何でも屋17: 病院にて

病院に運ばれたまま、意識が戻らないゼロとストライク。そして、彼らを待つ3人の女性たち。

終わりの始まり

ひかりちゃんが実際に店から出ていくと、わたしにもだんだんと実感が出てきました。思わず溜め息をつきました。
アスタシア: はぁ、ひかりちゃんは退職、か。
ゼロ: さびしくなるね
アスタシア: じゃあそろそろ真剣な話するわね
わたしは椅子に座り直しました。
ストライク: ああ……
ゼロ: なにかな
アスタシア: ストライクさん、ずーっとうちのお店手伝ってくださる?それとも……あ、ストライクさんだけじゃなくて皆に質問ね
なつめ: どうなのよ?
ストライク: ふむ……
アスタシア: 実はね、お仕事も最近あまり来ないし、どうしようかなぁ、と……
なつめ: 仕事がなけりゃ自分で作るしかない
ストライクさんは、鞄から小さな箱を取り出し、わたしに差し出しました。
ストライク: 答えは……これだ
アスタシア: なに?これ?
ストライク: 開けてみろ
アスタシア: ええ
それを見て、なつめさんがゼロさんとまた何やらこそこそと話をしているのが見えました。
なつめ: つんつん、去るぞ。二人だけにしてあとで冷やかそう。冴も交えて
ゼロ: それはだめですよ
なつめ: そうなの?

わたしは箱を開けてみました。中に入っていたのは、天然ダイヤモンドの指輪でした。ストライクさんの顔は心なしか赤いように見えました。
アスタシア: これは……?わたしに?
ストライク: ああ
アスタシア: ほんと!?うれしい! あなたの贈り物だったら、大事に大事に受け取りますよ
わたしはさっそくはめてみました。わたしの指にぴったりとはまりました。きらきらときれいな指輪でした。
ストライク: ああ……似合うよ……
アスタシア: ふふふ

わたしはストライクさんと指輪に夢中で、なつめさんとゼロさんが二人でこそこそ話しているのに気がつきませんでした。
なつめ: 指輪ねぇ。あたしもくれる相手いないかしら?
ゼロ: ふーん、そうなんだぁ。いつかあらわれますよ
なつめ: いつかね
ゼロ: そそ、い・つ・か
なつめ: しゃくにさわる。外で飲むぞ
ゼロ: え?
なつめ: 二人でのろけてるから気づかないでしょ
ゼロ: ちょちょっとまって。私も飲むんですかぁ?
なつめ: 今夜は朝まではしご酒だぁ〜。あ、気持ち悪くなったら介抱してね
ゼロ: はい……#がっくし
なつめさんは、ゼロの手を引っぱって部屋を出ていきました。
なつめ: 冴も呼んで夜更かしだ〜
ゼロ: なつめちゃんの手も暖かいや


気がついてみると、部屋はわたしとストライクさんだけになっていました。
アスタシア: あれれ?ゼロさんとなつめさんは?
ストライク: さあ?
アスタシア: どこいっちゃったんだろ……ま、いいか
ストライク: そうだな

ちょっとの間は幸せに浸っていたい。これだけ苦労したんだから、そのくらいいいですよね。