何でも屋3: 二人のひかり

なつめはひかりと格好がそっくり。そんなこととはつゆ知らず、いつもののんきな店長とそのバイト君はなつめをひかりと勘違いしていつものように仕事にひきずり込んでしまいます。偶然が引き起こした珍騒動です。

ゼロのたくらみ

ひかりは、アスタシアの持っているマジカルピースに目をつけました。彼女、いつもは長杖なのに。
ひかり: 元締め〜、ひかりたちに対抗してえ、かわいい武器持ってるねえ
アスタシア: いーでしょー
ひかり: あんまり似合わないなぁ……
ひかりは聞こえないようにぼそっと言いました。
なつめ: 元締めには似合わなーい、ってツンツンが言ってたよ。さっき
アスタシア: なんですって!
ゼロ: えええ〜〜〜!!!
ゼロはアスタシアにキッとにらまれました。ゼロはぶんぶんと首を振っています。
ゼロ: 言ってない、言ってないです
アスタシア: ほんとに?
ゼロは今度は思い切り首を縦に振っています。
アスタシア: ほんとにほんと?
ゼロ: すっご〜〜く似合ってますよ
それでも彼の顔はひきつっています。
アスタシア: よーし、それでよろしい。ふふふ。みんな似合ってるって♪
ゼロ: ストライクさーん、助けてぇぇ……なぜいないの〜。うう
ゼロは天に向かってつぶやきました。
なつめ: まあ、本人が似合ってるんだし、それが真実としましょう
ひかり: そっかなぁ……ま、いっかあ
ゼロ: はぁ。やれやれ、この先どうなるんだろ
ゼロは大きなため息をつきました。
ひかり: 行こう元締め〜
アスタシア: ええ、洞窟の敵をハートで……いえいえ、なんでもないわ
アスタシアも洞窟の奥へとたったか駆けていきました。


細い通路の先は丸い部屋になっていました。しかし、真中に溶岩の川が流れています。部屋に入っただけで熱気が感じられます。
ひかり: いきどまりだ
アスタシア: これを渡っていくのは無理よね?
なつめ: ツンツン、空飛んでよ
ゼロ: ええ〜、むちゃ言わないでよ、1…じゃなかった、2号
なつめ: 1号違うよ
ひかり: 1号はこっち〜
ゼロ: うっ
ゼロとアスタシアはまたなつめとひかりを見比べました。
ゼロ: はぁ
アスタシア: うーん、やっぱわからない
なつめとひかりはあたりを自由にうろうろと歩き回っています。適当に位置が入れ換わったところで、ひかりがゼロに尋ねました。
ひかり: どっちどっちい?
ゼロ: えとえと……
なつめ: どっちよ!
ゼロ: こっち
とゼロが指したのはなつめでした。
ひかり: はずれ〜。あはは
なつめ: まぁ、そういうこっちゃ
なつめはゼロの肩をぽんと叩きました。

そして、ひかりとなつめがほぼ同時に口を開きました。
ひかり: ゼロさんはとべないんだ
なつめ: 性格軽そうだから空飛べると思ったんだけどなぁ
ゼロ: ひどい、ひかりさん
アスタシア: あはは
ひかり: ストライクさんはとべるんじゃないのかなあ? なんでもできそうだし
アスタシア: ストさんだったらできるかもね
なつめ: 今度ストライクさん見てみたいな。空飛べるかどうか

4人はしばらく溶岩の川とその向こう岸を呆然と見ていましたが、だれとはなしにそこを離れ始めました。
ひかり: 別の道を探さないとね
なつめ: 別の道行こうよ
アスタシア: ここは無理よ、やっぱり
ゼロが先頭に立って、さっきの部屋に戻りました。
なつめ: そういえば、つんつんのせいで道間違えたんだよね
アスタシア: そうだったわね
ひかり: ゼロさんのどじ〜
ゼロ: あぅ、僕のせい?
なつめ: うん
なつめは即座にきっぱり返事をしました。

ゼロ: それに、つんつんじゃないよ、ゼロだよ〜
なつめ: だって頭ツンツンだし。つんつん、行くよー。元締めも行くよー。
なつめはそう言って、先頭を切って歩き始めました。
ひかり: ツンツンってなんかかっこいい〜
アスタシア: ツンツンか〜。わたしもそう呼ぼうかな〜。
ゼロ: ええ〜〜、そんなぁ、アスタシアさんまでぇ
ひかり: じゃあ、ひかりもお
ゼロ: ひかりちゃんまでぇ
アスタシア: ほら、ツンツンさん、行くわよ

なつめ: アスタシアっていうんだ、元締めって。
もちろんなつめは知りません。初めて会う相手なのですから。
アスタシア: ええ?今さらなにを?
なつめ: てっきり元締めが本名かと……
アスタシア: そんなわけないでしょ。元締めは…あだ名みたいなものかなあ。ツンツンさんみたいにね。
なつめ: なるほどー
アスタシア: そうか、あだ名にさんをつけるのも変かな?
なつめ: ううん、まかせるよ
アスタシア: ほら、ツンツン、行くわよ!
言ってみてからアスタシアは少し後悔したようです。
アスタシア: うーん、さすがにちょっとかわいそうかな


