メタヘルプ

PC初心者を脱出するには、ヘルプを使いこなせないといけない。

最近、コンピュータが普及したおかげで、専門家でない人からコンピュータについての質問をされる事がぼちぼち出てきた。そこで思ったのが、「メタヘルプ」の事である。聞き慣れない用語であろうから、言葉の説明は後にして何を言いたいかを話したい。

例えばワードで「ここの行のこの単語から次のページに送りたいんだけどどうやったらいいの?」と質問を二人の人にしたとする。Aさんは「それはね。○○メニューの××をクリックして△△すればいいんだよ。」と自慢気に答えた。Bさんはワードを立ち上げてヘルプを見、メニューをいろいろ探してみてあれこれいじくったあげく、1,2分後に尋ねられた動作をさせる方法を見つけ出したとする。さて、どちらがPCのレベルが上だろうか?

普通に見れば知識が豊富ですぐ答えられたAさんの方がすごいと思うかもしれない。しかし正解はBさんの方が上なのである。

これはなぜか。Aさんはきっとワードとエクセルくらいしか知らないから、メニューのどこに何があるのかを覚えていられるのだろう。しかし、PCの偉い人なら普段何十ものソフトを使っているのだ。そんな事はいちいち覚えていられない。だから実物を見て探す必要があるのだ。

そしてAさんはきっとワードがバージョンアップしてメニューの構成が変わってしまったらまごついてしまうだろう。「私はワード98しか触った事がないので、ワード2000は使えません」と言うかもしれない。それに対してBさんは、きっと見たこともないワープロソフトでも色々いじくって改ページの方法を探すことができるだろう。

PC関係はとにかく機能や情報量が多く、いちいち使い方を覚えてはいられない。だからオンラインヘルプがあって、それを検索することができて、必要な情報をすぐ取り出せるようになっているのだ。


さて、話を「メタヘルプ」に戻そう。「メタ○○」というのは、聞き慣れない言葉かもしれないが「○○(について)の○○」という意味だ。ここで「○○」には同じ言葉が入る事に注意して欲しい。「メタヘルプ」は「ヘルプのヘルプ」、つまり、「ヘルプの使い方」の事である。

残念な事に、PC教室でワードの使い方を教える時には、文字のフォントの変え方とか段組のやり方などは教えても、カイル君(ぼややーんと出てくるイルカのことね)との上手なお話の仕方は教えてくれない事が多い。そして、本当に覚えなければいけないのは、段組の時にどのメニューのどのボタンを押せばいいかではなく、カイル君にどうやって聞けばその情報を得られるか、なのだ。

学校教育ではよく「詰め込み型はいけない」と言われるが、それは何も小中学校の話ではなく、大人の学校でもまかり通っている。そしてそれを大の大人が几帳面にノートに「メニューの書式を押す→段組→段数に2を入力する→OKを押す」などとメモっているのだ。そんな奴には詰め込み型学校教育を批判する資格などない。

そういう人々を見ていると本当にかわいそうになってくる。算数の公式を暗記するのとは違ってワードの使い方なんて1年2年ですっかり変わってしまうものだし、その時には一生懸命ノートにメモった知識はまったく使い物にならなくなってしまうのだ。本当にそういう事を分かっているのだろうか?あるいはいいカモを逃がさないようにそういう事はあえて教えない事になっているのだろうか?

PC教室のインストラクターもかわいそうな職業ではある。聞かれてすぐ答えられないと「先生のくせにそんな事も知らない」と言われそうだからだ。自分だったら「俺はEmacs使いだからワードなんて糞ソフトは使わねえんだ!」と逆ギレするところだ。(だから私をPCインストラクターにはしないように)


とにかく言いたい事は「丸暗記なんてしないでヘルプを使おう」という事である。ヘルプの使い方を覚えるだけで段組の仕方も表の出し方も文字の色の変え方も一発でわかってしまうのだ。そんな素晴らしい物を使わない手はない。

そして教える側としては商売あがったりになってしまうかもしれないが、ぜひヘルプで解決する事を教えて欲しい。何を聞かれてもすべて「カイル君に聞いて下さい」とやればいいのだ。そして,それが例えそこに見えているボタン一発で出来る事でもあえてやり方を直接教えず、カイル君への聞き方を教えるべきだ。


とは言っても出来る人と出来ない人がいる。それはわかっている。問題解決の方法というのは知識の量ではなく、勉強して身に付くものではないからだ。

これはビデオの予約ができる人とできない人に通じる所がある。できる人にとってみれば「なんで出来ないの?」だし、できない人にとってみれば「なんでこいつは見たこともないはずの俺んちのビデオの使い方まで知ってるんだろう?」と不思議に思う。

そして往々にして前者の人が先生として後者を教えることになる。しかしそれでは,あるビデオの予約の仕方は教えられても、本当に必要な見たこともないビデオの予約の仕方を探す方法は教える事ができない。「うーん、予約録画って書いてあるボタンを適当に触ったら表示が変わったから、これかな、って思って……」としか言いようがないのだ。

ビデオの予約ができない人は、やってみもしないうちから「できません」と答える事がほとんどである。「なぜやってもみないうちからできないってわかるんだ?」と思うが、「なぜやり方も知らないのにやってみようとするんだ?」と言われると、それも不思議だなぁとは思う。要するに、人間には二つのタイプがあるという事だ。


とまあ、投げやりな話で唐突だが、「カイル君より冴子先生の方が好きだ」というありふれた結論にして、今日は終わりにしよう。