ゲームマスタリングの方法

TRPGのゲームマスタリングをする上でよく問題になる項目を検討します。

ゲームシステム

TRPGをやる時に一番最初に問題になるのが「どのゲームをやるのか?」という問題です。今までにTRPGのルールはたくさん出版されていて、どれもこれも一長一短があります[1]。ここでは、どういう観点でゲームを選んだらいいかということをお話しします。

なお、ここで例に挙げるゲームは古いものや海外のものに片寄っていますが、これは単に私が最近の日本のゲームを知らないからです。同様に入手性についてもよくわかりません。特に海外のゲームの翻訳は既に絶版になっている可能性が多分にあります。しかしすべて有名なゲームですのでおそらく英語版なら手に入ると思われます。[2]

ゲームシステムと世界設定

ほとんどのTRPGのルールブックは「ゲームシステム」と「世界設定」の二つから成り立っています。これらは同じ本に二部構成で書いてあることもあれば、別売りになっていることもあります。ゲームシステムは攻撃の判定の仕方や魔法のかけ方、種族や職業や技能などが記載されています。これは物理法則にあたるものです。それに対して世界設定には世界地図や政治体制、そしてそこに住む人々や魔物などが記載されています。これはその世界の社会的ルールにあたるものです。

ゲームによってはこの両者が切り離せないほど密接に関係していることもあります。それをここでは「専用ゲームシステム」と呼びましょう。その反対は汎用ゲームシステムです。専用ゲームシステムの例としては「クトゥルフの呼び声」や「トーグ」や「パラノイア」が、汎用ゲームシステムの例としては「D&D」や「ロールマスター」が挙げられます。

専用ゲームシステムの特徴は遊べるゲームのジャンルが限定されるということです。「クトゥルフの呼び声」では派手なドンパチは楽しめませんし、「パラノイア」で真面目なシナリオはたぶんできないでしょう。しかしジャンルに特化している分だけそのジャンルを遊ぶには適しています。「毎回特定のジャンルのゲームしかできないのは困る」という人もいるかもしれませんが、そういう人は複数のゲームを買えばいいだけの話です。

専用ゲームシステムはジャンルが特化している分そのジャンルをよく知らない人には楽しめません。一度もラブクラフトの著作を読んだことのない人が「クトゥルフの呼び声」をやっても全然楽しくないでしょう。だからそういう意味で専用ゲームシステムは人を選びます。もしあなたが決まった仲間とゲームをするつもりなら、全員にジャンルの趣味を聞いてみて、皆の好みではないジャンルのものは避けるべきです。

「世界設定がついてくるならば専用システム」というわけではない事に注意して下さい。ある特定の世界設定でしか遊べないのが専用システムです。例えば「ソードワールド」はフォーセリアを舞台にしてはいますが、職業やダメージの計算の仕方などはフォーセリアでなくても通用します。しかし「パラノイア」の場合、その独特の社会制度のもとでなければルールのほとんどが意味をなさなくなってしまいます。だから「ソードワールド」は汎用で「パラノイア」は専用システムなわけです。

汎用ゲームシステムの場合には、同じ本に世界設定が書いてあることもあれば別売になっていることもあります。たとえ別売になっていても世界設定は必須ですので必ず買いましょう。どの世界にするか迷ったらそのシステムで一番メジャーなものにしましょう。

私は初めての人には汎用ゲームシステムをお勧めします。なぜならプレイヤーを選ばないし、いろんなタイプの話をやってみることができるからです。そうやってやり方をマスターした後で専用ゲームシステムをやってみることをお勧めします。

ヒーロー指向とリアル指向

プレイヤーキャラクター(PC)が一般人とはかけはなれた能力の持ち主であるものはヒーロー指向、そうでないものはリアル指向です。これはゲームシステムで決まるものです。

リアル指向のゲームでは、新しく作ったキャラクタは冒険者を目指すどこにでもいる普通の人間です。だからレベル1のキャラクタは人より頭が良かったり筋力が強かったりするかもしれないけれど普通の若者です。そして様々な冒険をするに従って成長して、経験を積んだ大人になっていくのです。

リアル指向が顕著な例としてRoleMasterが挙げられます。このゲームでは鍛冶屋や八百屋のおじさんでもだいたい5レベルくらいあります。つまり作ったばかりのキャラクタは街の八百屋のおじさんよりもレベルが低いのです。ある意味当然の事ではありますが、プレイヤーは「冒険者」という言葉が持つイメージとのギャップを感じるかもしれません。

