何でも屋1: 機械の修理

アスタシアが始めた「何でも屋」さんに初めての依頼が舞い込みました。とんでもない依頼でないといいのですが……

和やかな前進

ひかり: ラグオルのやまとなでしこをなめるなよー
森もかなり奥のこのあたりでは、襲いかかってくる猛獣も多くなっていた。前衛の防衛網を突破して、後のフォース達に向かってくるブーマも出てきた。
アスタシア: きゃあ
ゼロ: いたい
前衛は声に気がつくと、目の前の敵をなぎ倒し、急いでとって返した。幸い損害は軽微で済んだ。

ゼロ: なぐられたぁぁ
アスタシア: ほんと、いたいわねー。くそーブーマのやろー
ひかり: あ、大丈夫?
ひかりはそういうと早速レスタをかけた。
ひかり: 楽になったかな?
アスタシア: ありがと
ひかり: 元締め〜、おくすり塗らないと…

レスタがかかったにも関らず、ゼロは慌ててぐるぐると走り回っていた。
ゼロ: 血が〜。はわわわ
ストライク: 落ち着け
ストライクが足をちょっと出すと、ゼロはそれに引っかかって転倒した。
ゼロ: あう、いててて、頭打ったぁ
ひかり: あはは
ゼロ: ひどいよ〜、ストライクさん
ひかり: いたそお
アスタシア: そんな乱暴しないの、ストライクさん

ひかりは、ひっくり返っているゼロのかたわらにしゃがむと、ゼロの頭を優しく撫でた。
ひかり: 痛いのとんでけえ
ゼロ: 気持ちいい〜
ひかり: これで大丈夫だよ
ゼロは起き上がった。
ゼロ: えへへ、治った気がする〜
ひかり: じゃ、いこ〜、元締め
アスタシア: はいはい
アスタシアは半分あきれながらも、にこにこ顔で歩き出した。


アスタシア: さて、それでは...
身構えて扉を抜けようとしたアスタシアは、突然立ち止まったストライクに危うくぶつかりそうになった。
アスタシア: ん?ストライクさん、どうしたの?
ストライク: ここは調べ終わってるな……
ひかり: ひかりたち、迷子?
ゼロ: ここきたよ。ほら
ゼロは自分で書いた地図を見せた。
アスタシア: ええと…ここどこ?
ひかり: 元締め〜
あきれるヒカリをよそに、ゼロは指で位置を指し示していた。
ゼロ: ほらここ
ストライク: 入口付近だな
アスタシア: じゃ、どっち行けばいいの?
ゼロ: 向こうの扉だね
アスタシアは振り向いた。来た道の方にもう一つ扉があった。
アスタシア: さあ、がんばっていってみよー
ひかり: がんばっていこー
一行はまわれ右をしてもと来た道を引き返した。

ゼロは自分で書いた地図をポケットにしまった。
ゼロ: マッピングは得意なのだあ
ひかり: すごいんだあ
アスタシア: 頼りになるわぁ
ゼロ: えへへ
ひかり: そんな才能があるんだねえ
ゼロ: でも、方向音痴ってのは、内緒ね
ゼロがひそひそ声でひかりに言った事が聞こえたのかどうかは知らないが、アスタシアはこう言った。
アスタシア: 無駄足になる前に言ってくれるともっとよかったんだけどね
ゼロ: 気をつけます
ひかり: どんまい


先頭を歩いていたひかりが、扉を通り抜けた瞬間、大きな声を出した。
ひかり: あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
アスタシア: いきどまり?
後ろからアスタシアがのぞいた。確かに道はそこで行き止まりになっていた。しかし、ひかりが声を上げたのはそれが原因ではなかった。
ひかり: あれ、転送装置でしょ。これこれ
ひかりは三角型のプレートに近寄った。
ストライク: 異常無し……起動しているな……
ひかり: ねーストさーん、これでドームに近道できないかな?
アスタシア: これでドームまでひとっとびだと楽でいいんですけど……
ストライクは転送装置をあちこち調べていた。
ストライク: 座標は……セントラルドームの近くだ……
アスタシア: やった! 今日のお仕事、楽ちんでいいわねー
ひかり: やた! 楽して沢山おこずかい〜
ひかりとアスタシアはにっこり笑った。しかしゼロは不満げだった。
ゼロ: 何もしてないじゃないですかぁ、アスタシアさん
アスタシア: え?わたし?ちゃんと応援してるじゃない
ゼロ: うう
ストライク: いつもの事だ……
ゼロは一瞬言葉に困った。
ひかり: ひかりはおべんと係〜
ゼロ: じゃ僕は食べる係〜
ひかり: じゃ、死んじゃうおべんとの実験台〜
ゼロ: あっ、やっぱりやめる〜
ひかり: あはは。嘘〜
ストライクはため息をついた。

ひかり: ねね、ストさん、この装置OK?
ストライク: ああ
アスタシア: じゃ行くわよ
一行は転送装置に飛び乗った。


転送装置の先の森は雨が降っていた。
ひかり: あ〜、ぬれちゃうよお
アスタシア: あらやだ
ひかり: 傘〜?
ひかりはかばんの中を開けたが、傘はなかった。
ひかり: あ、忘れちゃった。くすん
アスタシア: そんな用意してないわよ
ひかり: 美少女、雨ざらし〜
ひかりとアスタシアがご機嫌ななめな中で、ゼロは大喜びだった。
ゼロ: 雨だぁ〜。わーい♪
アスタシア: ゼロさん、うれしいの?なんで?
ゼロ: うん、うれし〜
ゼロは水の溜った草地をばしゃばしゃとわざと大きな音を立てて歩いた。
ゼロ: うれしくないですか、雨
アスタシア: そうかなあ、わたしは天気の方がいいけどなあ……
はしゃいでいるゼロを先頭に一行はとぼとぼと歩いていった。