何でも屋11: ひかりちゃん合格おめでとう

ひかりちゃんの追試は無事合格でした.これで無事に明るいパーティーができますね.あまり羽目を外さないで下さいよ.

しばしご歓談を

なつめ: 元締め〜, ジュースない?
アスタシア: ジュース? 適当にカウンターの中の人に頼んじゃってよ
いよいよパーティーが始まりました. 既に半分始まってたような気はしますが, 料理人の父もウエイトレスの私もこれからが正念場です. 早くもなつめさんから注文が出ます.
なつめ: ねーさん, ジュースのピッチャー4杯!!

そんな中, 主賓のひかりさんはゼロさんの横でなにやら二人で話しています.ははーん. そういう仲だったのでしょうか?
ゼロ: よかったね. ひかりちゃん
ひかり: これでやっと皆のお役に立てるもん
ゼロ: これで一人前〜
ひかり: 今度, 正式ハンターの印に貰ったブルーリングを見せてあげるね. ゼロさん
ゼロ: うんうん
ひかり: 本当は, 青色はぁ, 追試で受かった人だけなんだって……内緒だよ. ゼロさん
ゼロ: うっ, うん. わかった.
ひかり: まあ, ひかりは青い服だし, 青いリングは似合うと思うから
ゼロ: そうそう. きっとお似合いですよ. 絶対見せてもらお〜っと
ひかりさんはじーっとゼロさんの様子を見ていました.
ひかり: あ, ゼロさんもっと食べないとぉ
ゼロ: そっ, そだね
そんな二人を見て, なつめさんは口をもぐもぐさせながら言いました.
なつめ: そこの二人っ!!ラブラブしてないで食え〜〜〜!!

外野の野次をよそに, 二人の話はまだ続きます.
ひかり: ゼロさん, ひかりの最初のハンターズの仕事で貰ったギャラが出てるから,今度また映画を見に行こ〜よ. 今度はひかりがおごるよ
ゼロ: 行こ〜行こ〜
ひかりさんはゼロさんと密談中, 突然だれかを呼びました.
ひかり: 元締め〜
振り向いたのはアスタシアさんでした. 彼女, 元締めってあだ名なんですね.
アスタシア: はい?
ひかり: 今, 何かおもしろい映画, 今やってないかなぁ
アスタシア: そうねぇ. 何かあったかなぁ……
アスタシアさんは考え込んでいました.
ひかり: なつめちゃんも映画に行く?
なつめ: いいねえ. スパイ大作戦見に行きたいねぇ. やっぱアクションだよ!
ひかり: ストライクさんは映画とか見ないよねえ


なつめさんはお出ししたジュースを一気に飲み干してしまうと, ビールをちびりちびりとやっているアスタシアさんに駆け寄ってきました.
アスタシア: ちょっと, そんなに急いでかきこまなくても大丈夫よ
なつめ: 元締め〜, なんか頼まないの? イカの下足揚げとかさ, 焼き鳥とかさ
アスタシア: 食べ物も適当に頼んじゃって
なつめ: ねーさん, そこのちびっ子にカレーライスね
ふと見ると, ジーニちゃんはまたテーブルの隅でじっとしていました.人見知りする子なんですね.
アスタシア: ジーニちゃん, ほらほら, 隅っこ行かないで
なつめ: カレー食べなよ
なつめさんは私がお出ししたお子様用カレーライスをジーニちゃんに持っていってあげていました.
アスタシア: でーんと真中にいればいいのよ
ジーニ: うにゅう……罪悪感
なつめ: 罪悪感? 気にしない気にしない
なつめさんがほらほらとお皿を差し出すのを, ジーニちゃんは両手で止めました.
ジーニ: にゅう……いらない
なつめ: あらら, 何が食べたいの?
ジーニ: サンドイッチ……
なつめさんは仕方なくカレーを自分で食べ始めました. 私はジーニちゃんの声が聞こえたので, 注文が来る前にパンの準備を始めました.
アスタシア: 好き嫌いはあんまりよくないよ
ジーニ: ふにゅ……
ジーニちゃんの顔がみるみる沈んでいきます. アスタシアさんはあわてて言い直します.
アスタシア: ああ, ごめんなさい. 今日はいいのよ
なつめ: おねーさん, サンドイッチ5人前ね
ジーニ: ふにゅ……そんなに食べられない
ジーニちゃんの耳はだらんと下がっていました.
なつめ: あ, か〜わいい
なつめさんとゼロさんがジーニちゃんの横に座って, 代わるがわる頭をなでています.
ゼロ: やっぱりこっちからスキンシップをはからないとね
ジーニ: にゅ……う……っく‥‥ひっく……
ゼロさんが頭をなでていると, ジーニちゃんは急に泣き出しました.
なつめ: あっ!!泣かした!!! つんつんが泣かした!!
アスタシア: ゼロさん, いじめちゃだめって言ったのに
ゼロ: あわわわ. スキンシップをとろうとしただけですよ〜〜〜
なつめ: 頬と頬をすり合わせたんでしょ?
ゼロ: してないしてない.
ゼロさんは猛烈に首を横に振っていました. しかし, 周囲の人は疑わしげな目で見ています.
ジーニ: っく……怖い……よぅ
ゼロ: なにもしてないよ〜〜
ジーニちゃんはぶるぶるふるえていました. アスタシアさんもなつめさんもこの子をながめます.
アスタシア: この子も人見知りが激しいわねぇ
なつめ: ったく, 兄弟ともどもつんつんのこと嫌いなんだねぇ
ジーニ: ……ひっく
なつめ: あのねえ. 人を怖がったらこの先生きていけないよ
ジーニ: ち……がう……
なつめ: わかった. 顔が怖いんでしょ
アスタシア: あーんな間抜け顔のどこが怖いっていうの?
抗議しようとするゼロさんを見てアスタシアさんはあははと笑いました. しかし, ジーニちゃんはまだうつ向いたままです.
ジーニ: カプセルの中で見た怖い人達と……同じ目……
なつめ: そんなの夢夢!! もっと明るくぱ〜〜〜っといこうや!!
ゼロ: そうそう. 明るくいこうよ
すると, なつめさんは懐からサングラスを取り出しました. ゼロさんに無理やりかけさせようとしています.
なつめ: つんつん, グラサンかけてよ.
ゼロ: いきなり何をするんですかぁ
なつめ: こうすれば目が見えないから恐くないよ
アスタシア: ゼロさん, 顔見せて見せて〜
ティアドロップ形の真っ黒なサングラスを自分でかけ直して, ゼロさんは顔を上げました.
なつめ: あはは. 大門だ
アスタシア: よけい怖いかも
ゼロ: うう. 私で遊ばないでよ〜. ひかりちゃ〜ん, 助けてぇぇ〜. 二人がいじめる〜〜
しかし, ひかりさんは私のお出しした苺タルトを一生懸命食べていました.
ひかり: うんうん. おいしいおいしい
ゼロ: ああ〜〜〜ひかりちゃんまで
なつめさんはそんなゼロさんにきっぱりと言いました.
なつめ: いじめてなんかないやい!! 遊んでるだけだい