ロールプレイとは何か

テーブルトークRPGを取り上げ、「ロールプレイとは何か」を大真面目に考察しました

言葉の意味

「ロールプレイ」について詳しく論ずる前に言葉の意味をまず考えてみよう。

roleplayの訳

ロールプレイを説明する時、よく「役割(=role)を演ずる(=play)」と書かれる。[1]しかし本当にそうだろうか?そうであるとも、そうでないとも言える。

英語で例えば「ジュリエットを演ずる」というのは"play role of Juliet"である。という意味ではなんとなく上の説明は合っているような気がする。しかし、英語では一般的に"play role"と言えば「役割を果たす」という意味である。例えば「中東和平に大きな役割を果たした」「四番打者の役割をみごと果たしましたね」というようにである。

そもそも"play"という単語の意味は広い。あえて日本語を当てはめるとすると「する」という単語になるだろう。野球をする、ギターを弾く、将棋をする、など。これらはみんな"play"である。"play"の元々の意味は「○○をして楽しむ」というものなのだから。

であるからして、"play"という単語に対して深く考えずに「演ずる」という訳語を当てはめるのは問題である。さらに、「演ずる」からの延長であろうが「演技」という言葉が当てはめられてしまう場合もある。「する」という程度の軽い意味しかない単語に「演技」という特定の意味を勝手に持たせてはいけない。

なお、日本語でも「演ずる」という言葉を「果たす」と同じ意味に用いることがある。例えば「飲み会で彼は道化師の役を演じた」と言えば、本当に鼻を赤く塗ってジャグリングをしたわけではなく、おどけて皆を笑わせるような事をしたという意味である。こういう場合「役」の前にくる単語は人名ではなく仕事の名前であることに注意してほしい。「ジュリエットを演ずる」というのとは根本的に違う意味なのだ。[2]

さて、ここで言いたかったのは、「ロールプレイ」という単語に対する「演技する」というイメージを消して欲しいということだ。よく「キャラクターの役割を演ずる」という説明、あるいはそれを省略してしまって「キャラクターを演ずる」という説明がなされるが、それは間違っている。どうしてあまり意味のない「play」の訳を残して、重要な意味を持つ「role」の訳を省略してしまうのだろう?「キャラクターの役割を演ずる」という説明は間違ってはいない。しかしそれは「キャラクターを演ずる」というのとは全く違う意味である。これを勘違いする人がいる以上、「役割を演ずる」ではなく「役割を果たす」と言わなければならない。

では、「役割を果たす」とは何だろう?「役割」とはすなわち「役を割り当てる」ことなのだが、では「役」とは何だろうか。辞書を引いてみると「つとめ。職分。」とある。「収入役」とか「監査役」とかの「役」である。多人数で何か大きな仕事をする時に「では私はこの部分の仕事をします」というのが「役」だ。

つまり、「役割を果たす」とは、各人にそれぞれの役割を割り当て、それを各人がきちんと果たすことによってある目標を達成することである。例えば、戦士は前線で戦う役、僧侶は傷を癒す役、魔法使いは攻撃魔法で援護する役、というようにである。RPGでは当たり前のこと、それがロールプレイの意味なのである。

ロールプレイを演劇に例えると

なぜかロールプレイを演劇に例える人が多い。本来なら演劇とは全く違ったものなのだが、おそらく「演ずる」という言葉に引っぱられたのだろう。そして演劇を例えに出した説明を受けると、なんだかロールプレイが演劇と同じもののような気がしてしまう。

