Windows 10のアップグレードの話

よくわかってない人に何かをやってもらおうとすることの困難さ。自分はわかってると勘違いしてる人はより困難。

最近また、Windows 10へのアップグレードに関するトラブルのニュースを見かけるようになりました。アップグレードが始まったのはもう1年近く前なのに、そしてその時から既に問題は存在していたのに、なぜ今になって(それもアップグレード期限が終わろうとする今になって)騒ぎが起きるのか。もしかしたら注目を集めるためにわざとやってるのかと勘繰ってしまうほどです。

そしてもう一つ思うのが、この問題の根深さです。マイクロソフトの強引なアップグレードのターゲットとしている層が、まさに今騒いでいる層だということです。


マイクロソフトにしてみれば、定期的にバージョンを上げてすべてのPCのユーザーから金を巻き上げるという構図が崩壊した今、もうWindowsのバージョンを区別する理由はなく、そうなるとわざわざ違うバージョンのWindowsを保守していくよりも、全員に同じバージョンを使ってもらう方が楽だということになります。さらに、もはやWindows本体ではなくサービスで儲ける時代になったのだから、新たなサービス(という名の金づる)の入ったWindows 10をタダでもいいから配ることが重要になってきます。

その際に問題となるのが、Windows 10が出たことすら知らない層。いくらタダにしても「今のままで使えてるんだからこれでいい」と言ってアップグレードしてくれません。そのため、少々強引な方法をとってアップグレードさせようとしたのでしょう。ただ、その強引さがかえって反発を招いたようです。

パソコンに関して「今のままで使えてるんだからこれでいい」と言う人たちって、ソフトウェアはいついかなる時でも確実に問題なく動くと思い込んでることが多いんです。そして、15年も20年も前のソフトウェアが「なんかおかしくなった」と文句を言ってくる。実際、そんな前のソフトは(たとえ自分が作ったものだとしても)面倒みられないよ。「今のままで使えてる」と、そのまま未来永劫使えると思ってしまっているから、「これでいい」という結論になってしまうのではないかと。

「勝手にアップグレードされた」と怒っている人たちこそ、本当はアップグレードした方がいい人たちなんですよ。そういう人に限って、わざわざアップグレードをしないことに躍起になってる。アップグレードすることによるデメリットは確かにあるけれど、それは多くの人々、特に勝手にアップグレードされてしまう程度のPCスキルしか持ってない人にはあまり関係ない話です。どちらかというと、アップグレードしないことを正当化するための理由を必死になって探している感じがするのです。


あと、「古いPCだからWindows 10は動作保証されてない」と言ってアップグレードしない人もいます。言い分は十分わかりますが、そもそもWindows PCに「動作保証」なんてものがあると思っているのが幻想です。動作保証というのは、メーカーに問い合わせたときに門前払いされるかたらい回しされるかの違いでしかありません。

PCの世界では「信頼性の高い部品を組み合わせる」派と「全部自分で把握して自由にいじれるようにする」派と「まずやってみてダメだったらそのとき考える」派の3つがあって、Windowsは思想的にずっと3番目の派閥なんです。3つの派閥はどれが正しくてどれが間違っているというものではないのですが、ある派閥の思想で作られたものを別の思想で使おうとすると、トラブルのもとになります。

だから、よくわからなかったらとりあえずアップグレードしてみて、ダメだったら戻すというのが正しい対応だと思うのですが、なぜかそれをしたがらない人がいるんです。私もたまに、昔作ったソフトについて「これこれこういう条件のときにこのボタンをクリックしたらどうなるの?」みたいな質問を電話で受けることがあって、なぜやってみればすぐわかることをわざわざ電話してくるかなぁ、と思うんですよ。


結局、普通にアナウンスしたんではアップグレードしてくれない人たちのために、少々強引にアップグレードをさせようとしたら反発を食らった、という感じなんですが、そういう人たちにアップグレードをしてもらうにはどうしたらいいんでしょうね。アップグレードを拒否する人って、自分では「そこそこパソコンに詳しい」と思ってそうでなおさら厄介です。

本来ならそういう人はWindowsを使わないというのが最良の解なんですが、現状代替案があるわけでもないというのが困ったところ。