何でも屋10: 幻のケーキ屋

洞窟の奥にあるという幻のケーキ屋.ひかりちゃんの試験終了はどうしてもその幻のケーキで祝いたい.そのために4人ではるばる洞窟へと向かいました.

ケーキを買おう

ここはいつもの何でも屋のいつものミーティングテーブル. ストライク,ゼロ, なつめの3人が揃ったのを見て, アスタシアは話し始めた.
アスタシア: さて, 今日集まってもらったのは, 厳密に言えばお仕事ではないのですが……
なつめ: 給料は出るの?なつめはびっくりして聞き返した. このところずっとまともにお仕事のあったためしがない.
アスタシア: 時給だけは出します.
なつめ: 太っ腹〜
アスタシアは少し間を置いて, 元の話に戻った.
アスタシア: さて, 皆さん, 幻のケーキ屋があるって噂, 知ってる?
ストライク: 洞窟の奥だろ……
アスタシアはうんうんとうなずいた.
アスタシア: 今日はそこにケーキを買いに行きます.
なつめ: 依頼なの?
ストライク: 自分で食べるためだろ……
アスタシアは首をぶんぶん振って否定した.
アスタシア: 違う違う
と言ってはみたものの, よく考えるとあながち間違っているわけではなかった. アスタシアは言葉につまった.
アスタシア: えーと, 実は, ひかりちゃんの試験終了パーティーを開こうと思って.
ストライク: 俺が作ってやろうか
アスタシア: でもさあ, やっぱりせっかくのパーティーなんだから, 噂のすごいケーキがいいなぁ
なつめ: ひかりちゃん, 合格したの?
アスタシア: それはわからないけど, 不合格だったら残念パーティーでもいいんだし. とにかく試験終了ってことでさ

すると, なつめはいきなり立ち上がった.
なつめ: じゃあさ, 店が閉店しないうちに行こうよ. もう外は暗いしさ.
アスタシア: あ, そうか, 閉店するかもしれないんだ……そもそも閉店時刻なんて知らないし……
なつめ: もう, 外は暗いしさぁ
立ち上がりかけたゼロはそれを聞いてまた座り直った. きっと今日はもう出かけないだろうと, トランプの箱をまた取り出した. しかし, 予想は外れていた.
アスタシア: そうね. 急いで行きましょう
なつめ: お〜〜!!
ゼロ: 行くんだやっぱり
アスタシア: もちろんです. さあ, 早く準備して
アスタシアはさっさと戸口に出ていってしまった. なつめも, 「ケーキ, ケーキ」とうれしそうに出ていった.


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4人は洞窟の入口に集まった.
アスタシア: さて, みんなきた?
アスタシアは全員を見渡した. ゼロはちょっと気がかりな顔をしていた.
ゼロ: ケーキ見つからなかったらどうするの?
なつめ: どうするの?
アスタシア: ま,その時はまた考えるわ
なつめ: ストライクさんに作ってもらうの?
ゼロ: そうだね. 作ってもらお〜
ストライク: 時間がかかるぞ……

なつめはふとゼロの持っている奇妙なものに気がついた.
なつめ: つんつん, これなあに? このハエたたきみたいなの
ゼロ: え? あっこれね. ちがうよ〜ばしょうせんっていうんだ
ゼロはこの不思議な扇を3人の前に突き出し, くるっくるっと裏返しながら見せびらかした. フォトンが七色に光っている.
ゼロ: へへ〜ん, いいでしょう
アスタシア: いいのかなぁ
なつめ: よくわかんないや
ゼロは少し振り回してみた.
ゼロ: むむ, これ重い……ぜぇぜぇぜぇ, 疲れたよ〜
なつめ: もう疲れたの?
アスタシア: まだ入り口よ
ストライク: だったら使うな
ゼロ: あっ, そうだね. 使わなきゃいいんだ. てへ☆
ゼロはさっそくバショウセンを収めてしまった.
ゼロ: ストライクさん,あったまいい〜
アスタシア: なになに? せっかく持ってきたのにもうやめちゃうわけ?
ストライク: 阿呆……
3人はあきれてこれ以上何も言えなかった.
ゼロ: だってぇ……なんかさぁ, 空気抵抗が強くて振り回せない
なつめ: でもさぁ, 今の武器持ってたつんつんって, かっこよかったよ
ゼロ: え? かっこいい?
うれしそうな表情をするゼロ. しかし, それはぬか喜びだった.
なつめ: 三下の悪役っぽかった
ゼロ: ええ〜〜, 三下はないでしょう
ストライク: 戦闘員だろう…
なつめ: だって三下だもん. 2クール最後に倒れる悪の幹部ってかんじ
ゼロ: なんですかそれは〜
アスタシア: そう見えるってだけだから安心なさい
なつめ: 実際そうかもしれないけどね
ゼロは驚いて目をまん丸に見開いた.
ゼロ: ナニイッテルンデスカ
なつめ: じょーだんだよっ!!
ストライク: 声が裏返ってる……
ゼロ: 気のせいですよ
ゼロは慌てて洞窟の中へ向かった.
ゼロ: いきますよ〜


洞窟の中は蒸し暑かった. ところどころ溶岩が流れているような場所で, しかも水もどこかに豊富にあるらしい. そういう所には奇妙な植物が生えているのが通例である. ここにも, 毒を持った奇妙な花が咲いていた.
そこに生えていたのは, 人の背丈ほどもある大きな白い花だった. 花弁から吐き出される胞子を吸うと体力が奪われたり身体の自由がきかなくなることもある. 前衛の2人が戦っている間, 後ろの方にいたゼロとアスタシアの2人が頭から胞子をかぶってしまった. 二人は身体がしびれて動かせなくなり, その場に倒れた.
前衛の二人が敵を一掃して帰ってくると, 手足をピクピクさせて倒れている二人を見つけた.
なつめ: あっ, こんなところに人形が! 踏みつけちゃえ!
なつめはゼロを足で蹴とばした.
ゼロ: あぅ, ひどいよ〜, なつめちゃん
なつめ: 顔にヒゲ書いちゃえ〜
ゼロ: やめてぇ
ストライクがアンティをかけた. 身体のしびれが取れ, 二人は起き上がる.
ストライク: さっさと起きろ……
なつめ: うわっ, 人形が動いたっ!!
なつめはびっくりして後ろに飛び退いた.
ゼロ: はふぅ, しびれが止まった
なつめ: なあんだ, つんつんかぁ
ゼロ: なんだじゃないですよ〜なんて事するんですかぁぁ
アスタシア: 気がつかないでやってたの? てっきりわざとだと……