何でも屋1: 機械の修理

アスタシアが始めた「何でも屋」さんに初めての依頼が舞い込みました。とんでもない依頼でないといいのですが……

仕事の後は

ひかり: ばっちりドームまで来たねえ
アスタシア: もうすぐ終わりね
虫を退治して一行はほっと一息ついた。
ゼロ: あ! 今度はアスタシアさんの後ろに虫……
アスタシア: なに?虫!?ほんと?
ひかり: 早く取ってあげてえ
ゼロ: じっとしててよ。動かないでね
アスタシアは状況をよく把握していなかったが、とにかく言われた通りにじっとしていた。
ゼロ: ぽんぽんっと、はいとれた
アスタシア: ありがと
ひかり: ゼロさん、やさし〜
ゼロ: えへへ、ほめられちゃった
ゼロはちょっと赤くなった。
ゼロ: 僕はやさしいのですよ
ゼロは胸を張った。


一行は外壁づたいに歩いて、とうとうドームの正面扉に到着した。
アスタシア: さあて、あとはここから中に入れば……
すると、先に扉を調べていたひかりが言った。
ひかり: 壊れてるみたいだね。ここからは無理かなあ
ストライク: 壊れてるな……
ひかり: 他に入口ないのかなあ
アスタシア: え?入れない?
アスタシアはにやっと笑った。
アスタシア: やった。入れないならしょうがないわね。任務終了っと
ゼロ: やったあ! 仕事おわり〜
ひかり: いい加減だなあ

アスタシアがふとまわりを見ると、ストライクが奥の機械装置の前で何やらごそごそと操作していた。
ストライク: でかい転送機だな……
アスタシア: あちゃー、ストライクさん、見つけちゃった。極力見ないようにしてたのに……
アスタシアはため息をついた。
ゼロ: 見なかったことにしない?
ストライク: どちらにしろばれるだろう……
アスタシアとゼロは下を向きながらのろのろと奥の転送機に向かった。
ゼロ: なんだかいやな予感が……
アスタシア: で、これなに?どこに通じてるのかしら
アスタシアは転送機のプレートの上に乗って、天井や床を見回した。ゼロもプレートに乗った。
アスタシア: 中からでもよくわからないわね
ゼロ: うごかないよこれ?
ストライク: 座標……地下だな……
ひかり: じゃ、いってみよー
ストライクとひかりがプレートに乗った瞬間、それは動き出した。


アスタシア: 動いたぁー
そして、転送された先は、ドーム状の巨大な空間だった。周囲は岩で囲まれていた。そして、真中には……大きなドラゴンがいた。
アスタシア: と思ったら……なにこれ!?
ゼロ: なんなんですかぁぁ
ストライク: でかいとかげだ
ひかり: あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ドラゴンは4人を見つけると、口から火を吐きかけた。幸い全員避けることができた。
ひかり: あついよおお
アスタシア: どっかに出口とかないの?
でたらめに駆け出すアスタシアに対して、他の3人はドラゴンに向かっていった。ドラゴンはストライクの猛攻撃に一時は地面にばたりと倒れたが、突然起き上がって空に飛び立った。そして、尖った頭を下にして地中に潜った。
ひかり: 今度はもぐら〜?

ドラゴンはその後も何回か火を吹いたり潜ったりを繰り返したが、なんとか退治することができた。羽を横にして大きくばたりと倒れると、下敷きにならないように急いで逃げ出さなくてはならなかった。
アスタシア: おとなしくなった?
ゼロ: いたい
ひかり: いたいよお。くすん
アスタシア: みんな大丈夫?
アスタシアは一人一人の顔をじっくり見た。
アスタシア: 大丈夫みたいね。よかった
ゼロ: うん。僕逃げてたから
ひかり: いきてるよ。えっへん

4人は横たわっているドラゴンを見つめた。
ストライク: しかし、なんだ、このとかげは
アスタシア: まったく、なんなのよ、いったい
ひかり: ここって本当にドームの中なの?
ストライク: さあな……
アスタシア: ドームの中みたいではあるけど…なんか地面にボコボコ穴があいてるしさ

