何でも屋13: ひかりと影

ひさしぶりに何でも屋に帰ってきたひかりちゃん。でも、なんだか様子がおかしいのです.

そして最後に

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その時、こつこつと足音がして、一人の男が現れた。以前、ブラックペーパーの基地の壊滅作戦の時に出てきた男だ。
ストライク: 久し振りだな
ゼロ: やれやれ、アレスも役に立たない奴だ。まぁ、所詮は研究の失敗作だからな
ひかり: 誰の……声……?
アスタシア: あー、この前の変なおっさん! 死んだはずじゃ……
ゼロ: くっくっくっ。死ぬ?私があれで殺せるとでも?
その男は嫌らしい笑い声をあげた。
ひかり: 元締め……あれは誰なの?
アスタシア: あいつのせいでこの前ひどい目にあったのよ。ストライクさん、今度こそやっちゃってよ。二度と化けて出られないくらいに
ストライク: 向こうに殺気はない……
ゼロ: そこに倒れてる……ひかりさんでしたかな?なかなかの精神力の持ち主だ。今日はいいものを見せてもらった。一応礼は言っておこうか。楽しませてもらったからね。
その男はニヤリと笑った。
ゼロ: まさか説得するとはね。私の目に狂いはなかったようだ
ひかり: あの子は……悪くないよ。ただかわいそうな……だけ……だよ
ゼロ: かわいそう?なぜだね
ひかり: 戦うためだけに……誰にも愛されない……
ゼロ: 違うな、それはあなたの解釈だ
ひかり: ……違わない……よ
ひかりと男はしばし睨み合った。緊張でこわばったひかりの身体から力が少しずつ抜けていく。
アスタシア: ひかりちゃん、大丈夫?
ひかり: だい……じょう……ぶ
アスタシア: 大丈夫じゃない!
ゼロ: まあいい。ここでそんなことを口論するつもりはないよ。それより、このまま放っておいていいのかな?そちらさん、だいぶ衰弱しているようだが
アスタシア: ストライクさん、わたしはひかりちゃんを運んで帰るから、その変なおっさんはお願い
アスタシアはひかりを抱いたまま街への転送機に急いだ。


そして、男は今度はストライクとにらみ合った。
ゼロ: ほんとは出てくるつもりじゃなかったんだがね
ストライク: 何が目的だ……ジーニを作り奴を作り……そして俺を素体にしようとした……何が目的だ?
ゼロ: ほう、あの小娘はまだ生きてるのかね。知らなくてもいいことってあるんですよ。くくっ
ストライク: ここは引かせてもらう。だが……必ず貴様らに復讐する
ゼロ: わたしも争いにきたわけじゃないのでね。これで失礼するよ。まあせいぜい頑張ってくれたまえ。ジーニという実験体にもよろしくな。くっくっ
男はそう言い残すと、どこへともなく歩み去った。


ここはパイオニア2の病院。ベッドで寝ているひかりをアスタシアとゼロが心配そうに見ている。そこにストライクが入ってきた。
アスタシア: あ、ストライクさん
ストライク: どうだ?
アスタシア: うん、大丈夫みたいではあるんだけど
ストライク: そうか……
ひかり: 復讐なんて心が痛いだけ……
ひかりはうわ言のようにつぶやいてから、そっと目を開けた。
ひかり: ……ここは?
アスタシア: 病院ですよ
ゼロ: あ、目が覚めたみたい。よかったぁぁ
ひかり: そっか、ひかりは倒れちゃったんだね。心配かけてゴメンね
ゼロ: ほんとに心配したんだからね
ひかりは起き上がろうと頭を上げたが、またすぐその頭をベッドに沈めた。
ゼロ: あっ、まだ、動いちゃだめだよ。ほらほら、寝て寝て
ひかり: あ……うん
アスタシア: ゆっくり休んで下さいね
ひかり: おじいちゃんにも心配かけちゃってるね。元締め……連絡をお願い
アスタシア: わかりました
ひかりはそのまままたすやすやと眠ってしまった。

ストライク: 復讐の為だけに25年間行きてきた。復讐以外に何が出来る
ストライクは誰にも聞こえないような小さな声でぼそりとつぶやいた。
ゼロ: どうしたんですか?ストライクさん。私たちも帰りましょうか
アスタシア: わたし、もうちょっとここにいますから先に帰ってて下さい
ゼロ: じゃ、帰ってるね。なんだか私疲れちゃいましたよ。テクニックの使いすぎかな。おっかしいなぁ。身体のあちこちが痛い。
アスタシア: ゆっくり休んで下さい。ゼロさん、大活躍したもんね
ゼロ: それにドラゴンの戦闘から記憶がないんだよなぁ
ゼロは首をひねりながら病室の扉を出ていった。

ストライク: 俺は残る……
ストライクはそう言うと、ゆっくりとアスタシアに近寄った。そして、彼女を後ろから抱きしめた。
アスタシア: ちょっと、やめてよ、こんなとこで。ひかりちゃんが起きるかもしれないでしょ
ストライク: すまない……少し、こうさせてくれ……
アスタシア: いいですけど……ゆっくりお休みなさいな

ひかりはまだ眠りながらうわ言のように何かをつぶやいていた。
ひかり: もう悲しいのは嫌だよ……