってない
ゼロは懸命に否定します。
ひかり: ふうん、蛇なんた元締め。なんか恐いな〜
なつめ: んでカエルがツンツン。恐怖のあまり動けないんだってさ
ゼロ: 僕が蛙ですか〜
ひかり: じゃあ蛇というよりもメドゥーサやね。メドゥーサって怪物みたいだねえ。あはは
アスタシア: 恐怖!?メドゥーサ!?なんてことを!
アスタシアの語気が一段と強くなりました。
ゼロ: わわ、ひかりちゃん、なんてこというんですか
ひかり: だってえ
アスタシア: ひかりさん、わかりました。あなたがいつもどういう風にわたしを見ていたか
なつめ: そう、ツンツンが言ってたんだよね。口癖のように
ひかり: そうそう、つんつんさんがあ、いつもこぼしてたよお。そんな風に。ひかりが言ったんじゃないよ
アスタシア: ほんと?
アスタシアはゼロをきつい目で見ました。
ゼロ: ひかりちゃん、うそはいけないよ
アスタシア: うそ?
彼女は今度はひかりの方を見ました。
ひかり: どーかなあ。えへへえ
なつめ: どうでしょ?
ゼロ: 僕そんなこと言ってないよ
アスタシア: わかりした。3人とも同罪、ってことね
なつめ: あううっ!
ひかり: まあ、それは元締めが判断するんじゃないかなあ

アスタシアは3人を等しくにらみつけ、しばし沈黙の時が流れました。この気まずい空気を破ろうとしたのはひかりでした。
ひかり: あ、思い出したあ。あのね、メドゥーサっていってたのはね、ストライクさん。あいつはそれくらい腹黒い女だって、なめてかかるなよって言ってたよ
なつめ: 腹黒いんだぁ
アスタシア: えーっ、彼はそんなことは言わないわよ。必要なことすら言わない人なのに……
ひかり: たぶん、元締めがすごい人だって言いたかったんじゃないかなあ
なつめ: ものすんごい人だって、いろんな意味で。
アスタシア: そ、そうかなあ
ひかり: ともかく、元締めはすごい人ってことで
なつめ: そうそう
アスタシア: うん、まあ、そこまではいいわ
ゼロ: そっそうですよ。ささ、次行きましょうね
ゼロはそう言って歩き始めました。
アスタシア: うーん、なんかごまかされた気はするけど……
ひかり: がんばっていこー
なつめ: おー?