ひかりは、ドラゴンの頭の横で立ち止まってしゃがんだ。何かを見つけたようだ。
ひかり: とかげさんの横に宝石が落ちてる。きれいだなあ
アスタシアもひかりの拾った宝石に見とれていたが、宝石に手をのばした。
ひかり: ああ、元締めがとった〜。指輪にするんでしょ、いいなあ
アスタシア: お仕事中に見つけたんだからこれは会社のもの。大切にしまっておかなくちゃ
アスタシアは宝石を頑丈な小箱に入れてかばんの奥にしまった。そして、急に何かに気がついたようにあたりを見回した。
アスタシア: ところで、帰り道はあるわよね?
遠くに転送機が見えた。既にストライクが転送機のかたわらで機械をいじっていた。
ストライク: 座標はP2か
ひかり: あ、かえれるんだね
アスタシア: よかった
ゼロ: これで給料がでる〜
4人は走って転送機の回りに集まった。


ゼロ: いっちばーん
転送された先は、見慣れたシティの風景だった。
ひかり: お仕事の報告に、元締めは行くんでしょ?
アスタシア: 報告書はわたしがゆっくり書くから、お店でのんびりしててよ
ひかり: はあい
ゼロ: お風呂入ろー

店に戻ったアスタシアはさっそく自分のデスクに向かった。デスクとは言っても、ダイニング兼ミーティングルームの部屋の隅にちょこんと置いてあるだけなのだが。
ストライク: 報告書を手伝おう……
アスタシア: でも、ストライクさんは今日一番頑張ったからゆっくり休んでてくださいな
ストライク: そうしよう
アスタシア: ひかりさん、じゃ、なんか食べるものお願いね。これ代金。
アスタシアは引き出しから封筒を取り出し、中身のいくらかをひかりに渡した。
ひかり: じゃ、たいやき4つ、あとおこのみやき〜
ゼロはさっさとシャワー室に入っていった。ストライクはしばらくじっとテーブルの前に座っていたが、急に立ち上がった。
ストライク: 初仕事の成功を祝おう……キッチン、借りるぞ
アスタシア: え?ストライクさん?何はじめるの?
ストライクは冷蔵庫の中を確かめると、さっそく棚から調理器具を取り出した。
アスタシア: ストライクさん、いいのよ、ゆっくりしてって

そこにひかりが帰ってきた。ひかりはテーブルの上のバスケットに、買ってきたたいやきを並べた。
ひかり: おじちゃん、サービスしてくれたからたくさん入ってる
アスタシア: あら、よかったわね
ひかり: 一個食べちゃお
ひかりはたいやきを一つつまんで口に運んだ。
ひかり: あ、おいしー。あんこがさいこー
アスタシア: わたしも……
アスタシアもデスクを離れてテーブルに寄ってきて、たいやきをつまんだ。
アスタシア: おいしい! ほら、早くしないとなくなっちゃうわよ〜
ちょうどそこに、ゼロがタオルで頭を拭きながら部屋に入ってきた。
ゼロ: きもちい〜
ひかり: あ、きれいになったねえゼロさん
ゼロ: なんか食べてる〜僕も僕も〜
ゼロはぐうと鳴るお腹を押さえた。
ゼロ: あっ…

やがて、ストライクが皿を持って戻ってきた。皿の上にはホイップクリーム付きのホットケーキが乗っていた。
ストライク: 出来たぞ
アスタシア: ストライクさん、すみません。何から何まで。
ストライク: 気にするな
ひかり: ストさん、料理もできるんだね。すご〜〜い
アスタシア: じゃ、みんなでいただきましょ
ゼロ: いただっきま〜す
ひかり: ゼロさん、あんこおいしいでしょ、そのたいやき
ゼロ: もぐもぐ
ひかり: のどにつまったぁ
ひかりは胸を叩いた
アスタシア: ほらほら、急いで食べないの
ゼロ: はい、お茶
ひかり: あ、ありがと
ゼロ: くす
和気あいあいと、夕暮れのひとときは過ぎていった。

(おしまい)