ニュースバラエティのコメンテーター

そもそもコメンテーターに肩書なんていらんよねという話

コメンテーターとしてTVによく出ていた人の経歴詐称疑惑でいろんな意見が出ていましたが、「コメンテーターを辞める必要はないんじゃないか」みたいな意見が出ていたのに驚きました。

この問題が通常の芸能人スキャンダルと違うのは、「TVに出てる人が悪いことをした」のではなく、「悪いことをしたせいでTVに出られるようになった」という点です。つまり、もし悪いことに対して何らかの処理が終わって、一連の問題がなかったことになった場合、前者はTVに出てる状態に戻ることになりますが、後者はTVには出てない状態に戻ることになります。だから、経歴詐称が発覚した時点で、コメンテーターをやる資格がないのは当たり前です。

念のため言っておきますと、上記の話は「肩書がなかったらそもそもコメンテーターとしてTVに出てこられなかったであろう」という仮定を元にしています。


「肩書が嘘だったとしても、コメンテーターという仕事自体はちゃんとやれてたじゃないか」という意見もあります。それはその通りで、ニュースバラエティ番組のコメンテーターなんて、本来は肩書が必要な仕事ではないのです。専門知識も深い洞察も必要なく、その場で思い付いたことをただしゃべっていればいいだけなのですから。

しょせん、あんな番組を見ている視聴者が言う「あの人は頭がいい」というのは、「私と同意見だ」と同等の意味しか持っていません。視聴者が思っていることを言うのがあの人たちの役割であって、視聴者の思考レベルを超えてはいけないのです。ニュースの合間の短時間では言い尽くせないほど深い内容や、視聴者がすぐには理解できないような内容のコメントをすると、「あの人は意味不明なことしか言えないバカ」ということになってしまいます。

しかし、これは誰でもできる仕事だと言っているわけではありません。短い時間で、内容の薄いVTRを見ながら、独自に調査する機会もなしに、視聴者に受け入れられるコメントを素早く判断し発言しなくてはなりません。これはこれで一つの能力です。ただそれが専門家の能力とは違うと言っているだけです。

そう考えると、実は「経済コンサルタント」より「詐欺師」の方が、コメンテーターとして適任なんじゃないかという話になります(両者のどこが違うんだ?という恐ろしい疑問はここでは考えないでおきます)。ま、それは実現不可能にしても、居酒屋で語りたがるおっさんサラリーマンとか、しょっちゅう井戸端会議をやってる主婦なんかの方が、ずっとコメンテーターに向いているのではないかと思います。学究肌の専門家なんぞを出したら、きっと「こんな情報しかない段階では、いろんなことが考えられるため、結論は出せません」というコメントしかできないでしょうから。


よくよく考えてみると、ニュースバラエティ番組でも、ちゃんと大学教授などの専門家がコメントしています。たいていはVTRですが。不思議なのは、その後にまたスタジオのコメンテーターがコメントするところです。専門家のちゃんとしたコメントの後に、なぜ(その分野では)素人のコメントが必要なのか。

まあしかし、淡々とニュースだけを放送されるより、素人のコメントが並んでいた方が面白いのは確かです。私も、ニュースサイトのニュース記事の後に並ぶコメント欄を読むのは割と好きですから。そこを読んだからといって、元のニュースに対して理解が深まるということはほぼないんですけどね。

だったら、TV局の方もわざわざ肩書を要求しないで、適当にそこらのおっさんを呼んでこればいいじゃないかと思うわけです。実際、ニュースではないバラエティ番組の中にはそうしている番組もいくつかありますし、それで人気を博している番組もあります。

でもやはり、ニュースバラエティ番組でそこらの一般人を起用すると、「なぜあの人が出てくるんだ」と批判が殺到することになる気がします。「誰でもいい」のに、そこから一人を選ぼうとすると「なぜ」と理由を要求される。そういう矛盾がここにはあるように思います。