ChatGPTの話

ChatGPTは変換ツールである

最近、ChatGPTをはじめとするジェネレーティブAIがニュースでも話題になるようになりました。なんだかわからないけどすごいものが来たぞということで、いろんな反応を示しています。しかし、冷静に、今までと何が違うのかと考えてみると、いろいろと見えてくるものがあると思うのです。

なお、ここではいちいちジェネレーティブAIと言い換えずに、わかりやすさを優先してChatGPTという単語を使いますが、別にChatGPTに限ったことではありません。あと、わかりやすさを優先して技術的には正確ではない書き方になるかもしれませんが、技術解説ではないのでご容赦ください。


たとえば、ChatGPTに「結婚式のスピーチを考えて」と言うと、スピーチの文を答えてくれます。これは便利だと思いますが、では今まではどうだったかと考えてみてください。今までだったら、Googleに「結婚式のスピーチ」と入れると、文例集のサイトがいくつも出てきて、その中から好きなのを選んで中に書かれている文例の中から気に入ったものを選ぶ、ということになるでしょう。そう考えると、まあ今まででもそれなりに便利だったなぁと思うわけです。

ChatGPT自体が、何かを考えているわけではありません。単に、学習に使用した膨大なWebページのデータをなんとなくキーワードで検索して、出てきた文章をなんとなく確率処理してつなぎ合わせているに過ぎないのです。いくつもある文例集のサイトの中から、そして文例集以外でも結婚式のスピーチっぽい文章を引っ張り出してきて、なんとなくつなぎ合わせて一つの文章にまとめる、というのがChatGPTの処理内容であると考えると、何ができるのか、そして何ができないのか、見当がつくように思います。


Google検索だと出てきたリンクをたどってページを読まなくてはならないのが、ChatGPTだと知りたいことだけを明快に教えてくれる、というような印象を持つかもしれません。しかし、これは技術的な問題ではないということに注意が必要です。

Googleも、リンクを出すのではなく、該当する部分を中身を切り取って直接表示しようとしたことがあります。その時、著作権侵害なのでそういうことはやってはダメということになって、やめてしまいました。ChatGPTは「これは学習だから問題ない」と言い張っていますが、他人の著作物をいったん数値に落とし込んで、そっくりのものを再構成するのならば問題がないのか?簡単には無問題だと言えないところです。YouTubeなどのように、ネット関係の各種サービスは著作権侵害をしながら成長してきたところも多いのですが、それをまた繰り返していいのか。

学生がChatGPTにレポートを書かせる、という問題も指摘されています。これも新しい問題ではなく、今までもGoogleで検索して出てきた文章を丸写ししてレポートを出す、ということはありました。ChatGPTだからできるようになったのではなく、ChatGPTだから見つけにくくなったというのが問題なのです。


時々、ChatGPTはこんなものまで出せる!と話題になることがあります。しかし、それは今までの膨大なWebページのどこかに同じようなものが存在していた可能性が高いです。頑張って作ってネットに公開したのに誰にも見てもらえず闇に葬られてしまったものが、ChatGPTに拾い上げられ、勝手にChatGPTが作ったことにされてしまう。作る側としては、とても腹立たしいことです。

もしこのままChatGPTが無秩序に広まるなら、ネットの未来は厳しいものになるかもしれません。ChatGPTが書いた記事でネットが覆いつくされ、さらにChatGPTの書いた記事がChatGPTの学習対象になってしまうと、新しい情報が入ってこなくなります。皆がChatGPTに質問して済ませ、ネットの記事を読まなくなると、一生懸命書いた記事もただのChatGPTのエサにしかならなくなります。バカバカしくてブログなんか書いてられないとやめてしまう人も多くなるでしょう。既にそうなってはいますが。

電子メールがspamで機能不全に陥ったのと同じ現象が、Webで起きるかもしれません。


まず、ChatGPTが「考えている」と思うのはやめてください。誰かが考えたことを学習している(またはデタラメを出力する)に過ぎないのです。

そして、情報が増えないような使い方をすべきです。単に質問して答えを得るというのは、情報が増えていることになります。そうではなく、翻訳や変換、要約などに使うべきです。

Bing検索でもAIが導入されていますが、回答の後に参考になるページのリンクが表示されます。こちらの方が正しい使い方だと思います。