長い通路を抜けると、そこはいつものように大きな部屋のようになっていました。そして、そこには白い花が可憐に咲き誇っていました。可憐というには少し大きすぎるのと、毒攻撃をしかけてくるのが難点ではありますが。
ゼロ: しっしびれたぁ。動けないや。
なつめ: ほらっ!!
なつめがすかさずアンティをかけて毒を中和しました。それでもゼロは続けます。
ゼロ: 僕のことはいいから先に行ってください
アスタシア: もう治ったでしょ?
なつめ: そのはずだよ。まぁ、あとはツンツンの気力にまかせるけどね
ゼロ: あぅ、ばれてたんですかぁぁ……あっ
ゼロはあっと言って口をふさぎましたが、時すでに遅し。アスタシアもじろっとゼロを睨みます。
ひかり: あ〜〜〜、さぼる気だったんだぁ
ゼロ: そっそそっそんなことないですよ
なつめ: 次にホントにしびれても治してあげないんだから
ひかり: 元締め〜、ツンツンさんの給料カット分はひかりたちに頂戴ね
ゼロ: ひかりさん、それはないですよ〜
なつめ: 当然じゃん

しかし、アスタシアはひかりの提案に対してしぶい顔をしました。
アスタシア: え〜、ただでさえ人件費が苦しいんだから…それにゼロさん、これ以上給料下げたらなくなっちゃうし…
なつめ: そんなに少ないの〜!?
ひかり: そんなに少ないの?
ひかりとなつめは揃って言いました。
ゼロ: そうですよ
ひかり: じゃあ、ひかりって意外ともらってるのかなあ
ゼロ: ひかりちゃん、いくらもらってるの〜〜
アスタシア: あ、ひかりちゃん、自分の給料は言っちゃだめよ
ひかり: じゃ秘密〜。えへへ
なつめ: ツンツン、今の額は?100メセタ?
ゼロ: えとえと、時給10メセタ〜
全員の視線が一気にアスタシアに集まりました。
アスタシア: まあ、いい額よねぇ
なつめ: 内職よりもひどいよ
ゼロ: えっえっえっ、これくらいが相場じゃないの?
アスタシア: そうそう!そのくらいが相場なのよ!!
なつめ: まぁ、ツンツンにとっては相場みたいだから改善の必要はないね、元締め
ひかり: そういうことにしておこう
ゼロ: あっ、わかった、ひかりちゃん、時給15メセタだ
ゼロは一人でなにか納得していますが、なつめはずっこけます。
ひかり: せめてえ、15メセタにしてあげて…ね
アスタシア: 店が軌道にのってからね
ひかりとアスタシアは二人だけでひそひそ話をしていました。


4人は、洞窟の敵をばしばし倒して進んで行きました。
ひかり: なんとかなるもんだね
アスタシア: そうそう、大丈夫でしょう?
ひかり: Wひかり強〜い

そう言って油断しながら進んでいくと、突然、爆発に巻き込まれました。トラップです。一同は慌てます。
ゼロ: トラップだ びっくりしたぁ
なつめ: いたいよぉ
ひかり: とりあえず、こっちに〜
アスタシア: ストライクさん! あ、いないんだっけ……
アスタシアはとっさに振り向きましたが、もちろんストライクはいません。彼女はため息をつきました。
ひかり: うん、機械があったらどうしようかなあ
ゼロ: 僕がやるよ、機械。
アスタシア: 大丈夫? できる?
なつめ: ツンツン、機械マニアなんだ

一足先に奥の部屋に入っていたなつめが戻りながら言いました。他のメンバーもその部屋に入ってみると……そこには、フェンスの起動装置が置いてありました。ゼロが胸を張って近寄ってみると、既に破壊されていてスイッチは切れていました。
ひかり: あ、2号がもう開けちゃった
ゼロ: 僕の仕事……
なつめ: ごめんね、お先にこじあけちゃった
ひかり: さすが力の2号。力づくで開けてるよ
なつめ: 「押して駄目なら押し倒せ」てことわざもあるし
アスタシア: そうか、力でなんとかなるのか……えらい! ひかりちゃん!
ひかり: すごいなあ
なつめは照れ笑いをしました。
ゼロ: 女3人いると……こわいなぁ
ひかり: そのマグのお陰なのかな
なつめ: うん。あたしのかわいいペット
なつめはマグに餌をあげて、なでてやりました。

ひかり: じゃ行くよ〜
アスタシア: 今日中に仕事すませないといけませんからね。早く行くわよ
ひかり: がんばっていこー
4人は元気よく洞窟を進んでいきました。