もしロールプレイングゲームを演劇に例えるならば、小学校の学芸会を思い出してほしい。クラスでシンデレラの劇をやろうという時にまずどうするだろうか?きっと、「シンデレラ」「魔女」「王子様」といった役の名前を黒板に書き出すに違いない。さらに、その横には「大道具」「小道具」「照明」といった登場人物以外の係も書かれるだろう。その後でそれぞれの役に担当者の名前が書き入れられる。「シンデレラ」「魔女」「王子様」「大道具」「小道具」「照明」はみな「役割」だ。そしてこれらの役割を果たすことがロールプレイなのである。小道具の人の役割は「ガラスの靴やほうきなど劇中で使用する道具を用意すること」であり、シンデレラ役の人の役割は「シンデレラを台本にあるように演じること」である。

ロールプレイを演劇に例えて多くの人は「ロールプレイとは演劇に例えればシンデレラの役を演じるようなものです」と説明する。これはこれで正しい。そして「ロールプレイとは演劇に例えれば小道具係をやるようなものです」というのも同様に正しい。つまり、この例え話では「役を演じる」という所には何の意味もないのである。

ロールプレイをままごとに例えると

ロールプレイをままごとに例える人も非常に多い。「ごっこ遊び」だと説明する人もいる。これはある意味当たってもいるし外れていもいる。

「ごっこ遊び」とは何か?辞書を引くと「ある事柄・状況を真似して遊ぶこと」とある。確かにその通りだ。ロールプレイはいろいろな状況を設定してそれを真似して遊ぶものである。

しかしちょっと待ってほしい。「ある事柄・状況を真似して遊ぶ」のはほとんどのゲームに共通するものではないか?バーチャファイターや鉄拳なら「格闘技の試合という状況を真似して遊ぶ」ものだし、シューティングゲームは「飛行機に乗って弾をかいくぐって敵を倒すという状況を真似して遊ぶ」もので、チェスは「古代の白兵戦を真似して遊ぶ」ものだ。そんな事を言ったら大抵のゲームは「ごっこ遊び」になってしまう。

では本当の「ごっこ遊び」とは何だろう?それは「真似する」事を目的とする遊びのことである。バーチャファイターは格闘技の試合を真似しているが、やっている本人は「相手を倒す」ことを目的にしている。それに対してごっこ遊びの場合はあくまで真似する事それ自体を目的にしている。その違いである。

ロールプレイは真似をすることを目的にしているのではない。敵に勝つことを目的にしているのだ。真似を目的にする遊びにはもっといい言葉がある。「なりきり」という言葉だ。

心理学用語としてのロールプレイ

心理学でいうところのロールプレイをここで紹介しよう。例えば「就職面接の方法」という講座に就職真近の学生が集まってきたとしよう。そこでまず講義が始まる。「相手の目を見て話そう」とか、「発言ははっきりと」とか「座る位置や相手との距離の心理的効果」といった話をした後で、先生はこう言う。「では実際にやってみましょう。」と。

先生は学生を二手に分ける。面接官の役と学生の役だ。そして模擬面接が始まる。面接官役の人は「さあ、どうぞ」から始まって、学生役にいくつか質問をする。そして学生役の人はそれに実際の面接のように答える。

それが終了するとそれぞれどう思ったか感想を述べあう。就職面接は緊張したか?ちゃんと自分の思っていた事を言えたか? 逆に面接官の立場からわかることもある。しきりに髪の毛に手をやるのは印象が悪いとか、目を見て話されると真剣に取り組んでいるように見えるとか。

立場を入れ換えながらこれを何度か行う。すると就職面接を両方の立場から実際に体験できるのだ。これによって就職面接に対して何に気をつけたらよいのか(課題)やどうやったらいいのか(方法)がよくわかる。これがロールプレイだ。


  1. なぜか言葉の後ろにかっこ書きで英単語を並べる所までほとんど同じである。 ↩︎

  2. ジュリエットくらい有名な役名になると、それ自身が役割の意味も持ってくる。ジュリエットとは「親の都合で引き裂かれる恋人」の代名詞だからだ。「ジュリエットを演じる」といっても、本当にシェイクスピアの「ロミオとジュリエット」の台本そのままを演じるのとは意味が違う場合がある。 ↩︎