ヒーロー指向のゲームではプレイヤーキャラクターは最初から特殊能力を持つ人です。そうしたプレイヤーキャラクターには一般人では歯が立たないので、敵も同じ立場のヒーローになります。そうしたヒーロー同士のある意味常識を超越した派手な闘いを楽しむのがヒーロー指向のゲームです。PC達を呼ぶ特別の呼称(ストームナイトとかゴーストハンターとか)がある場合はほとんどがヒーロー指向です。

リアル指向の場合、PC達は常に死の危険にさらされます。極端な話、八百屋のおじさんと喧嘩になっただけでも当たりどころが悪かったら死んでしまう可能性があるのです。それに対してヒーロー指向の場合は一般人やレベルの低い敵に攻撃されても死ぬ危険はありません。結果としてリアル指向では行動が慎重に、ヒーロー指向では行動が大胆になります。例えば敵のボスを暗殺する指令が下ったとしましょう。この時、敵のアジトに変装して潜入しボスを狙撃して急いで逃げ去るのがリアル指向で、大量の武器弾薬を準備して正門から乗り込むのがヒーロー指向です。後者はよく「ハリウッド映画的」と称されます。

私は最初はリアル指向のゲームをお勧めします。ヒーロー指向のゲームの場合はかけ引きが難しく、結局力押しの解決になってしまいがちだからです。ハリウッド的アクション映画からSFXの派手な映像を取り去ったところを想像してみて下さい。TRPGには派手な映像はないのですから。

サプリメント

TPRGのルールブックを補完する役割をする本は一般に「サプリメント」と呼ばれます。それは世界設定であったり、その世界の歴史が解説されていたり、紳士録だったりモンスター事典だったりします。どのゲームにしようかか迷ったらサプリメントがたくさん出ているゲームシステムにして下さい。これがまず間違いない選択方法です。

特に「シナリオ集」がたくさん出ていると非常に助かります。自分でシナリオを作ることなく遊べるからです。それにサプリメントがたくさん出ているということは人気があり出版社も力を入れているゲームだということになります。だからそれを買って損することは少ないでしょう。

あなたがお金がを持っていてどう使うか迷ったなら、ゲームシステムをたくさん買う代わりに一つのゲームのサプリメントをたくさん買いましょう。そうやって一つの世界に詳しくなればだんだんゲームマスターが楽になってきます。

自作ゲームシステム

さて、少し余談になりますが自作ゲームシステムについてここで述べておきましょう。

「ゲームシステムを自作したい」というのは、ゲームマスターならだれでも多少なりとも思う事ではないでしょうか?しかしこれはお勧めしません。無駄な労力だからです。自作システムが市販のものより出来がいい事はまずありません。そういった出来の悪いシステムにつき合わされるプレイヤーの身になってみて下さい。

ゲームシステムを自作しようと思いたったら、まず「なぜ自作するのか?」を考えてみて下さい。ほとんどの場合、既存の汎用システムのどれかを使えば事足りる理由のはずです[3]。ほとんどの場合「TRPGで○○の世界をやりたい」という要求だと思いますが、その時はゲームシステムではなく世界設定を付け足せばいいだけのはずです。

ゲームシステムは存在しさえすれば多少どうであっても困らない存在です。剣で切りつける時に6面体を振るか20面体を振るかなんて、どっちであっても困らない問題でしょう?だったらそんな無駄な事に労力を費さないで世界設定やシナリオを練りましょう。その方がずっと面白いゲームになります。

結局どれがいいか?

結局のところ、私がお勧めするのはリアル指向の汎用ゲームシステムです。この条件に当てはまるものは「D&D」「RoleMaster」「トラベラー」あるいは日本のものでは「ソードワールド」など、超定番ものにおさまります。[4]宇宙ものがやりたいというならトラベラーしか選択肢がありませんが、そうでない人は入手性や値段などを見て考えればいいでしょう。その他はいわゆる中世ファンタジー世界ものです。


  1. 一短しかないのもありますが

  2. どっちにしろ、英語だからと尻込みしていてはよいRPGはプレイできないのではないかと思います。あちらの方が本場ですから。

  3. 買うお金がないというんだったら仕方がありませんが。

  4. ガープスもこの条件に当てはまるかと思いますが、よく知らないのでコメントはさし控えます。