ゲームとは何か

ゲームとは何か。そしてゲームはなぜ面白いのか。

ゲームと行動

ゲームとは勝ちを目指して行動する遊びである。あるいは正確には「行動を選択する」と言うべきか。次は「行動」について考えよう。

ゲームというものは形式化すると次の繰り返しである。

  1. ゲーム全体がある「局面」にある。ゲームの開始直後の状態は「初期局面」と呼ばれる。

  2. プレイヤーは、終了条件が満たされた時に自分の評価が一番良いもの(=勝利) になるように何らかの「行動」をする。

  3. 「行動」によってゲームの「局面」が「変化」する。

  4. 変化後の局面が「終了条件」を満たしていればゲームはそこで終わる。そうでなければ1.に戻る

「初期状態」「終了条件」「局面」「行動」「状態変化」がゲームのすべてである。初期状態と終了条件については前章で考えてきたので、ここではそれ以外について述べよう。

局面

局面について述べることは多くない。ある瞬間におけるゲームの全情報が「局面」である。敵がどこにいてどっちの方向を向いているか、HPはあとどのくらいか、自機のエネルギーはあとどのくらい残っているか、あるいはサイコロの出た目がいくつか、などなど。

ルールと局面の区別は重要である。局面はゲームが進むごとに刻々と変わるが、ルールは一定である。ルールについて詳しくは後述するが、状態がどのように変化するかを記したものである。そしてルールと現在の局面によって変化後の局面が決まる。例えばTCGで、「死の霧:このカードが場に出ていると、すべてのクリーチャは毎ターン1ダメージを被る」と書かれたカードが場に出されているとする。この場合、局面というのは「死の霧というカードが場に出ている」ということであり、そのカードに書かれた文面はルールである。「死の霧」が場に出ていることと、「死の霧」の効果が「すべてのクリーチャは毎ターン1ダメージを被る」という2つのことによってクリーチャは1ダメージを被る。しかしルールは不変であり、それに対してカードが場に出ているかどうかはその時々によって違う。

局面はプレイヤーから一部隠されていることもある。場に伏せて置かれたカードはわからないし、サイコロを振った時に出る目もわからない。局面を隠すことはゲームにとって大きな意味がある。それについては後で述べることにする。

行動

現在の状態を把握して、プレイヤーは局面を自分の有利な方向に持っていこうとする。それが行動である。前章で書いたように、プレイヤーの行動はゲームのルールによって制限される。ゲームの範囲内の行動と、範囲外の行動(例えばイカサマ)が定義される。ゲームをプレイするという事は、ある範囲内の行動の中から最終的に勝利につながる確率が一番高いものを選び出す作業の事である。

だから、プレイヤーにとってゲームの本質は「行動すること」そのものではなく「行動を選び出すこと」にある。例えば、人生ゲームで最初にルーレットを回すという行動はゲームではない。誰でも必ずするからだ。止まったマスの指示に従う事もゲームではない。選択の余地がなく強制的にさせられるからだ。分かれ道でどちらを進むかを決めること、あるいは止まったマスの指示が「○○してもよい」と書いてあったらそれをするかしないかを決めることがゲームをプレイするということだ。

行動を選ぶのは気まぐれではいけない。最終的に勝利につながる確率が一番高いものだと思う行動しか選んではいけない。そのためには、それぞれの行動をとった時に勝利につながる確率を考えないといけない。この、「考える」という行為こそがゲームである。

まとめよう。ゲームではプレイヤーは「行動」をする。それは表面的にはコマを動かすことだったりサイコロを振ることだったりする。しかしゲームの本質はそこにはない。可能なすべての手について、それをした時の将来勝つ確率を予想すること、そしてその結果を比較してどれが一番良いかを決めることこそがゲームの本質である。

局面変化(=ルール)

プレイヤーの行動によって、ゲームの局面が変化する。どういう行動でどう変化するのかを決めるのが「ルール」と呼ばれているものである。

ルールはゲーム全体を通じて普遍なものである。ルールそのものが変わるゲームもあるが、それは「ルールが変わる」事自体がルールだと思えばよい。TCGの例を前に出したが、TCGではカードにルールが書いてあるせいで「カードによってルールが変わる」と見られてしまいがちである。実際はそうではない。すべてのカードとそこに書いてあるルールの集合が「ゲームのルール」である。だから、例えば「TCGのルールを覚える」というのはターンの進め方やクリーチャの出し方を覚える事だけではない。世の中に出ているすべてのカードの種類とそこに書いてあるルールを覚える事が「ルールを覚える」という事である。

TCGを(ゲームとして)遊ぶ場合にはルールを覚えなくてはならない。つまりすべてのカードの種類とそのルールを覚えないといけない。なぜなら、どんなカードがあるのかがわからなければ作戦の立てようがないからだ。もし「ライトニングボルト: 対象クリーチャに3ダメージ」というカードを持っていたとしても、もしかしたら自分の持っていないほとんどのクリーチャはHPが100くらいあるのかもしれないし、ほとんどのクリーチャのHPは1か2しかないのかもしれない。とすると、ライトニングボルトというカードにどのくらいの価値があるのか判断のしようがない。

ルールというのはプレイヤーが行動を選択する基礎である。自分がどう行動するとルールによって局面がどう変化するか予想できるから、その中でどれが一番良いかを考える。ルールはゲームを通じて不変でなくてはならない。

まとめ

ゲームとは、ゲーム全体の「局面」が「勝利」という評価になるように「行動」をすることである。あるいはもっと正確に言えば「行動を決めること」である。「行動を決めること」こそがゲームの本質である。

行動を決めるためには、行動によって局面がどう変化するかを知っていなくてはならない。それが「ルール」である。ゲームのルールは途中で勝手に変わってしまうことはなく、常に一定でなければならない。