湯けむり紀行・美女が行く洞窟秘湯めぐり

ラグオルの洞窟のどこかに、こんこんと沸き出る温泉があるらしい。なんでも、特に美肌に効果があるとか。そんな話を聞きつけてじっとしていられない美女2人、温泉探索に乗り出しました。

見捨てられた建物

ゲートの先、そこは巨大な建物の内部だった。建物…!?。はぁ、温泉めぐりも終わりだな。こりゃ。
コアン: 戻ろう。温泉なんてねぇだろ、こっちにゃあ。
レイナ: もしや既に温泉郷が開発された…?
ヴァル: でも、なんだかさびれてますよ
レイナ: とにかく進んでみましょう
俺、早く帰りたいのになぁ…。まだ行くのかよ。

とにかく廊下を進んで、扉を開けた。するとそこは部屋になっていた。床にはところどころ苔が生え、壁は金属部分が錆びている。机や椅子などの小物には爪跡が残り、すべて何か大きな力で破壊されている。そしてそこには大きな獣が4匹巣喰っていた。
コアン: これでも食らいなッッ!
しっかと銃を構えてそいつらにフォトン弾を叩き込む。レイナやキョウカのテクニックも炸裂し、そいつらはじきに動かなくなった。

ヴァル: なぁんか、さっきに比べて汚いとこですね
キョウカ: 穏やかな雰囲気ではないですねぇ
レイナ: どうなってるのかしら…デマだったのか…?
キョウカ: あ、でも、ほら、温泉はさびれてて熊が出るっていうらしいですよ
レイナ: 熊…
キョウカ: ええ、猛獣ですよ、要するに。猛獣いっぱいいるじゃないですか。
レイナ: まあ、確かに。
キョウカ: 温泉好きの猛獣……なわけ、ないですよね
ここに転がっているこいつが、いい気持になって温泉につかっている姿を一瞬想像してしまった。頭にタオルなんぞのっけって…。あ、猛獣はそんなことしないか。
レイナ: このあたしを温泉につからせないつもりね! なんて不届きな連中かしら!!
キョウカ: 温泉を猛獣から人間の手に取り戻す、と言うわけですか?
レイナ: きっと奥にはすごいのがあるのよ!
ヴァル: 温泉を我らの手に!
レイナ: いくわよ!
ヴァル: はい!
そうかなぁ…。どうも理屈が通ってないような気がするが…。なんだか分からんがレイナさん、燃えてんなぁ…。

俺達は変な施設を見つけた。U字型の水槽の中に水がたたえられている。水槽の縁はちょうど腰の高さだ。風呂、だと言われればそうかもしれない。ただ一つ、ひっきりなしに稲妻が天井から水面に飛んでいるのを除いては。
キョウカ: これは…電気風呂かしら…?
電気風呂ぉ? ってことは…、こんな中に入んのか?
キョウカ: 電流で血行を良くするお風呂があるんですよ
レイナ: ちょっと入ってみたら? 性能がよくなるかもよ
ヴァル: いかにもピリピリきそうです
ヴァルがおそるおそる手を突っ込んだ、かに見えると次の瞬間、目にもとまらぬ速さで後退を始めた。
ヴァル: あー、手、手が...
見ると、右手の指が妙な方向に曲がり、小刻みに震えている。しばらくすると全体が脱力したようにだらんと垂れ下がり、それから不意に制御が戻った。腕を一本ずつ折り曲げてみて、ちゃんと動くことを確かめている。
ヴァル: あ、やっと戻りました。
レイナ: しびれた?
ヴァル: やっぱりアンドロイドにはきついです。電子回路がやられます。
レイナ: 人間には‥どうなのかしら…
ヴァル: 人間用です! きっと!
レイナ: じゃあコアン入ってみて
こんなバカどもには付き合ってらんねえぜ。さ、行こうぜ。俺はとっとと扉を開けた。
ヴァル: コアンさん、逃げるんですか?
コアン: 俺は実験動物じゃねえ
レイナ: ハンターズの風上にもおけないわね…婚約者もどう思うかしら?
振り向くと、俺を見つめる6つの目。な、なんだよ、この展開は。
レイナ: みんなの期待をうらぎるフィアンセ…。これからの結婚生活になんの希望も持てないわね
あ、あのなぁ…。わーったよ、手ぇ突っ込めばいいんだろ?しょうがねえなあ。銃を置いて、謎のお風呂(?)と正対する。
レイナ: 服脱いで入れっての。肩までつからなきゃ、ねえ?
レイナの言うことなんかいちいち聞いてらんねえぜ。はぁ、でもこの稲妻はなんだよ。大丈夫なのか?ま、悩んでもしょうがねえ、思い切って手を入れてみた。
コアン: !!!! うぎゃっ!!
ああ、びっくりした。危うく心臓が止まるとこだった。こんなん、服脱いで入れるかよ!! まだビリビリくらぁ
キョウカ: 血行、良くなりました?
コアン: 血行が良くなる前に心臓が止まると思うぜ。
レイナ: 入るだけならできるでしょ?その後は知らないわ
なんか俺、恨みでもかったかなぁ…。
レイナ: ま、その様子じゃやっぱりお風呂じゃないのね
キョウカは残念そうに謎のお風呂を眺めていた。そしてそっと右手を出すと腕をまくって…。おいおい、何する気だ!
コアン: だぁー! やめろって
俺は急いで彼女の手をひっつかんだ。
キョウカ: やってはだめでしょうか?
コアン: 駄目だっっ!
キョウカ: いえ、わたしは…。ほら、電気ならこの程度操れますし
そう言うと、キョウカは、ゾンデを放ってみせた。それとこれとはなんか違うような気がするが…
キョウカ: そうですね。やめておきます。ハンダ付けとかは得意なんですけどね
いや、それとも違う気がするぜ、俺は。

そして、この謎の風呂(?)の部屋を出た先の通路で、俺達はこの建物が何物なのかを知ることになる。